効果

“「家族の幸せ」の経済学”という本の中で、その著者山口慎太郎氏は、データ分析をしています。この本の第5章には、「保育園の経済学」ということで、保育園が持つ幼児教育施設としての側面に着目して、保育園通いで子どもがどう変わるのかを考察しています。彼は、先日の日経新聞にも、保育の無償化についてもその考え方を述べていました。

彼は、幼い子どもを持つ親御さんの多くにとって、保育園を利用できるかどうかは死活問題だと考えています。なぜならば、保育園が使えないとなると、職場に復帰できなくなり、キャリアを諦めざるを得なくなることも珍しくないからです。それに対して、待機児童問題は、長年にわたって新聞・テレビなどのメディアで取り上げられていますが、問題が解決に向かう気配は一向にありませんが、どうしてでしょうか?彼は、そもそも重大な社会問題として認識され、厚生省(現・厚生労働省)が初めて待機児童数を発表したのが1995年ですから、これだけの時間をもってしても解決できなかったという事実には失望させられたと言います。もちろん、だからといって政府が全くの無策だったというわけではないと言います。取り組みが不十分であったことは認めざるを得ないものの、常に政策課題の一つとして取り上げられてきましたし、安倍政権においても、「新・三本の矢」の「夢をつむぐ子育て支援」の一環として、待機児童の解消が目指されてきたわけだからというのです。

こうした政策の最終的な目標は出生率の向上にありますが、もう少し身近な目標として彼は以上のようなことをあげています。まず、働くお母さんたちへの支援が挙げています。保育園を利用することで、お母さんが安心して社会で働くことができるようになることか、そのようなことが政策目標として捉えられてきました。一方、こうした保育政策をめぐる議論の中であまり顧みられることがなかったのが、当事者である子どもへの影響だというのです。もちろん、子どもが安全に過ごせることは、保育の大前提とされてきましたが、子どもの知能や情緒の発達に及ぼす影響はほとんど論じられることはなかったと言うのです。

そこで山口氏氏は、保育園が持つ幼児教育施設としての側面に着目し、保育園通いで子どもがどう変わるのかを見ていこうとしています。

まず考察するのは、幼児教育についての経済学研究から、これまでに何が明らかにされたのか整理しています。そして、次に、彼自身の研究に基づいて、保育園通いが日本の子どもたちにどんな影響があったのかを明らかにしています。最後に、幼児教育・保育の無償化に始まる現在の保育政策の是非と、将来のあるべき姿について議論しています。

では、彼は幼児教育の「効果」についてどう考えているのでしょうか?

近年、保育園・幼稚園で行われる幼児教育が、世界中で注目を集めています。アメリカではオバマ前大統領が4歳児向けの教育プログラムの推進を各州にうながしてきましたし、動きの早かったEUでは2000年代前半に、9割の子どもが幼児教育を受けられるようにすることを目標に定めました。

こうした動きの背景にあるのは、経済学を含む、さまざまな分野での研究成果の蓄積だというのです。これまでの研究によると、幼児教育は、子どもの知能指数のみならず、意欲、忍耐力、協調性を含む、社会情緒的能力と呼ばれるものを改善し、子どもの人生に大きな影響を及ぼすことが明らかにされてきたからです。