育休をデータから見る

日本で、育児休業を3年間取得できるようにすることに対して、山口氏は、データ分析からいくつかの発見があったそうです。第1に、日本では、正社員の仕事を見つけるのはかなり難しいということです。第2に、子どもが1歳になると、育児による負担が大きく減るということです。そして、第3に、大多数の人にとって、育児休業によって大きくスキルを失ってしまう心配は当てはまらないということだというのです。たしかに、育休を取ることでキャリアを諦めなければならないくらいの失点になってしまう人もいないわけではありません。そうした人々にとって重大な問題であることは間違いのないことだと言います。しかし、数カ月から1年程度の育休がキャリアにとって「致命傷」になってしまうのは、ごく限られた高度な専門職、管理職などにとどまるようです。もちろん、育休から復帰して仕事のやり方を思い出し、調子を取り戻すのには苦労をともなうでしょう。それでも、育休取得のために職業上の能力の多くを失ってしまうのは一部の人にだけ当てはまるようだと山口氏はデータからわかると言います。

彼は、こうした論点をデータできちんと確認することは、間違いのない判断のためには必要ですし、これらの論点の重要性を定量的に踏まえることは、シミュレーションを行う上で不可欠だと考えているのです。「常識」を数値化するのは、回りくどいと感じるかもしれませんが、最善の予想を立てる上では避けて通れないと彼は言うのです。

そのような意味で、こうしたデータ分析の結果を踏まえ、山口氏による経済学の理論を織り込んだ予測によると、育児休業制度は母親の働き方をどのように変化させるのかを考察しています。

まず、「①1年間の育休は母親就業にプラスの効果」です。シミュレーションの結果によると、1年間の育休が取得可能な今の制度は、お母さんの就業を大きく引き上げることがわかりました。育休が全く制度化されていない場合と比べて、現在の育休制度は、出産5年後に仕事をしている母親の割合をおよそ50パーセントに引き上げているようだというのです。次に「②育休3年制に追加的な効果はなし」です。今の制度を変更して、育休期間を3年間に延長することにはさほど大きな効果がないと予測されたそうです。育休3年制を導入しても、出産5年後に仕事をしている母親の割合は現在に比べて1パーセントしか増えないようです。

そして、「③育休は3年もいらない」です。育休3年制への移行が大きな効果を持たないと予測されているのは、多くの人は育休を3年も必要としていないと考えられるためだと言います。待機児童問題が深刻であるとはいえ、子どもが1歳になれば、無認可も含めて保育園の利用もより現実的に可能になります。

また、育休3年制のもとでも、給付金がもらえる期間が1年であるならば。2年目以降は家計所行が大きく落ち込みます。多少の苦労があっても、収入のたのに仕事復帰したいと考える母親が多数派であると予測されているそうです。

こうした理由で、育休3年制が導入されたとしても、実際に3年間育休を取る人はあまり多くないのではないかと考えられると言います。したがって、今よりも手厚い育休3年制に移行したとしても、母親の就業に大きな影影を与えないのではないかと山口氏は考えています。