何歳まで育休?

生後、母親と一緒に過ごした期間の長さは、子どもの将来の進学状況・労働所得などにはほぼ影響を与えていないことが、ドイツ、オーストリア、カナダ、スウェーデン、デンマークなどの国々における政策評価で報告されました。しかし、これらの国々と異なり、ノルウェーでは育休制度の充実により、母親と子どもが一緒に過ごす時間が増えた結果、子どもの高校卒業率や歳時点での労働所得が上昇したことがわかりました。どうしてでしょうか?

山口氏は、育休改革が行われた1977年当時のノルウェーでは、公的に設置された保育所が乏しく、保育の質が低かったのではないかと考えています。したがって、お母さんが働く場合、子どもたちは発達にとって必ずしも好ましくない環境で育てられていたということになります。育休制度が充実することで、母親と子どもが一緒に過ごせるようになれば、子どもたちは質の悪い保育所に預けられることはなくなり、その結果、子どもは健やかに育ったというわけです。

山口氏は、「子どもが育つ環境は重要だけど、母親だけが子育ての担い手になる必要はない」というのがこれらの政策評価から得られる重要な教訓で、とても重要なことだと強調します。すなわち、父親と母親で育児を分担するのはもちろん、特別な訓練を受けた保育のプロである保育士さんの力を借りるのも、子どもの発達にとって有益だというのです。

このようなデータによって、山口氏はこのような助言をしています。「良い保育園を見つけることができれは、母親が働くことは子どもの発達に悪影響はないので、安心して仕事に出てください。」

ただし、「良い保育園」とは何かというのは簡単に答えられる問いではないと言いつつ、次のような条件を山口氏は挙げています。「よく使われる指標は、保育士一人あたりの子どもの数や、保育士になるために必要なトレーニングの期間などです。こうした観点から見ると、日本の認可保育所は、先進国の平均を上回っており、一般論としては、安心して子どもを任せられる場所ではないでしょうか。」

さらに彼は、このようなことを述べています。「もちろん、保育所における事故は皆無ではないし、保育所間の質のばらつきという問題もありますから、質の良い保育園がこれまで以上に増えるように、政治家や関係者の方々には頑張っていただきたいところです。」

日本では、育休を3歳まで取らせるようにした方がいいという議論が行われています。それには、3歳までは母親のもとで育てるのがいいという、いわゆる「3歳児神話」が根強くあるからでしょう。また、海外でも3年間育休をとることができる国が増えてきているからということもあるでしょう。また、3年間の育休を認めることが女性の就業を増やすのではないかという議論もあります。山口氏は、経済学や様々なデータ分析から日本で育休を3歳まで取ることに対して、どのように考えているのでしょうか。

彼は、過去に実際に行われた政策について、その効果や副作用について検証する政策評価のやり方はある程度確立しているのですが、まだ行われていない政策についてはテータが存在しないため、その是非を評価するのはとても難しいことだと言います。

一つのやり方として、ドイツなどの「育休先進国」の経験に学ぶというものがあります。ドイツで育休が3年に延長された結果、お母さんの働き方がどう変化したかについてはある程度、解明されているからです。