仕事復帰

山口氏は、まずドイツで1979年から1993年にかけて行われた育休改革と、その政策評価を取り上げて、それについて考察しています。

ドイツでは、1950年代なかばに初めて育児休業制度が導入されました。期間は2カ月間で、給付金は休業前賃金とほぼ同額が支払われていました。随分と早い時期から行われていたのですね。その後1979年から1993年にかけて少しずつ育休改革を行い、1993年には育休期間が3年にまで延ばされました。給付金は最初の2カ月間は休業前賃金と同額ですが、そこから後は減額されて、当時の為替レートで月4万円弱ですが、最大24カ月受け取ることができるようです。

山口氏は、これらの検討する上で、政策評価というものを使いますが、この基本的な考え方は、育休改革直前に出産した人と、育休改革直後に出産した人を比べ、出産後の仕事復帰までの期間や子どもの発達に違いがあるか検証するというものだそうです。この考え方に基づくと、育休改革直後に出産した人のほうが、改革直前に出産した人に比べて、出産1年後に働いている割合が高ければ、育休改革は母親が仕事を続ける上で助けになったと結論づけることができるというのです。

このやり方で育休改革の効果を正しく測るには、改革直前に出産した人々と、直後に出産した人々の間に大きな違いがないことが前提です。両者の違いが、法律で認められた育休期間だけである場合、両者を比べることで政策の効果がわかります。仮に両者が職歴や学歴、年齢などの面でも異なる場合、出産1年後に働いている母親の割合が改革前後で増えていたとしても、それが制度改革のおかげなのか、それとも職歴などの違いのせいなのか判断がつきません。ドイツの政策評価では、改革の直前・直後3カ月といった短い期間に限れば、改革前後で母親の年齢などにほとんど違いがないことが確認されているそうです。

ドイツの政策評価によると、育児休業期間を延ばすほど仕事への復帰が遅くなり、母親が家で子どもを育てる期間が長くなったそうです。復帰が遅くなると心配なのは、長期的な就業率への悪影響ですが、幸い、出産4〜6年後の就業率はほとんど下がっていなかったそうです。

同様の政策評価はオーストリア、カナダ、ノルウェーなどでも行われました。これらの国々の結果も合わせて全体として見ると、1年以内の短期の育休制度は母親の出産数年後の就業にとって悪影響はなく、あるとすれば多少プラスの効果がみられたようです。雇用復帰の助けになる効果があると考えられているそうです。雇用保証があることで、スムーズな仕事復帰の助けになる効果があると考えられているそうです。

一方で、それ以上に長い、たとえば3年の育休制度はお母さんの就業にとってわずかにマイナスの影響があったケースが多いようです。特に、給付金が長期にわたって支払われるようなケースだと、母親が家で子どもを育てるほうが得だということになってしまうため、仕事復帰が遅くなってしまいがちだというのです。育休取得期間があまりに長くなってしまうと、仕事のスキルも習慣も失われてしまうため、長期的には母親の就業にとってマイナスになってしまうようだというのです。