仕事への復帰

仕事を失っても、比較的早く次の仕事が見つかるような流動性の高い労働市場ならば、雇用保障は大きなありがたみを持たないでしょうが、日本は、こうした流動性の低い労働市場ですので、雇用保障があることで、お母さんの出産後の仕事の続けやすさが大きく変わってくると山口氏はいいます。雇用保障によって、この職探しの困難を取り除くことができるためです。

しかし、データによると、あまり長い育休は逆効果になるようです。育児体業による雇用保障で新たに仕事を見つける必要はなくなったとはいえ、あまりに長い間仕事を休んでしまうとかえって復帰が難しくなるかもしれないというのです。それは、週末休み明けの月曜日に、なんだか出勤したくないと感じてしまうのと同じ心境だというのです。

日本の育休制度は、職場復帰を前提としていますが、そのまま退職してしまった場合でも給付金の返還などのペナルティーはありません。そのため、休業期間が長くなるほど、職場復帰がおっくうになってしまうこともあるのではないかと山口氏は考えています。

またさらに彼は、一部の専門職では、仕事から長期に離れてしまうと、職業人としての能力に大きなダメージを受けてしまいかねません。たとえば、高度な研究職、技術職では常に新しい知見・技術が時代遅れになってしまうことが考えられると言います。

また、人脈作りが重要な営業職などの仕事でも、長期に育休の間に顧客を取られてしまったり、人脈が失われてしまったりすることがあるでしょう。こうした仕事についている人たちは、育休期間が長くなればなるほど職場復帰が難しくなってしまいます。

では、条件の悪いアメリカではどうでしょうか?最近、アメリカのIT企業では、育休の充実で人材確保をしているようです。企業にとって、育児休業は優れた従業員を自社につなぎとめるためにも有効な手段です。

「育休後進国」のアメリカですが、近年ではグーグルやフェイスブックといったIT企業を中心に、独自の育休制度を準備する企業が増えてきているそうです。IT業界では優秀な人材の引き抜き合戦が激しいため福利厚生に力を入れており、人材確保の一環として有給の育休を社内制度として認めるようになったのです。

一方で、育休が企業にとって負担とならないよう、多くの国々で制度的に配慮されています。日本では、育休の給付金は雇用保険から支払われますし、休業中の健康保険料や厚生年金保険料の支払いは免除されているため、これらが企業にとって負担となることはありません。しかし、こんなことが懸念されます。たしかに育休中の社員の穴埋めのために、たとえば派遣社員を手配しなくてはならないケースなどが出てくるかもしれません。また、引き継ぎにともなって一時的に仕事が滞ることもあるでしよう。これらは小さい職場では無視できないコストかもしれませんが、そうしたコストを軽減するために中小企業に対し両立支援等助成金が支給されています。-

では、アメリカ以外のヨーロッパとカナダで行われた育児休業制度改革の政策評価はどうでしょうか?山口氏は、育休は母親が仕事を続ける上で助けになるのか、育休を取って母親が家にいることは子どもの発達にとってプラスなのかといった点について考察しています。