自己制御

今福氏は、乳幼児教育において、社会情動的スキルは「10の姿」の「自立心」「協同性」「道徳性・規範意識の芽生え」に対応すると考えています。また、社会情動的スキルは、学校現場において具体的な教育方法と評価方法が定まっていないのが現状ですが、心理学の分野で数多くの研究がなされてきたそうです。そこで、次に今福氏は、それらの知見から、社会情動的スキルにかかわる自己制御と自己肯定感について考察しています。

自己制御とは、自分の行動や感情を自ら統制・調整する能力のことを指します。これによって、私たちは社会の規範や道徳に従うことができます。二歳児でみられる、養育者のいうことを聞かないなどの行動は、自己制御の失敗によるものだと言われています。この時期は、第一次反抗期というイヤイヤ期と呼ばれます。また、青年期の頃にみられる反抗期は、第二次反抗期といいます。

自己制御には、認知的な側面と情動的な側面に整理されます。認知的な自己制御は、実行機能にかかわるものです。その機能には、①行動を抑える抑制能力、②注意や行動の切り替え能力、③情報を保持しながら操作する更新能力があります。幼児期では、抑制能力を評価する課題として「昼夜ストループ課題」、切り替え能力を評価する「DCCS課題」、更新能力を評価する「単語逆唱スパン課題」などがあるそうです。

昼夜ストループ課題では、「太陽」と「月」のカードを子どもに提示し、“実験者が「太陽」と言ったら、子どもは「月」を指さす”というように、実験者が言ったものと反対のカードを選ぶことを子どもに求めます。DCCS課題では、たとえば「赤いボード」のカードがあるところに「赤いうさぎ」と「青いボート」のカードを子どもに提示し、一回目は形でカードを分類してもらい、二回目は別のルールである、色でカードを分類するように求めます。単語逆唱スパン課題では、実験者が言ったことばを反対から読むように子どもに求めます。これらの課題は、4歳で約半数の子どもができるようになるそうです。

次に、感情的な自己制御です。自己制御を評価するものに、後にもらえる大きな報酬のために目の前にある小さな報酬をがまんできるかを問う満足の遅延課題があります。そのうちの有名なものがマシュマロテストです。このテストについては、私は何度も説明しているので知っている人も多いでしょうが、今福氏の説明を見てみます。

マシュマロテストでは、一つのマシュマロを子どもの目の前に置き、15分このマシュマロを食べないでがまんできれば、二つのマシュマロがもらえることを伝えます。

このとき、目の前のマシュマロをがまんすることができる子どもほど、青年期の学業成績、社会性、誘惑への抵抗、ストレス耐性が良好であることがわかっています。また、児童期の自己制御能力が高い子どもは、成人期に収人や職場での地位などの社会経済状態、健康状態が良かったそうです。たとえば、自分の行動や感情を制御できる子どもは、ほかのやりたいことをがまんして勉強に励むことができたり、暴飲暴食をしないために健康が維持されやすいのです。たとえば、4歳のときの自己制御能力の低さが、11歳の肥満度の指標であるBMIの高さと関連することが示されています。