これから大切にすること

養育者のデジタルメディアの使用は、子どもの発達とどのように関係するのかということを今福氏は考察しています。お母さんのデジタルメディアの使用時間が長いと、子どもの発達に負の影響がでるようです。これは、デジタルメディアの使用が生活に悪影響を及ぶことに加えて、子どもとかかわりが少なくなるためであると考えられています。たとえば、お母さんのスマートフォン、テレビ視聴、コンピュータ使用の時間が長い3歳児では、内在化・外在化問題行動がそれぞれ多いことがわかっているそうですます。

デジタルメディアは、今や私たちの生活に欠かせないものの一つです。スマートフォンさえあれば、画面越しに絵本を読めたり、海外のことばや文化に触れられるというメリットもあります。子育ての環境が変化しつつある今、デジタルメディアの正しい使い方が求められています。さらに、これからの時代を生きる子どもたちに対して、情報通信技術を使用し、情報活用能力を育成する新しい教育が望まれると今福氏は考えています。

今福氏は、これからの子育てで大切なことは何かということを、世界の教育から考えています。2014年に、「ウェルビーイングや社会進歩につながるスキルとは?」というテーマが経済協力開発機構(OECD)の非公式閣僚会議で議論されました。そこでは、「whole child」という全人教育における、認知的スキルと社会情動的スキル(非認知能力)の双方の重要性が指摘されました。双方のスキルを教育することで、生活への満足度などのウェルビーイング(幸福感)、社会的な成果や経済の発展につながるということが提案されました。

そこでは、スキルとは「個人のウェルビーイングや社会経済的進歩の少なくともひとつの側面において影響を与え(生産性)、意義のある測定が可能であり(測定可能性)、環境の変化や投資により変化させることができる(可鍛性)、個々の性質」とされています。つまり、スキルは測定による評価や、教育による向上が可能で、幸福感に影響を与えるのです。

スキルの育成は、経済学的な観点からも注目を集めているようです。一人の子どものスキルは連続的で個人差があり、生後早期からの環境経験や投資という新たな学習機会をつくることによって変化すると言われています。養育・家庭環境、学校教育の影響を受けてスキルは発達しますが、養育者による投資は、高等教育や収入、健康、犯罪の減少につながり、最大のリターンをもたらすと考えられています。

次に、今福氏は、スキルを二つに分けて考えています。一つ目のスキルである認知的スキルは、知識や思考を獲得する能力であり、基礎的認知能力、獲得された知識、外挿された知識に分かれます。認知的スキルは、環境への適応能力、学習能力、抽象的思考力など、知能検査で測れる能力です。二つ目のスキルである社会情動的スキルは、目標の達成、他者との協働、情動の制御に分かれます。社会情動的スキルは、知能検査では測れないものです。

現在、この社会情動的スキルが世界的に注目を集めています。しかし、このスキルは今まで過小評価されがちでした。これまでの教育は、認知的スキルの向上に力を注いでいました。今福氏は、学校教育といえば「教科書の内容を覚える」というイメージを多くの人が持ってきたのではないかと言います。しかし近年、社会情動的スキルが高まるというように、両者が相互に影響を及ぼし合っていることがわかってきました。さらに、社会情動的スキルを高めることは、将来的な成功や健康、幸福感の向上につながることが明らかになっています。このことが、今回の保育所保育指針や幼稚園教育要領の中で非認知能力が大切であるという内容の根拠になっているのです。