いじめのしくみ

いじめはどのようなしくみで発生するのでしょうか。いじめは、四層構造であると考えられているそうです。いじめられている子ども、すなわち被害者、いじめている子ども、すなわち加害者のほかに、はやし立てたり、面白がってみている子ども、すなわち観衆や、見て見ぬふりをする子ども、すなわち傍観者がいるとされています。いじめの理由には、以下のようなものがあると考えられています。まず、「こらしめ」と呼ばれるもので、被害者に落ち度があるという認識のうえで、制裁するためのいじめです。次に「異質性排除」という、劣位にあるものを排除しようとするいじめがあります。そして、「不条理」といって、いじめる側がもつストレスの発散や快感を満たすためのいじめなどがあります。

中学1~2年生を対象とした研究によると、以前に説明した情動的共感や認知的共感が高ければ、いじめの加害傾向は低くなることがわかっているそうです。さらに、共感といじめの加害傾向の間には、いじめに否定的な集団規範を個人が意識している傾向が媒介すると言います。いじめに対して否定的な規範意識を涵養することが、いじめの予防につながるかもしれないと今福氏は言います。また、インターネットを通じて行われるいじめは、保護者や教師などの身近な大人からは見えにくい現状にあります。そこで、日頃から子どもとの信頼関係を構築し、保護者や教師に相談しやすい環境を整えておく必要があるのではないかと今福氏は言うのです。

そこで、この時期の子どもには、どのような特徴があるのかを考えなければなりません。思春期にさしかかる小学校から高等学校の時期は、脳の発達に劇的な変化が起こります。報酬や感情にかかわる辺縁系と行動や感情の制御にかかわる前頭前皮質の発達がアンバランスになるというのです。つまり、この時期は、早く成熟する辺縁系と遅く成熟する前頭前皮質の発達差が顕著にみられ、行動や感情の制御が効きにくいためにリスクの高い行動をしやすい状態が続くのだそうです。このような生物学的な特性を知ることで、子どもたちのとる行動の一部は理解ができるかもしれないと今福氏は言います。

また、思春期は、精神障害を発症しやすい時期とも言われています。精神障害には、たとえば、自分や他人に危害を加える行為を行い、衝動に抵抗できない衝動制御障害、アルコールやたばこなどの物質の使用により問題が生じているにもかかわらず、その使用を続ける物質使用障害、不安症状と回避行動を特徴とする疾患群である不安障害、自責的で悲観的な思考、意欲や気力の低下をともなう、うつ病とか双極性障害である気分障害、幻覚や妄想といった精神病症状や意欲、認知機能の低下などを特徴とする統合失調症などがあるようです。それぞれの精神障害の発症時期は、5~15歳に集中しているそうです。児童期と青年期は、社会で生活する基盤を構築する重要な時期であるとともに、理性と感情のアンバランスによって、問題が起こりやすい時期だというのです。

次に、今福氏は、日本の外国籍の子どもについて考察しています。近年、学校現場では、日本語指導が必要な外国籍の子どもが増えているようです。2016年の時点では、日本語指導が必要な児童生徒は、外国籍が3万4335人、日本国籍が9612人もいるそうです。その子どもたちの母語は、ポルトガル語、中国語、フィリピン語、スペイン語、英語の順で多いようです。それらの子どもたちには、どのような問題が起きているのでしょうか。