心理学的観点

保育指針に示された「10の姿」はどのように発達するのかということを、今福氏は心理学的な観点から説明をしています。特にその中でも、対人関係にかかわる「協同性」「言葉による伝え合い」「道徳性・規識の芽生え」について紹介しています。

「協同性」は、「友達と関わる中で、互いの思いや考えなどを共有し、共通の目的の実現に向けて、考えたり、工夫したり、協力したり、充実感をもってやり遂げるようになる」とありますが、「協同性」には、どのような発達的基盤が必要なのでしょうか。

今福氏はいくつかの観点から説明をしています。一つ目は、「共同注意」です。共同注意は、他者と同じ目標を共有するために重要なものです。二つ目は、「心の理論」です。これは、他者の心の動きを理解することで、他者の視点に立って物事を推測することができます。この二つについては、何度もこのブログで取り上げています。そして、この共同注意と心の理論は、発達的に関連していることがわかっています。生後10ヶ月のときの共同注意の能力が高いほど、4歳のときの心の理論の能力か高いことがわかっています。このように、心の理論の萌芽は乳児期に存在し、共同注意などの経験を通して、他者の心の働きを推測する能力が徐々に発達していくと考えられます。

「協同性」にかかわるほかの例としては、共同行為が知られています。共同行為とは、二人以上の人が、行為を時空間的に協調させることです。たとえば、二人でボタンを交互に押して行うゲームは、3歳までにできるようになります。共同注意や共同行為を含むかかわりや遊びをすることで、「協同性」が育つと考えられます。

さらに、子ども自身や周囲の人の気持ちをことばにする声かけも、「協同性」を育むため重要です。たとえば、子どもが3歳の時点で、気持ちを表す心的状態語(「嬉しいね」「悲しいね」「欲しい?」など)をお母さんが使用する頻度が多いほど、1年後の子どもの心の理論の発達が早い傾向にあります。相手の行為や気持ちを理解し、共有する経験を通して「協同性」は育つのです。

次に、「言葉による伝え合い」は、「保育士等、もしくは先生や友達と心をかよわせる中で、絵本や物語などに親しみなから、豊かなことばや表現を身に付け、経験したことや考えたことなどをことばで伝えたり、相手の話を注意して聞いたりし、言葉による伝え合いを楽しむようになる」とあります。では、「言葉による伝え合い」を育むためには、どのようなかかわりをすればよいのかという考えを今福氏は述べています。

赤ちゃんを対象とした研究では、赤ちゃんの発声に対して養育者が即座に発声を返すことで、赤ちゃんの発声が増え、養育者の発声した音を学習するようになることが示されています。乳児期はことばにならない音を発声し、学習する時期です。周囲の大人は赤ちゃんの発声を無視せずに、できる限りその発声に応えることが必要だと言うのです。これは、とても大切なことです。まだ言葉が話せないからといって、赤ちゃんと関わる大人が赤ちゃんに話しかけないこと、言葉にならない赤ちゃんからの大人への主張をきちんと受け止めないことは、その後の赤ちゃんの発語に影響を及ぼすことを知ってもらいたいと思います。もちろん、それは、言葉だけでなく、大人のやること、話していることをじっと赤ちゃんが観察し、学習しているのです。