発達に影響する環境

早産児が過ごす集中治療室での保育器の音環境にかんしてのリスクを減らす方法として、歌いかけを用いた介人研究が臨床現場で行われており、成果をあげているそうです。たとえば、早産で出生した新生児に対して、お母さんが歌いかけを交えて語りかけると、血中酸素飽和度や心拍が上昇し、児の臨界事象(低酸素血症・徐脈・仮死)が減少することが明らかになっているそうです。加えて、人院中の大人の語りかけが多いほど、周産期において1250グラム未満で出生した早産児の発声頻度が増加し、修正7、18ヶ月児時点の認知・ことばの発達が良好であることが示されているそうです。この研究結果は、私たちが保育をするうえでも大切にしなければならないことを教えてくれています。

このような知見を踏まえて、今後どのような取り組みを医療現場や家庭教育でするべきかを考える必要があると今福氏は提案しているのです。

ここまで、今福氏は、発達科学や発達心理学の視点から、赤ちゃんの社会性、ことばの発達や、発達に影響する子育て環境についての考察をしてきました。しかし、彼は、現代社会・教育におけるトピックも、心の発達と深いかかわりがあると考えています。そこで、次にこれまでの考察内容を踏まえ、現代の子どもたちを取り巻く重要概念について確認していきます。

2019年の現在、乳幼児教育をめぐってはどのように変革しているのでしようか。ここで、今福氏は2017年度に、保育所保育指針、幼稚園教育要領、幼保連携型認定こども園教育・保育要領の三つの法令が改定(訂)について触れています。その中で示された、「育みたい資質・能力」と「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿(以下、「10の姿」)」について、この三法令が改定された背景には、それぞれの施設で、乳幼児期に同じように教育を提供し、保育所や幼稚園と小学校以降の教育を一貫させるねらいかあったようだと言っています。

今福氏は、もともとは教育学博士ですが、専門は、発達科学、発達心理学、教育心理学です。その観点からの説明は、私たちがよく聞く切り口と違うところがあるので、とても参考になります。

「育みたい資質・能力」については、今福氏はこう考えています。「これらは、園での遊びの中においても育むことができると考えられています。たとえば、子どもたちは砂場遊びで、乾燥した白い砂でお団子をつくろうとしても固まらず、湿った黒い砂は固まることに気づき、この知識を試してお団子をつくろうとします。お団子だけでなく、砂のお城をつくるかもしれません。また、『もっと固いお団子をつくろう』『次はこれをつくろう』と意欲が出て、新たな遊びを生み出します。」

次に、「10の姿」については、こう説明しています。「これらは、保育内容の健康、人間関係、環境、言葉、表現という五領域のねらい、および内容によって育まれるとされています。たとえば、健康の領域のねらいにある、『健康、安全な生活に必要な習慣や態度を身に付け、見通しを持って行動する』ことは、『自立心』にかかわります。人間関係の領域のねらいにある、『身近な人と親しみ、関わりを深め、工夫したり、協力したりして一緒に活動する楽しさを、愛情や信頼感を持つ』ことは、『協同性』にかかわります。また、『社会生活における望ましい習慣や態度を身に付ける』ことは、『道徳生・規範意識の芽生え』にかかわるでしょう。」