自尊感情尺度

近年、日本の自己肯定感の低さが問題になっています。自己肯定感とは、自尊感情とも言い、肯定的な自己評価や自分を価値あるものとする感覚を意味します。その自己肯定感が日本の若者が低くなっているのです。たとえば、日本を含む7ヶ国の13~29歳を対象に行われた内閣府による2014年の意識調査では、「自分自身に満足していると思うか」という質問に対して、「そう思う」や「どちらかといえばそう思う」と答えた人は、日本では45.8%、アメリカでは86.0%、同じアジアの韓国では71.5七%でした。日本では、半分以上の人が自分に満足していないと感じているようです。

心理学の分野では、自己肯定感を測る有名なものに、「ローゼンバーグの自尊感情尺度」があるそうです。この尺度は以下の10項目で構成され、「いいえ」「どちらかといえばいいえ」「どちらかといえばはい」「はい」の4件法で評価されます。10項目は、①私は自分に満足している、②私は自分がだめな人間だと思う、③私は自分には見どころがあると思う、④私は、たいていの人がやれる程度には物事ができる、⑤私には得意にうことがない、⑥私は自分が役立たずだと感じる、⑦私は自分が、少なくとも他人と同じくらいの価値のある人間だと思う、⑧もう少し自分を尊敬できたらと思う、⑨自分を失敗者だと思いがちである、⑩私は自分に対して、前向きの態度をとっている、の10項目です。その中で、②⑤⑥⑧⑨は逆転項目で、回答したものと逆の得点をつけます。

なぜ日本の若者は、自分に対する自信や満足感が低いのでしょうか。日本は謙虚であることを美徳とする傾向があるために、控えめな回答がなされたのでしょうか。あるいは、日本人は自分と他人との関係を重視する相互協調的自己観をもつ傾向があるために、自分よりも他人との関係を重視してしまい、自分を疎かにしてしまうのでしょうか。様々な理由が考えられていますが、この点については、未だに答えがでていないそうです。

では、子どもの自己肯定感を高めるには、どのようなことが大切なのでしょうか。今福氏は、こんなことを提案しています。小学5~6年生を対象にした研究では、学校生活において教師から褒められる経験が、自己肯定感や学習意欲、学校生活満足度と関連していることが明らかになっています。これは、教師が子どもを褒めることが、子どもの自信や勉強への動機づけ、学校での生活に広く影響を及ぼすことを示しています。一方で、日本の教育は子どもの問題をみつけるという側面に重きがおかれている印象を今福氏は受けていると言います。しかし、上記のような研究結果をみると、学校教育においても子どもの良いところを褒めることを積極的にしていくべきではないかと今福氏は言うのです。

褒められる経験をすると、私たちにはどのような変化が起きるのでしょうか。今福氏は、ある実験を紹介しています。私たちは、お金という物質的な報酬を手に入れたときに線条体という脳の部位が活動します。線条体には、ドーパミンという快楽にかかわる神経伝達物質を受け取る受容体があります。つまり、お金を手にすると、私たちは快楽を覚えるのです。これが、他者から良い評判を得るという社会的な報酬の場合にはどうでしょうか。驚くべきことに、お金を手にしたときと同様に、他者から良い評判を得ると線条体が活動しているのです。他者から良い評判を得ることと褒められる経験は異なりますが、社会的報酬という観点からみると類似しています。他者から良く評価されたり褒められると、私たちは快楽を感じるようです。

自尊感情尺度” への6件のコメント

  1. 日本の若者の自尊感情が他国と比較して低い、ということは2005年くらいから言われ続けています。もしかすると、それ以前から。自己肯定感、自尊感情、あるいは自己有用感、ということが世界的に調査されてきました。日本の若者のそれらは確かに低い割合を示しています。よって、保育の世界でも「一人ひとりを大切に」とか「自尊感情を高める保育」などとして何故か「担当制」という保育が評価され続けています。しかし、ここで考えなければならないことは、自尊感情にしろ自己有用感にしろ、褒められるという他律行為によって確保される、ということであれば、私は問題だと思っています。自尊感情にしろ自己有用感にしろ、それらは他者からの評価ではなく、自らの行為に充足感を感じた時に得られる感情だと思います。少子社会の子どもは、親をはじめとする周囲の大人によって、称賛され褒められ育ちます。しかし、小学校や中学校そして高等学校に進むにつれ、実力がわかってくるとそれまで。そうした時に調査が入ると、日本の若者、自己肯定感が最下位みたいなことになっているのだろうと思うのです。日本の若者というより、日本という国の今日的有り様が若者たちの意識として表れてきていると思うのです。

  2. 「日本では45.8%、アメリカでは86.0%、同じアジアの韓国では71.5%」という、自尊感情の比較結果には驚きました。こんなにも差があったのですね。ここまで大きいと、もはや個人差よりも「文化」の影響があるとしか思えないくらいですね。謙虚さの美徳がこの数字に影響を及ぼしていたとしても、この謙虚さや美徳によって世界からの評判は高い印象があります。治安や人柄など、文化を築いていく人間性が評価されていることに誇りを持つと同時に、昨今のグローバル化に伴い、その部分が欠点にもなっていることもあるという認識は必要なのだなと感じました。そして、褒められるとお金をもらうこととが、社会的報酬という点で類似しているというのも驚きです。金融の教育というのも別で必要だと思いますが、子どもにお金を渡しているという意識はなかったので、褒めすぎ(お金の渡しすぎ)には気をつけたいと思いました。

  3. 自尊感情とは後天的に身につくものなのかと思えてきてしまいますが、実際はやはり誰しもが持って生まれてくるのではないかと想像します。褒められるという他者からの報酬により、それが助長される、というものであれば、日本は助長される機会がとても少ない国と言えるのかもわかりません。褒める、というものが文化の中に殆ど根付いていない、というのでしょうか、だからこそ褒めることに大きな価値があるように感じられるのだと思います。問題を指摘するような、重箱の隅をつつくようなことが教育の中で日常茶飯事的に行われているとするならば、それは元々持っているものを奪いかねない危険な習慣です。また、教育の中だけでなく、我が子のことを信じられない親、家庭内にも子どもの自尊感情を損ねさせるような存在があるのかもわかりませんが、親にも信じてもらえない子が社会に出ることがどれ程酷なことなのか、大人は省みるべき点が多くあるようにも思えてきます。

  4. 自己肯定感や自尊感情が低いというのはこれまでもよく話題に上がっていた内容であるように思います。それは若者だけに限らず、多くの人がそうであるように思います。その中心に教育的な観点は影響しているのでしょうね。「日本の教育は子どもの問題をみつけるという側面に重きがおかれている印象」このことは教育に限らず、日本の場合こういった物事の見方はベースにあるように思います。保育士のころ、「ないところねだりよりも、良いところ探しをしよう」と教えてもらいまいたが、確かに日本の場合は「いいところをより伸ばす」という考え方よりも、「悪いところを直す」といったことが前に出ているように思います。すると、やはり自分の悪いところばかりを注目せざるを得ず、そのうえで「良いところ」を言われたとて、なかなか自信につながることは難しいでしょうね。ただ難しいのは「単に褒める」ではいけないということで、やはりそこには自己効力感や自己有用感といったものが根底になくてはいけなく、ただ満足させるだけではあまりうまくいかないような気もします。大切なのは「褒められる」といった事実ではなく、その裏にある「共感してもらう」「認めてもらう」ことであったりするのかなと思います。

  5. 自尊感情が低い日本人、というのは自分も日本の自尊感情の数値を下げている1人だと思います。それがなんでなのか、あまり考えたことがありませんが、一時期よりはまだマシになっていると思います。それは、支えなきゃいけない人がいることと関係があるように思います。支えなきゃいけない人に、実は自分が支えられていると考えるとどっちがどっちか分からなくなりますね。それほどに我が子とは大きい存在なんですね。

  6. 大学の卒業研究で自尊感情についての研究をしたことを思いだし、ローゼンバーグなどの名前がなんだか懐かしく感じました。卒業研究のなかで、自尊感情を高める要素として家庭の経済状況や褒められた経験などがあがりましたが、最も強い要因は、他者との応答的な関わりであるという結果が出たことをよく覚えています。他者との関わりというのは能力を伸ばす以外のメリットもたくさんあると今再認識しています。

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