育児幸福感

赤ちゃんや子どもにとって、養育者は一番身近な存在といっても過言ではないと今福氏は言います。以前紹介したように、養育者の精神的健康は、子どもの発達に影響を及ぼします。したがって、養育者が幸せを感じて子育てができる環境は、赤ちゃんや子どもにも良い影響があると今福氏は考えています。育児幸福感とはどのようなことなのでしょうか?彼は、育児幸福感は、「育児中のお母さんの肯定的な情動」のことだと説明しています。育児幸福感尺度では、①子どもが元気に成長しているとき安心する「子どもの成長」、②子どもと一緒にいるだけで幸せだと感じる「希望と生きがい」、③子どもによって自分の心が変わり、強くたくましくなった「親としての成長」、④子どもをきつく叱った後でもすぐなついてくれるときに安心した気持ちになる「子どもに必要とされること」、⑤夫が育児に協力してくれることに感謝するとともに安心した気持ちになる「夫への感謝の念」、⑥子どもを通して人とのつながりができたとき嬉しい「新たな人間関係」、⑦子どもに助けられたとき感謝の気持ちになる「子どもからの感謝と癒し」、⑧子どもを産めたことに喜びと誇りを感じる「出産や子育ての意義」、の8因子によって、子育て中に感じる幸せな気持ちを評価します。

育児幸福感の高さは、子育てで感じるネガティブな情動である育児ストレスの低さとかかわるようですが、その関連は弱いことがわかっているそうです。育児幸福感を高め、育児ストレスを低めるためには、異なる援助が必要であるのかもしれないと今福氏は考えています。また、育児幸福感は、お父さんでも研究がされているそうです。どうやら、お父さんはお母さんと共通した育児幸福感を抱いているようです。

また、母子世帯1233、二親世帯2646、計3879世帯を対象とした調査によると、日本の母子世帯のお母さんは、二親世帯のお母さんに比べて、幸福感が低い傾向にあったそうです。また、日本の母子世帯の相対的貧困率は五割を超えており、周囲の人々の心理的な支援であるソーシャルサポートを受けにくい場合も多いようです。家庭が望む子育て支援策を具体的に明らかにすることで、多様なニーズに応える政策を考えていくことが重要ではないかと今福氏は考えています。

一方、0~2歳の第一子をもつ妻・夫へのアンケート調査では、二親世帯においてお父さんの育児頻度か調べられました。たとえば、「○〇ちゃんを寝かしつける」にかんして、お父さんの41.2%が「ほとんどしない」、27.2%が「週に1~2回する」と回答したようです。このように、お父さんの育児への参加は、依然として低い状况にあります。お母さんの心を支えるお父さんの育児参加を促すしくみづくりも必要でしょう。これによって、より幸せな子育て環境になると考えられます。

保育士や幼稚園教諭は、子どもの発達に大切な乳幼児期に、教育や養護にたずさわる職業だと彼は考えています。日本では、社会的ニーズの変化にともない、保育の質の向上や評価が求められるようになっています。保育の質について2018年に厚労省が示したものには、「子どもたちが心身ともに満たされ、豊かに生きていくことを支える環境や経験」のことで、社会や文化における保育の機能によって規定されるものとあります。

育児幸福感” への6件のコメント

  1. 子どもはみんなで育てたほうが良いと思っています。特に、就学前は、そうありたいと思っています。私自身がそうでしたし、わが子もそうでした。親だけの育児が多い今日この頃、仕方がない状況があるとはいえ、果たしてどうなのだろうか、と思ってしまいます。親だけでないなら祖父母と、ということではなく、できれば、隣近所の人たちと、と思っています。ところが現在、隣近所の人たちを巻き込んでわが子を育てるというのはかなり困難になってきています。ほぼ不可能な場合が多い。そうした今日においてこそ、保育園やこども園といった就学前施設の意味が大きくなると思うのです。そこには、親祖父母以外の多様な大人たちがいるだけでなく、子どもにとって実はありがたい、発達が同じくらいの子たちや発達が少し異なった子たちの集団が存在しているのです。自分を守ってくれる人の存在は重要です、子どもにとって。だから、親が大事、という結論だけでは、子どもというそもそもの存在意味を理解していることにはならないような気がします。「親はなくても子は育つ」という言い回しは何を意味しているのか。子は自ら育ちゆく存在です。周囲の環境がこの育ちをサポートする、ということでしょう。愛情不足で育つ子の将来を案じる人たちがいます。だから、母子子育て神話を信仰します。愛情って子どもにとってどういうことでしょうか。私は、子どもの興味・関心・好奇心そして探求心を保障する心こそが愛情だと思っています。だから、私はわが子のみならず、子どもたちの「好き」を応援したい。自分の好きが保障された子どもは他者の好きも認める、と信じています。

  2. 育児幸福感という8つの項目によって、養育者は幸福であることを比較できるということですが、それが父親も同じように感じているかもしれないというのは意外でした。男女脳の違いが、育児の価値観にも表れているように感じていましたが、その共通項目は両親の育児に対する思いを共有する上で有効活用できる項目かもしれませんね。保育の質についてですが、厚労省によって「子どもたちが心身ともに満たされ、豊かに生きていくことを支える環境や経験」と定められていたのですね。心身ともに満たされるには、自分の欲求を素直に表現できる環境であることや、それを受け取ってくれる相手がいること、豊かさを感じるのは、自ら選択した事(道)を思う存分できる時間と環境があることが重要だと感じました。

  3. 妻がこの度の内容を読んでとても感動したと教えてくれ、実際に読み始めてみたら最初の段落で目頭が熱くなってしまいました。子育てや保育から得る幸せが言語化されたものに触れる経験をし、一文読む度に浮かび上がる我が子の顔、あの子たちの顔、場面があり、何気なく過ごしている毎日の小さな浮き沈みを子育てという言葉でまるごと肯定してもらえたような気持ちになりました。自身の育児幸福感は満足できるものであることを再確認できたような気がすると同時に、やはりより多くの人が先生のブログに触れ、多くの知見から現状を見直せるような機会が与えられることを望みます。

  4. 「日本の母子世帯のお母さんは、二親世帯のお母さんに比べて、幸福感が低い傾向にある」というのはやはりそれほど、一人で育てるということが困難であり、周囲のサポートや支援策が必要であるということが数字でも出ているのですね。また、「お父さんはお母さんと共通した育児幸福感を抱いているようです。」というのも実に驚きます。どうやら周囲に育児のサポートとの関連においても、育児幸福感は大きく関わっているのですね。同じように養育する中でこういった育児における感覚は共有することが多いのだろうことがわかります。こういった感情の共有は社会脳が関わっているようにも感じられ、育児というものが母子だけの関係ではなく、社会のサポートを通して行うためにそういった脳の機能も起きているのかもしれないなと感じました。いずれにしても、保育士や幼稚園教諭はこういった子どもの発達の大切な期間に携わる職業だということを改めて考えていかなければいけませんね。そして、今の時代、どういった家庭サポートをすることや子どもたちの発達に対して向き合うことが必要なのか、社会からも推測していかなければいけませんね。

  5. お父さんでもお母さんと同じような育児幸福論を持っているということから同じことを共有して子育てをしていくことが、人類にあらかじめ組み込まれているような気がしました。夫婦間の仲がいい方が子どもの育ちにも良い影響があるということも、そのことを後押ししているようです。脳の男女差などもありますが、子育ての部分では共通のことを考えながらしているということは、本来は子どものためにどのような夫婦間の形がいいのか、というものも考えさせてくれます。

  6. 男の人が育児に参加しないというのはなぜなのか考えてみましたが、そこには単純なコミュニケーション不足も含まれていると思いました。やりたいけど何をして良いかわからない、邪魔になるかもしれないからといって気を使って育児に参加しない父親も一定数いると思います。実際には助けを求めている母親は大多数で杞憂なんですが、経験がないと深読みしすぎてしまうのかなと思いました。、そういった意味でも父親保育のような体験はとても貴重で増やしていくべきと感じました。

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