赤ちゃんの会話

発話を介した相互作用の代表的な形態として、ターンテーキングという話者交代があると言います。ターンテーキングとは、話し手と聞き手が交互に話者になることを指すそうです。発話を介したターンテーキングは、音声器官が発達しており、さえずるものが多いスズメ目スズメ亜目である鳴禽類の鳥やアフリカゾウ、原猿類、サルなどでもみられているそうです。一方、同じターンテーキングでも、ヒトとほかの動物との間では差異もあると言います。動物のターンテーキングはヒトに比べて、その文脈が限定されていると言うのです。たとえば、動物は警戒や求愛などの限られた場面でターンテーキングがよくみられると言うのです。

大人同士の会話では、ターンテーキングにおける一つの発話の長さがおよそ2秒であり二者の発話間間隔はおよそ250ミリ秒と非常に短く、発話間の重なりはほとんどみられないそうです。この短時間で、聞き手は、①話し手の発話が何を意図しているかを予測して理解し、②発話内容の理解、調音を通して発話をする準備を行い、③話し手の発話の終結を韻律の手がかりから推測し、④その終結後に発話をする、ということをしなければならないのです。このように行うことを列挙すると、随分と難しいことを瞬間に行なっているのですね。ターンテーキングを行うには、話し手と聞き手のそれぞれが話者の心的状態を理解する必要があります。そのため、ターンテーキングをより長く継続するには、他者の心的状態の推測に関係するメンタライジングが必要であると考えられます。また、二者間における発話のターンテーキングでは、自他の視点変換にかかわる側頭・頭頂接合部が中心的な役割を果たしていることになるそうです。

発達的観点からみると、赤ちゃんと大人における発話のターンテーキングは生後2ヶ月から観察され、大人同士のターンテーキングとは異なる特徴をもっているそうです。たとえば、赤ちゃん同士のターンテーキングでは、双方の発話の重なりが顕著にみられるそうです。これは、乳児期にはターンテーキングにかかわる神経基盤の発達が未成熟であることが考えられています。生後3、4、5、9、12、18ヶ月の赤ちゃんとお母さんの自由遊び場面を観察した研究では、赤ちゃんの月齢が9ケ月以前の場合と比べて、それ以降の月齢の場合に、赤ちゃんとお母さんの発話間間隔が長くなることがわかったそうです。また、ここにも最近私が気になっている「9ヶ月」という時期が示されています。この生後9ヶ月は、自己―他者―モノの三項関係が始まり、相手の意図が理解できるようになる時期だと言われています。ターンテーキングには、相手の意図を推測する必要があるため、生後9ヶ月の時期にターンテーキングの質が変化すると考えられます。赤ちゃんは有意味語をほとんど話すことはできませんが、大人と「会話」をしていることになるのです。

私たちは赤ちゃんや子どもとかかわるとき、わらべうたや手遊びをします。このときにみられる音声には、どのような特徴や効果があるのかということを今福氏は説明しています。

養育者を含む大人は、赤ちゃんに対して対乳児発話や歌いかけなど、特徴のある音声を用います。対乳児発話は、赤ちゃんに話しかけることで、マザリーズとも呼ばれるそうです。

赤ちゃんの会話” への6件のコメント

  1. 相手の話を聴き、その数秒後に自分も話し始める過程には、4つもの行程をふむ作業があることなど、私たちは普段ものすごい高度なやり取りをしていることになりますね。きっとその高度なやり取りは、幼い乳幼児期に「遊び」ながら習得していたのでしょうね。遊びの凄さをここからも感じます。また、「ターンテーキングでは、自他の視点変換にかかわる側頭・頭頂接合部が中心的な役割を果たしている」ということもあり、自分と他者が区別するのに必要な部分が働くということで、自分と他者とものという三者関係の理解にとっても会話が重要であること、そしてそれが「9カ月」という時期に起こりやすいことは、理解しておかなくてはいけませんね。

  2. 自分たちが普段何気なくしている〝ターンテーキング〟その行程を詳しくみていくと、非常に高度なことをやってのけているということが分かりました。そして、実はこれを赤ちゃんもしているということにまたまた驚きました。赤ちゃんもしているということは、大人になり、何気なくしていくために赤ちゃんも普段から「ターンテーキング遊び」のようなことをしているのでしょうか。その質が違ってくるのが〝9ヶ月〟ということで、相手の意図を推測することと会話をするというのがつながってくるのですね。〝赤ちゃんは有意味語をほとんど話すことはできませんが、大人と「会話」をしていることになる〟ということは大人は知っておかなければなりませんね。

  3. 今回のブログにより、生後9か月児にとって自分と同じくらいの発達の子どもたちが周囲にいることの重要性がわかります。ターンテーキング。代わり番こ。明確な言語にならなくても泣き声や息遣いなどによって赤ちゃん間のターンテーキングが行われていることが推察されます。大人と赤ちゃんのターンテーキングも可能でしょうが、「発話の長さ」が違うでしょうから、会話のプロセスの質は赤ちゃん同士のそれとは自ずと異なっていくような気がします。今後の解明を待ちたい分野ですね。わらべうたや手遊び時に伴われる音声に関する研究が今後披露されるようです。楽しみですね。「マザーリーズ」と言われる手法。音声を伴う手遊びやわらべうたの、赤ちゃんにとっての有効性。今福氏はどのように解き明かすのでしょうか。次回のブログが楽しみです。

  4. 以前先輩保育士と話をしたときに、私は3歳以上児クラスの方が子供と会話ができて意思疏通ができるから好きだと言ったところ、3歳未満児クラスの方がむしろメッセージをたくさん発信しているといわれたことを思い出しました。大人が子供の考えていることを敏感に察して環境を用意するということが未だに難しくて実践できていません。

  5. 子どもたちの声がどうも大きいと感じる時、その会話はターンテーキングされていないのではないかと思い至りました。相手の発話に対して応答することで成立するとすれば、自分の主張だけを押し通そうとしたり、相手の話を最後まで聞かずに自分の意見を言おうとすれば、自ずと声は大きくなります。そして、それはより大きい声で自分の意見を言うだけの場となり、そこで発話される言葉は会話ではなくなります。子どもたちがある意味では先天的にもっているものを伸ばせるような環境について考えさせられてしまいます。

  6. ターンテーキングにおける発話の長さや4つの手順によって会話が行われているということに面白さを感じます。そして、その内容を見ていくと「意図を予想する」ことや「推測する」ことなど、会話の内容を聞いてから話すのではなく、相手を予測しながら話しているということがわかります。つまりこれが「空気感」ということなのでしょうね。そして、最近「会話」が苦手な人が多いということを聞きます。これは今の人はもしかするとこの「相手の意図」を見るということが少なくなってきているのかもしれませんね。そして、その理由が前回にもあった「機械などの人工物から伝達される情報の学習は、効果的でないと考えられます。」というところにあるのかもしれません。「人が喋っているのをみる」ことはあっても「会話をする」というのが減っているのかもしれません。最近ではyoutubeを見る赤ちゃんや子どもたちを見ることが多くあります。そういった現代社会のライフスタイルも大人になったときの社会性に大きな影響を与えてしまっているのだろうということがわかります。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です