視聴覚情報

今福氏たちは、母音の音声模倣が可能である6ヶ月児を対象に、話者の口に対する注視行動と、母音の音声を模倣する頻度との関係を検証しました。話者は、「あ」と「う」のどちらかの母音を発話しました。まず、話者の顔の情報が赤ちゃんの音声模倣に及ばす影響を調べるため、話者が正立顔で発話をする正立条件と、倒立顔で発話をする倒立条件を設けました。どうして、こんなことをするのかというと、顔を180度回転させて倒立にすると、倒立効果が起こり、顔を知覚するのが困難になるのだそうです。また、倒立顔では、発話知覚が弱められるようです。したがって、音声模倣において重要となる視聴覚情報は、正立条件では豊富で、倒立条件では乏しいと考えられます。そこで、もし発話に含まれる視聴覚情報が音声模倣に影響を及ぼすのであれば、倒立条件に比べて正立条件の場合に、赤ちゃんはより高い頻度で音声模倣をすると考えられます。また、もし視聴覚情報が赤ちゃんの音声模倣に対して重要であるとすれば、正立条件において話者の口を注視する傾向にある赤ちゃんほど、音声模倣をより高い頻度ですると考えられます。

実験の結果、倒立顔条件に比べて、正立顔条件で赤ちゃんはより多く音声模倣を行ったすです。さらに、正立顔条件で、話者の口に対する注視時間が長い赤ちゃんほど、音声模倣をより多く行ったそうです。つまり、話者の口に注目していた赤ちゃんほど、音声模倣をよく行うことになります。そこで、大人の話しかけに影響を受けるためには、赤ちゃんに話しかけるときには、口を大きく開けて関心をもたせてあげることが重要かもしれないと今福氏は言っています。

私たちは、他者が誰であるか、自分にとってどのような関係にある他者なのかによって、選択的に模倣を行います。たとえば、アイコンタクトの有無が、模倣に影響を及ぼすのです。ワンらは、社会的トップダウン反応調整仮説を提示したそうです。この仮説では、対人コミュニケーションにおいて重要なアイコンタクトに着目し、アイコンタクトが模倣に及ぼす影響について、行動、および神経科学的なデータをもとに説明したものです。たとえば、成人を対象に、顔の前で手の動作をしている人の映像を提示し、手の動作の模倣を行うまでの反応時間を調べています。このとき、二通りの方法を取ります。一つは、参加者に対してアイコンタクトをしている直視条件です。もう一つは、アイコンタクトをせずに目を逸らしている逸視条件です。その結果、逸視条件に比べて直視条件のときに、参加者はより早く模倣をしたそうです。このことは、アイコンタクトが模倣を制御し、促進する効果をもつことを示していると言います。次に、この直視条件と逸視条件に、観察した手の動き(グ―)とは異なる手の動き(パー )をする模倣抑制条件を加えた手続きを設けて、fMRIを用いて模倣の制御にかかわる神経基盤が調べられました。その結果、参加者が模倣を実行しているときには、感覚情報の符号化を担う上側頭溝と、運動の実行にかかわる下前頭回の機能的な結合が強くなることがわかったそうです。また、模倣抑制条件では、内側前頭皮質の活動が有意に高くなることがわかりました。また、この結果がどのような意味を持つのかはわかりにくいところがあります。模倣とは、科学的に説明すると、脳の問題ですから、難しくなるのですが、この研究の結果から、どうも、次のようなことがわかったということのようです。

視聴覚情報” への6件のコメント

  1. アイコンタクトによる「促進する効果」から、学びを始めるきっかけにもなっているということを以前にも学びました。今から大事なことを言いますよという時は、人は自然と相手の目を見ようとします。目が合わないと学びにならないと思っているのか、それとも、目が合わないと話す気が失せてしまうのかは不明ですが、目や口もとから発話を促し言葉の発達を遂げていく乳児の過程から、顔を向き合う行動というのは大事であることがうかがえます。また、赤ちゃんの視聴覚情報の重要さからは、保育室が声がしっかりと届く静かさであることや口元が見えるようにゆっくりと話す必要があるということを感じました。

  2. 〝アイコンタクトが模倣を制御し、促進する効果をもつ〟とありました。赤ちゃんの発達を促進させるためにも保育者は目を合わせて話しかけることが大切であるんですね。ということは、子どもと同じ目線まで下りて赤ちゃんと会話をする必要があるように感じました。やはり、普段赤ちゃん相手に何気にしていることは大切なことであると同時に、赤ちゃんからの誘導で大人がさせられている、赤ちゃんが大人を自分の発達に誘い込んでいるのではないかと思いました。

  3. 模倣は生物にとって最善の行為でしょう。模倣は、成長発達のための生存戦略でしょう。模倣はショートカット。一から創り上げていこうとすると、やはり限界がある。なら、真似よう。赤ちゃんが携えているDNAは、模倣こそホモサピエンスの特徴だよ、と訴えかけているようです。「話者の口に注目していた赤ちゃん」誰から教わることなく、この行為をやってのける。遺伝子の働きでしょう。遺伝子の自発性を実感しました。私たちは、やらされては育たない生き物のようです。自らやってみる、この自発的行為の中に私たちホモサピエンスのレゾンデータルがある。自発的に真似られなくなった時、私たちは絶滅するのでしょう。

  4. これはあまり共感してもらえないのですが、私は目を会わせるのがとても苦手で、それが親でも親しい友達でも初めて会う方でも同じように見つめあって話していると照れて目をそらしてしまいます。対応策として眉間辺りを見るようにしているのですが、アイコンタクトができていなくても相手が目があっていると感じられれば、問題はないのでしょうか。もし問題がないのなら人の脳は以外と適当なのかもしれませんね。

  5. 運動遊びをしていて、跳びたい跳び箱の段数を尋ねるのに、アイコンタクトで済む時があります。その段数でいきたい、もう少し低くしてほしい、補助の準備は出来たから跳んでどうぞ、跳び箱から少し離れたところで補助の大人とやりとりをする瞬間の画が思い出され、それがいつ身につけたものでもない、そもそもから携えられた人間の能力であることを知ると、この力の偉大さに改めて気付かされる思いがします。そう思うと、目の合わない人や、何を言うにも声の大きい人や、相手に何か思いを伝えるに声に頼る人はその力がうまく育まれずに乏きてしまったのかもわからないと思えてきます。それぞれに育ってきた背景を思いながら対面をする必要があるように思えてきました。

  6. よく大道芸人やアーティストでもそうですが、目を見て手をたたくそぶりを見せたら、自然と同じ動きをしなければいけないような圧を感じます。それと直視条件は同じようなことなのでしょうか。「目は口ほどにものをいう」と言いますが、模倣を促進するというのも分かる気がします。実際、それを科学するとやはり直視条件のほうが感情情報の部分と運動実行の部分との結合が強くなっているのですね。音声模倣において、顔や視線といった資格情報がいかに重要で、それによって赤ちゃんが発声から言葉を習得するのかということがわかります。そのため、保育者は子どもとのかかわりにおいても、目を見て話すことや会話をする機会を持つ必要は多くあるでしょうし、関係性の中で共感することも重要になってくるでしょうね。

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