子どもへの虐待

産後うつは、子どもへの虐待につながる場合も少なくありません。そして、虐待を受けた経験は、様々な部分での脳の発達に多大な影響を及ぼすことがわかっています。たとえば、暴言などの心理的虐待を受けた子どもは、ことばを産出する領域とことばを理解する領域の間を結ぶ弓状束の神経線維が異質であり、聴覚野の一部である上側頭回灰白質の容積がおよそ14%増加しているそうです。これは、シナプスの刈り込みがうまくいかなかったために生じると考えられています。神経細胞同士が過度に結びついていると、情報の伝達に不具合が生じ、ことばでのコミュニケーションに支障がでてくると考えられているそうです。

また、身体的虐待・厳しい体罰を受けると、前頭前野の中でも相手の心的状態を推測することにかかわる内側前頭皮質が小さくなるそうです。それはどういう影響が出るかというと、この領域の異常は、先述した行為障害や抑うつなどになりやすい感情障害とかかわっていると言われています。また、夫婦間のDVを目撃して育つと、視覚野が縮小すると言われています。また、性的虐待を受けると、受けていない人に比べて、視覚野の中でも顔の認知などにかかわる紡錘状回がおよそ18%も小さくなるそうです。友田氏は、「性的虐待被害者の左の視覚野が小さくなっているのは、詳細な画像や映像を見ないですむように無意識下の適応が行なわれたのかもしれない」と述べているそうです。

虐待を含む不適切な養育のことをマルトリートメントと呼ぶそうです。マルトリートメントは、子どもの脳の発達に大きなダメージを与え、さまざまな問題行動へとつながるということがわかっています。マルトリートメントを引き起こす原因としては、養育者の育児不安やうつなどの精神的な不安、社会経済状況や育児について相談できる人がいないことといった家庭を取り巻く問題などが考えられています。そのためにも、子どもの発達を支える家庭環境をより良いものにすることが、今求められているだと今福氏は言うのです。

他にも、様々に育児に対して考えなければならない課題があります。好娠22週から出生後七日までの期間を周産期といいます。この周産期に、特異な環境で過ごす子どもがいます。それは、早産の赤ちゃん、いわゆる早産児です。通常、赤ちゃんは妊娠37週0日~41週6日で生まれ、この期間に生まれた赤ちゃんを満期産児と呼びます。一方、早産児は妊娠37週未満で出生し、満期産児が母胎内で過ごす時期を胎外で過ごすのです。医療技術の進歩によって、早産児や出生時の体重が2500グラム未満である低出生体重児の死亡率は減少傾向にあります。特に、2017年の推計によると、日本では生後28日未満で死亡した赤ちゃんの割合は1000人あたり0.9人であり、「日本は赤ちゃんが世界一安全に生まれる国」になっているそうです。

その一方で、世界では早産児の出生率が増加傾向にあります。2010年の時点で、171ヶ国における早産児の平均出生率は全体の11.1%にのぼり、ヨーロッパ諸国で約5%、アフリカ諸国で約18%でした。日本における早産の出生率は、1980年には全出生件数の4.1%であったのに対し、2010年には5.6%と増加しています。同様に、低出生体重児は1975年には全出生件数のうち男児で5.5%、女児で4.7%であったのに対し、2016年には男児で10.6%、女児で8.3%と増加しています。それは、どのような問題を引き起こしているのでしょうか。

子どもへの虐待” への6件のコメント

  1. 指針でも「保護者に対する支援」が強調されているように、今福氏の「子どもの発達を支える家庭環境をより良いものにすることが、今求められている」というように、育児する側の幅を広げ、まさに社会で子育てしていくことが科学的にも望ましいという形が伺えます。そこで大切なのは、誰がどのように行っていくかです。育児をする保護者、乳幼児を預かる施設、同じ場所を共有する地域社会などがどのように働きかけていけば良いのか、社会はそれを模索しているように思います。直接子どもへの働きかけだけでなく、保護者への支援というと形は様々ですね。肉体的疲労の解消支援、直接的育児負担の軽減になる代行サービス、心的疲労への配慮や新しい知見の享受などもその一つなのだと思います。そのような保護者支援方法を地域社会が考えていくことが、結果的に子どもへの虐待数を減らすことに繋がるということが重要だと思いました。

  2. 赤ちゃんの死亡率が減少し「日本は赤ちゃんが世界一安全に生まれる国」になっているそうです。」の部分を読んで即座に、なのに若者の自殺率は世界一クラス、と思ってしまいました。産後鬱からの虐待、これは何とも悲しいものがあります。母子子育て神話、お母さん信仰、・・・どうやら本気に見直さなければ、とんでもないことになるような気がしてなりません。家庭育児を第一義とする児童福祉法の精神はわかりますが、家庭育児を絶対視するとおかしなことになりはしまいか。子どもの育ちには親兄弟のみならず多様な人々の関わりが必要になってくる、そう思えてなりません。その意味でも、施設における乳児保育は重要なのです。施設にやってきた乳児は、お母さんと一対一関係から解放されます。赤ちゃんは自分の生存戦略として母親以外の存在を求めているような気がします。祖父母であれ近所のおじちゃんおばちゃんであれ、そして園の先生であれ、そして自分と同じような赤ちゃんの存在を求めていると思うのです。園における乳児保育はマストなのです。

  3. 子どもへの虐待の影響はここに書かれてある通り計り知れませんが、それは「虐待を受けて、それでも生きていこうとしている子どもが生きていくために対応した結果」なんだというような印象を受けました。あくまでも生きていこうと必死になっている姿が見えてきました。そこで、大切なことはみんなで育てているという周りの意識、一人で育てているのではないと思えること、なんだと思います。社会全体で子どもを育てているという雰囲気になるとお母さんも赤ちゃんも地域の人たちにも良いというのは明らかなのではないかと思いました。

  4. 「日本は赤ちゃんが世界一安全に生まれる国」と聞いて、とても嬉しくなります。ラグビーの活躍もそうですが、暗いニュースや暗い話題の多い中で、こういった情報はやはり希望になるように感じます。電車の中でコメントを書いていますが、見渡せば中吊り広告のモデルの方々は笑顔でいっぱいで、企業は企業自体を、業界全体を、ひいては電車に乗る人たちを明るい気持ちにしたいという思いが表れているかのようです。そういう明るさをお手本にしながら、今日も一日を楽しんでいきたいと思います。

  5. 保護者に対する支援というのをもっと深く考えなければと思った内容でした。子供のためを思って、良かれと思っていう言葉にも相手の保護者からすれば、聞いていてきついものがあれば信頼関係が崩れてしまいます。その結果子供のことがないがしろになってしまえばもともこもありません。子供だけでなく伝える保護者側の状況や表情等も観察し、内容によっては、どうしても今伝えなければいけないことなのか、その言い方が最も適切であるのかなど、他の先生とも相談しながら決めるべきなのでしょうね。

  6. 子どもへの虐待や両親のDVの目撃などが子どもの脳に与える影響はとても大きいのですね。そして、こういった具体的な内容を見ているとなおのこと、虐待の影響や体罰の必要の無さを改めて感じます。その一時は子どもが静かになったとしても、それが先を見ると思っていない発達をする可能性があるのですね。こういった不適切な養育を「マルトリートメント」というのは聞いたことがなかったですが、その原因が「養育者の育児不安やうつなどの精神的な不安、社会経済状況や育児について相談できる人がいないといった家庭を取り巻く問などが考えられる」とあります。やはりヒトは社会の中で子どもを育てるということが言えるのでしょうね。そういった社会環境ではないからこそ、マルトリートメントといったことが起こりうるということなのでしょう。社会の希薄性がなければ、ヒトはヒトとしての根本的な能力を捨てたも同然なのかもしれません。こういった社会だからこそ、保育機関や教育機関が保護者のサポートとなるような家庭との連携が求められてくるのだと思います。では、どうしていけばいいのか、考えどころですね。

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