オキシトシンの働き

これからの社会は、お互いが双方を理解することが求められます。多様な人材を積極的に、雇用し、活用しようという考え方のことをダイバーシティといいます。今後、ダイバーシティの考えはよりいっそう社会に浸透していくのではないかと今福氏は言います。

近年、脳の興奮や抑制にかかわる脳内物質の神経ペプチドであるオキシトシンの働きが注目を集めており、通称「愛情ホルモン」と呼ばれています。このオキシトシンについても、テレビでも取り上げられ、私がブログでも紹介したものです。このオキシトシンは、分娩や授乳に関することが知られていますが、最近の研究では、オキシトシンは社会性に影響を及ばすことが明らかになってきたと言います。オキシトシンの社会性に対する効果については、脳内のオキシトシン経路が、辺縁系(腹側被蓋領域、側坐核、扁桃体)と前頭前皮質を包含するドーパミン経路と相互作用するために生じる可能性が議論されているそうです。しかし、このような説明はちょっと難しいですが、その仕組みを詳しく今福氏は説明しています。まず、視床下部傍室核には、オキシトシンの神経分泌ニューロンの細胞体があります。そこで合成されたオキシトシンは、辺縁系へ投射され、快情動の喚起に関連する中脳辺縁系のドーパミン経路を活性化させます。ドーパミンは、対人関係における動機づけを高めます。そのために、オキシトシンは、他者の顔や声などの社会的刺激の知覚を促すと考えられているそうです。

たとえば、定型発達者や自閉症者を対象として、体外から取り入れた外因性のオキシトシンが、感情認識や共感の能力を高める可能性が示されているそうです。自閉症者における社会的刺激に対する辺縁系の活動の特異性にも、オキシトシンの投与治療が効果的である可能性があると言います。ゴードンは、8~16歳の自閉症児を対象に、オキシトシンを投与した群とオキシトシンの成分を含まないプラセボを投与した群に分け、バイオロジカルモーションと音声を知覚した際の脳活動を計測したそうです。その結果、オキシトシンを投与した群でのみ、ハイオロジカルモーションを知覚したときに、アイコンタクトや人の動きを観察するときに活動する上側頭溝が強く活動するようになり、怒っている声を聞いたときに、快・不央情動の評価にかかわる扁桃体や自動的な防衛反応にかかわる脳幹の活動が活発になることがわかったそうです。

オキシトシンは、模倣にも効果的かもしれないと今福氏は言います。成人を対象とした研究によると、オキシトシンは表情伝染を促進するようなのです。生後7~14日のマカクザルを対象とした研究においても、オキシトシンを投与されたマカクザルの新生児では、舌だしの模倣をより多く行うことがわかったそうです。

さらに、オキシトシンは母子や父子の絆を強める働きをすることもわかってきたそうです。4~6ヶ月児とそのお母さん、またはお父さんが相互作用を15分行い、その前後で両者の唾液中のオキシトシン濃度が計測されました。その結果、両者のオキシトシン濃度は、相互作用の前後で有意に上昇したそうです。このことは、赤ちゃんと養育者の相互作用がオキシトシンの分泌につながることを示していることになるのです。

加えて、新生児期における脳脊髄液中のオキシトシン濃度が高いほど、6ヶ月児時点で他者に注意を向ける時間や笑顔を表出する時間が長いことがわかったそうです。オキシトシンは、赤ちゃんの社会性の発達にも深くかかわるホルモンだということがわかっているのです。

オキシトシンの働き” への8件のコメント

  1. これだけ長く、しかも保育に関わる専門的領域に及んで綴られてきている当ブログ。当然の如く「このオキシトシンについても、・・・私がブログでも紹介したものです。」となりますね。確かに「オキシトシン」なる「愛情ホルモン」については当臥竜塾ブログで知りました。そのホルモンの性質に関して然程認知しているわけではありませんが、おそらく親子関係の充実をもたらすホルモンなのだろうと思うのです。そしてこのホルモンも「他者の顔や声などの社会的刺激の知覚を促す」、すなわち人間関係に関わるホルモンだということがわかります。私たちホモサピエンスは、好むと好まざるとにかかわらず、この人間関係の中でのみ生きていけるのですね。社会性を育むホルモンであることもわかってきます。こうしてみてくると、オキシトシンに限らず、私たちの体内における諸作用は、関わりの中で生きていかなければならない私たちの宿命を生物学的に支えていることなのだなと気づきます。

  2. 「脳の興奮や抑制にかかわる脳内物質」であるオキシトシン投与治療が、自閉症者に効果があるかもしれないというのはすごいですね。社会性の発達には、「脳の興奮や抑制」のコントロールが必要であるということであり、定型発達児であっても同じように、その能力を最大限いかせるような環境が必要だということですね。また、「オキシトシンは母子や父子の絆を強める働きをすることもわかってきた」ともあり、人同士を繋ぐ物質であることが伝わってきます。人と見つめあったり、おしゃべりをしたり、触れ合ったりすることで、通称「幸せホルモン」とも言われているオキシトシンは分泌すると聞いています。そして、興味深いのは誰かのため料理をすることであっても分泌するというネット情報もありました。直接触れ合っていなくても、オキシトシンが生まれるというのは面白いなぁと思いましたは本当なのでしょうかね。

  3. 人間が社会で生きていくためにこの「オキシトシン」と言われるホルモンが必要なようですね。脳内の興奮を抑制する効果があるということですが、社会で生きていくためにはやはり、この「興奮を抑える」ということが大切なことであるということが分かります。自閉症児にオキシトシン投与という治療があるということ、初めて知ることができました。絆を深めるためにも有効であるとありますが、そのような人間と人間をつながりやすくするための潤滑油的なものであるのですね。

  4. オキシトシンが分泌されればされるほど社会性が高まるということですが、自閉症の方たちはオキシトシンが分泌されづらいのか、それともオキシトシンと反応する受容体に問題があるのかどちらなのでしょうか。もし前者であるならば、幼少時に体外からオキシトシンを摂取し続けることで自閉症の改善には繋がらないのでしょうか。

  5. 愛情ホルモンの分泌により、行動が変わり、より社交的に、社会の間で得られる幸せを享受する方向へ身体が動くかのようで、このホルモンの分泌に必要な項目を埋め続けるかのように、そうあれるように努めることは生きていく上でとても大切なことのようです。また、そのホルモンが分泌された先に、社会へと働きが向く点もとても興味深く、やはり人間の幸せとは人との関係の中にあるのでは、それを本能が知っているのでは、と思えてきます。人間の幸せを、その昔は半分は自然が担っていた、という見方もあるようです。今は自然は傍にあることは少なく、その分を人間関係が占める為に、そこで辛かったことは倍のダメージを人に与えるようなのですが、逆を言えば人間関係がうまくいくなら倍幸せになれるということで、このホルモンの分泌がその鍵を握るなら、やはり何度でも学ぶ必要があるように思われます。

  6. 「体外から取り入れた外因性のオキシトシンが、感情認識や共感の能力を高める可能性が示されている」外部からオキシトシンを入れた場合でも、感情認識や共感能力に影響があったのですね。つまりはオキシトシンの分泌量と模倣活動や社会性には大きな関係があるということがわかってきたのですね。また、オキシトシンの濃度が母子または父子との関りにおいて上昇したというのを受けると、やはり養育者や赤ちゃんと関わる人間との相互作用というのは社会性を育てることにおいて、大きな意味があるということがわかります。最近赤ちゃんを落ち着かせるため、スマホやパソコンで動画を見せている様子をよく見ます。それがいけないことなのかは別として、やはり人は顔と顔を見合わせた状態で関わることはとても大切なことだということがわかります。そして、乳児期こそ、その関わりはより重要になってくるのですね。また、この機会をより多くするためには、母子だけで家庭にいるよりは、子ども集団や大人集団もある園での活動というほうが今の時代、こういった関わりは多いように思います。このことを鑑みても、乳幼児施設のあり方が見えてきます。

  7. 「オキシトシンは、赤ちゃんの社会性の発達にも深くかかわるホルモンだということがわかっているのです」とありました。とても興味深いですね。オキシトシンを投与することで、「他者の顔や声などの社会的刺激の知覚を促すと考えられているそうです」ということでした。人は他者との関わりから幸福感を得るということにもつながっていきそうですね。そう考えると、やはり、人は人と関わることが自然なことであり、そこから様々なことを学んでいったり、幸せを感じるということを改めて感じました。そのような体験が失われているというのはかなり危機感を感じずにはいられませんね。

  8. 久しぶりにオキシトシンの単語を聞きました。このオキシトシンが模倣に関わること、そして赤ちゃんの社会性の発達にも深く関わるホルモンだということ、新しい見解です。母親が我が子に対して愛情を注げる事でオキシトシンが分泌され、それを感じる赤ちゃんも分泌されるとなると、やはり安心して子育てをできる環境が必要なのかもしれません。藤森先生が言われる共同養育が重要なのかもしれません。

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