良い循環

現在、麹町中学校では、学校運営協議会が自律的に機能するようになり、教員も保護者も「自分たちのアイデアで学校が変わる」という実感を持てるようになっているそうです。それぞれの人が、自らの目的とやりがいをもって学校運営に参画してくれているそうです。例えば、保護者との間でトラブルがあった際、「それは違うのではないか」と、別の保護者が矢面に立って、対応してくれることもあるそうです。また、PTAの役員会を中心に、学校運営にも積極的にかかわってくれるようになっているそうです。

彼は、人に仕事をお願いする際、「責任と権限」を意識しているそうです。人は創意工夫ができるからこそ、やりがいをもって物事に取り組むものだと言います。そこには緊張感も生まれますし、リスクを負って取り組むという覚悟も生まれます。逆に、お願いをする側が内容を事細かに指示すれば、受ける側は工夫を凝らそうとは思わず、粛々と作業を遂行するだけになってしまいがちだと考えています。人は裁量権とともに、責任とリスクを背負ってこそ、質の高い仕事をするものだと彼は思っています。しかしながら、学校という組織においては、教員自身がリスクを負いにくい側面があるのも事実だと言います。

その点で、コミュニティ・スクールの指定校等に与えられる、東京都の教員公募制度は、優れた仕組みだと彼は考えています。教員公募制度とは、校長が自校の教育方針などを示し、それに賛同する教員を募集するシステムです。この公募制度を利用して異動してきた教員は、教育理念に賛同し、自らも成長しようと、また、頑張ろうという意志が強く働きます。これは、周りの教員にもよい影響を与えます。教員の自律を図る上でも、コミュニティ・スクール指定校に与えられる教員公募制度は、よい仕組みであると工藤氏は考えています。

こうした中で、教員の意識は着実に変化してきたそうです。若手教員の中には、積極的に外部と関わりを持ち、自身の人脈を広げ、「この人とコラボレーションをしたいので、会ってみてほしい」と彼に提案してくる人もいるそうです。そうした若手に刺激され、周囲の教員も「あの人があれだけやっているのだから、自分もやらなければ」と考えるようになってきたそうです。自律を高めるマネジメントを具体的に行っていく中で、教員の意識に変化が見られてきたことは良い循環をもたらしたようです。

工藤氏は、職員室の「当たり前」を見直します。教員は、「常識がない」「社会を知らない」などと言われることがあります。社会一般では、電話が鳴っていたら放置をしませんし、できれば3コール以内に出ること、自身の名前を名乗ることなどが徹底されているものですが、実は、そうした対応はまだ学校は一般的ではないと彼は言います。鳴り続ける電話を「私のところにかかってきているわけではないから」と、平気で放置しているようなケースもみられると言います。工藤氏は、赴任してすぐに、「教職員心得」なるものを作り、教員に配布したそうです。そこには、電話は3コール以内に出ること、3コールで出られなかった時は「お待たせしました」と言うこと、出た際には「麹町中学校、○○です」と名乗ることなどを明記したそうです。学校は世の中とシームレスであるべきだと彼は考えています。学校文化が、世の中の常識からずれていてはいけないと考えているのです。