当事者としての評価

「学校運営協議会」の制度はとてもいい制度でありながら、消化不良のまま進んでいる状況に工藤氏は残念に思っていたそうです。彼は、「地域が運営する学校」という以上、学校・保護者・地域住民が当事者意識を持ち、責任とリスクを負ってくれるような仕組みを構築していかなければならないと考えました。そこで、彼はさまざまな地域による取り組みを見て回ります。その中で、興味を持ったものの一つに、日本生産性本部のマネジメント手法を導入する形で、公立学校評価に取り組んでいるところを視察します。学校評価は、PDCAサイクルのCが評価にあたります。ところが、この評価項目は、民間事業を意識して開発されたものであり、学校組織になじまなかったということから失敗に終わっていました。

別な地域で、この挫折を生かす形で、新しい学校評価に取り組んでいる学校を視察します。その学校では、学校・保護者・地域住民が話し合いながら学校評価の項目を作り、その結果を「学校評価便り」として関係者に配布していました。この取り組みのよくできているところは、評価基準が明確で簡潔なものであることと、保護者に対する評価なども盛り込まれていたことでした。「学校評価便り」には「授業参観における保護者の態度に課題があり、改善が必要」といった文言も盛り込まれていたそうです。保護者を「第三者」ではなく、「当事者」であるべきであることを実践していたのです。

学校を良くするためには、校長や教員だけでなく、保護者も地域住民も、「学校を良くするために、自分たちは何ができるか」という視点を持たなければならないと工藤氏は考えています。それぞれの人がこの視点で自己評価を行えば、学校は間違いなく良い方へ向かっていきます。工藤氏はこうした点も盛り込みながら、コミュニティ・スクール推進計画を練り上げていきます。

まず、コミュニティ・スクールを機能させるうえで、最も大切なポイントは、学校運営協議会のメンバーだと言います。当事者意識を持って、共に責任とリスクを負ってくれる人を選ばなくては、外野から評論家的な意見をいうだけの第三者機関と化してしまいかねないからだと言います。一般に、学校運営協議会のメンバーには町会長など地域の代表者が入るケースが多いでしょうが、彼は、保護者や元保護者、卒業生を中心に構成します。学校の実態をよく知り、当事者意識を持って、改善すべきポイントとや改善の方向性を共有できると考えたからです。

次は評価項目の作成です。学校評価は、2007年6月の学校教育法改正を受け、全国すべての学校が実施するよう義務付けられているそうです。評価を何のために行なうかと言えば、学校が自律的にPDCAサイクルを回し、経営改善を図っていくためです。しかし、法的に義務化した時点で、やらされている感覚が増し、場合によっては自律が失われるわけで、学習指導要領と同様の矛盾がここにも見られると工藤氏は指摘します。

加えて、文部科学省がガイドラインを示し、具体的な評価項目例を示しているのですが、これがどうも学校の自律を損なっている点があるように彼は感じました。評価項目が多すぎる上に、評価の基準も曖昧過ぎると言うのです。「相手の人格を尊重し、豊かな人間関係を構築できる児童生徒を育成するための指導を行っているか」という項目などは、何をもって「行っている」とするのか、評価者の主観によって評価結果が変わってきてしまいというのです。