作文

工藤氏は、書く指導に当たって、他者意識と目的意識の重要性を訴えています。聞き手が何に興味があるのか、どのような順序で話せば理解してもらえるか、熟考した上で組み立てることが大切で、工藤氏も人前で話をする際はこのプロセスを重視しているそうです。

例えば、作文を書くときには読み手を想像しながら、文章の構成や書き出しを工夫して、読んでくれる人の興味関心を喚起しようとするものだと言います。そうした「他者意識」があってこそ、「伝わる」文章を書くことができるようになると彼は言います。しかし、子どもたちは、作文を書く際に、「他者意識」を持つことが少ないと言います。何を意識しているかというと、担任に「褒められること」「評価されること」、あるいは「怒られないこと」だと言うのです。もしこのような意識で書かれているとすれば、将来に向けた、文章を書き、考えを伝える能力が身につけることにはつながらないと考えているのです。

フィンランドの国語の教科書には、「目的意識」や「他者意識」をもって文章を書かせる訓練が、小学校段階から徹底されているそうです。小学校の作文の授業でも、構成を考えるにあたって、読み手が友達であることを認識し、その読み手に伝わるような訓練を子どものころからするというのです。

さらに書く指導するにあたって、もう一点伝えています。それは、読解力を高めるために、読書を強く推奨する研究者がいますが、彼はそのことのみを推奨するのは適切ではないと考えていると言います。アメリカの俳優であるトム・クルーズは、文字の読み書きに困難を覚える特性を持っています。ですから、映画の台本などを読んでセリフを覚えることが難しく、集中して話を聞いたり、誰かに話してもらったことを覚えたりして、素晴らしい演技を見せてくれます。学校には、様々な生徒が多くいます。他者を意識してコミュニケーションをとることを学ぶために、文字を読んだり、書いたりすることが苦手な子も、トム・クルーズのように集中して話を聞くなどして学ぶことはできますし、また、情報通信技術の力を活用することで、その子にとって、もっとも適切な学びのスタイルをとることもできると考えているのです。

次に述べているのは、「心の教育」についてです。社会にとって、よい行動を行うことができる人を増やすことを実現するために手段が心の教育だと考えます。心の教育は大切だと日本中の人が考えるでしょう。もちろん、工藤氏もそう考えます。しかし、よい行動を行うことができる人間を育てるために心の教育があるということが失われていると感じることがあると言います。

ここで彼は、薬師寺の僧侶の話を紹介しています。「心の持ち方、あるようによって行動が変わり、行動を変えると心を変えることができる。『面白くない、つまらない』と思って授業を受けていると、ついつい頭が下がり、居眠りをしてしまったりする。それは、自分の中にある、ぐうたらな心が自分の行動をそうさせている。しかし、たとえ、寝不足などで体がひどく疲れていたとしても、姿勢を正し、頭を下げ、顔をしっかり意識して向けていくことによって、元気な心が生まれてくる」

この話は、心が行動を決め、行動は心を変えるというように、心と行動の密接な関係を捉えています。