ストレス軽減

また、動物実験でも、遊びがストレスを軽減するのを助けるという考えが裏付けられています。このような概念は神経科学では「社会的緩衝」と呼ばれているそうです。2008年に発表された研究で、ゲティスバーグ大学の神経科学者シヴィは、複数のラットを1つの箱に入れ、その箱に、以前にネコが付けていた首輪を入れました。するとラットは目に見えて不安を示しました。その後、箱を清掃して、ネコのにおいがない状態にしてから、ネコの首輪は入れずにラットだけを箱にもどしましたが、ラットは即座に不安な様子を見せはじめたそうです。おそらくラットは、その場所とネコを関連づけたのでしょう。

ところがシヴィたちがその後、ネコの首輪をそばに置かれたことがなく、不安を感じていない別のラットをその箱に入れると、先に箱に入れられていたラットと新しいラットは、追いかけっこをしたり、転げまわったり、じゃれあったりして遊びはじめたそうです。そしてしばらくすると、最初に箱に入れられていたほうのラットはリラックスして穏やかになったそうです。遊びがラットの不安を軽減させるのを助けたと思われます。ストレスとか不安は、仲間との遊びが軽減させたようです。

ストレスを緩和し、社会的スキルを身につけるのに、どうやら遊びが役に立つらしいことがわかりました。それだけではないようです。研究データによると、遊びには第3の、直感には反する効果があることが示唆されているそうです。遊びは実際に子どもを賢くするようなのです。

1973年、Developmental Psychology誌に発表された古典的な研究で、研究者は90人の就学前児童を3つのグループに分けました。第1のグループは、ペーパータオルの山やドライバー、木の板、クリップの山といった日用品で自由に遊ばせました。2番目のグループはその4種類の品物を使用する実験者の真似をさせました。最後のグループはテープルに座って、何も見ずに自由に絵を描かせました。それぞれ10分間活動させた直後、これらの品物の1つを指して、それをどう使うかを子どもたちに考えてもらったのです。品物で遊んだ子どもは平均すると他の2つのグループの子どもの3倍も、一風変わった創造的な使い方を挙げたそうです。このことから、遊びが子どもたちの創造的思考を伸ばしたと考えられています。

この研究は、私たち保育者にはとても意義あるものです。いわゆるゾーンでの遊び方のヒントがあるのです。ある大学の造形が専門の研究者が、造形指導といって、多くの子どもたちに造形の指導をして作ってもらった作品と、造形ゾーンで自由に子どもたちに造形活動をした作品の違いを研究した論文を読ませてもらったことがありました。はっきり覚えていませんが、それは、どちらがいいということではなく、その作品はだいぶ違っていたというようなものだった気がします。

戦闘ごっこもまた、間題解決能力を育てることがわかっています。1989年にペレグリーニによって発表された論文によると、小学生の男児のうち、大暴れして遊んだ子のほうが、社会的な問題解決のテストでの得点が高かったそうです。テストで研究者は、仲間の子どもからおもちゃを手に入れようとする子どもの写真5枚と、母親に叱られないようにしている子どもの写真5枚を被験者の子どもたちに見せました。それから被験者の子どもたちにそれぞれの社会的間題を解決できる方法をなるべくたくさん挙げてもらったのです。彼らが考えついた戦略のパラエティーに基づいてスコアを決めたところ、戦闘ごっこをした子どもはスコアが高い傾向にあったそうです。

ストレス軽減” への6件のコメント

  1. 私たちの園は「戦いごっこ」はご法度であったと記憶しています。もっと厳密にいうならば、暴力による問題解決は、許容されない、ということです。「戦闘ごっこもまた、間題解決能力を育てることがわかっています。」このことに私は驚きました。そして、その「戦闘ごっこ」なる遊びは、具体的にはどういう遊び?と疑問を抱きました。次回以降のブログを楽しみにしたいと思います。ラットによる実験結果とはいえ、なかなか示唆に富んでいます。「追いかけっこをしたり、転げまわったり、じゃれあったり」そしてその結果は「ストレスとか不安は、仲間との遊びが軽減させたようです。」このことを保育者は知る必要がありますね。但し、ほっといていいわけではないと思います。手を出さなくても、子どもたちの様子を気づかれずに観察し、いざ危険な領域に遊びが発展したら、そこは即介入でしょう。しかし、そうした領域に至らない場合も結構あると思います。保育の真髄を教えてもらったような気がしています。

  2. 遊びが不安を軽減させる。不安を感じた時というのは、嫌な予感がするとか、想像もしないことが起きるのではないかと思ったときに感じるもののような気がします。そんな時、自ら発想が転換できる物や気づき、気をそらす状況が生まれたらその不安は低減することでしょう。そう考えると、子どもにとって「遊び」に向かう自分がいることによって、不安を消し去ろうとしている行為とのとれます。遊びがない状況というのは、不安にかられる状況であると理解するなら、画一的な教育や主体性のない活動というのは「不安」を増幅させてしまう環境の一つでもあることかわかります。

  3. 少しやっただけで持ち主不明になってしまった塗り絵の裏紙を何かに使えないかと考え、それらを組み合わせて恐竜を作らないかと子どもたちに提案しました。ドイツ研修へ行った職員から見せてもらった写真の中の恐竜のイメージだったのですが、子どもたちは独自の発想で着々と作り上げていき、お迎えにきた保護者には「あと30分だけ待って」と要請し、そうして「まだまだ続きがある」としながらも今日のところの完成へと辿り着いていました。生臥竜塾で報告をあげようと思っていますが、このような活動の中で子どもたちは、知識のある友だちをリーダーのように扱ったり、また、必要な道具を調達するチームが生まれたりと、様々な姿を見せてくれました。そしてとても活き活きとしていました。自由遊びの時間がこうした時間になるように、保育者の仕事はこうした時間が生まれるように環境を設定することなのだろうと改めて思いました。

  4. あそぶということは一見シンプルに見えてとても奥が深いですね。誰に言われるでもなく誰から教わるでもなく産まれたときから遊び始め、その他の学生や職業といったような終わりが来るものと違ってほぼ死ぬまでなんらかの病気でもしない限りは遊び続けるでしょう。さらにその中に社会性や想像力を培う要素が含まれているのだとしたら、遊びというのは遺伝子レベルで本能として行われているのでしょう。そんな遊びが奪われては以上犯罪者にもなるでしょうね

  5. 集団の中で遊べる環境があるというのは、子どもの発達に欠かせないもので、遊びから社会的スキルを身に付け、遊びによって、ストレスを軽減する。ということがわかりました。造形の実験にもあったように、決まり決まったものを作るよりも、自由に作ることのできる環境、これは、想像と創造の能力を向上するためには、大切ですね。
    と、私たちが環境、ゾーンを用意していくなかで、どういった力を身に付けてほしいのかには、大人が主体で教えるものではなく、子ども自らが考え、行動できる場というものを常々、考えていく必要性を改めて感じます。

  6. 遊びと社会性や問題解決能力の関連性は見ているととてもワクワクする内容です。造形作品の違いから戦闘ごっこでの育ち、子どもたちから発信されるものと大人が調整するもの考えていけばいくほど、大人が子どもたちに活動として持っていくものは能力向上のものであり、子どもから発信するもののほうが社会につながる非認知的能力がより育つということがよくわかります。どこに視点を持つことがこれからの社会につながる力として必要となるのかをよく考えなければいけないといった時、今回の研究の内容はとても重要な意味合いを持つように思います。

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