反社会的ライフスタイル

「子どもたちの自制心の養成に親はどれだけ重要か」という研究で、子どもの自制心を育てるのに、親は重要ではないということははっきりしましたが、では、何が重要なのかという検証で、まずは遺伝子が挙げられました。ではほかには何があるのでしょうか。ここまでの検証を読み進めていく中で、どのような見解が出されるのか私は少し心配しました。と言うのは、私は、自制心の養成には、他の子どもの存在が影響をしているのではないかと主張してきたからです。人類は、協同育児をされてくる中で、子ども集団において、他の子どもの存在を知り、その他者の意図を理解することによって、自制心の一部が培われてくるのだと思っています。この研究では、どのような結果がだされるのでしょうか?

ビーバーの研究グループの対象は、赤ちゃんではなく、もう少し年齢の上の子に対する研究ですが、出した結論は、子どもの行動を予測するものとして他を圧倒したのが、教室内の他の子どもたちの行動だったのです。皆が知っていることだとことわっていますが、問題のある家庭のティーンエイジャーはビーバー及びライトが言うところの「反社会的ライフスタイル」に陥りやすいのです。研究グループは三つ目の研究でこの関連性を検証したそうです。最初に結論から言うと、家族がいかに機能しているのか、すなわちティーンエイジャーのつきあい関係をきちんと把握しているのか、家庭に父親は健在か、両親(両親が揃っていればの話ですが)のしつけに関する考え方は一致しているのか、家の中がきちんと片付けられているか、それともごみ屋敷のようなのかは、ティーンエイジャーが反社会的ライフスタイルに関わるようになるのか否かには「ほとんど影響しない」という結果が出たそうです。「ところが」と研究者たちは続けています。「思春期の子どもたちが反社会的ライフスタイルに傾倒すると、家族の機能に悪影響を及ぼす」のです。すなわち、反社会的なティーンエイジャーと機能不全家族との間の相関関係は子どもから親への影響なのです。

最後の研究ではティーンエイジャーの反社会的仲間集団への帰属意識を検証したそうです。反社会的な仲間は子どもに悪影響を与えます。これを疑う人はいません。しかし犯罪学者および発達心理学者の多くは正しい子育てをすれば悪い仲間に引きずり込まれずに済むと信じていると言うのです。ライト、ビーバーそして同僚たちが最後の研究で検証したのがこの考えだそうです。この研究では双子を被験者とする発達遺伝学の方法論を導人し、思春期の子どもたちの反社会的仲間集団への帰属における遺伝的関与を測定したのです。このような仲間集団への帰属に関しては遺伝子が大きく関与していましたが、親の子育て習慣の影響は確認できなかったのです。親の姿勢、それが双子に共通するものであっても、それぞれに異なるものであっても、双子の仲間への帰属意識および反社会的行動への傾倒を説明するには至らなかったそうです。

ティーンエイジャーがどのような仲間集団に属することになるのか、そこに遺伝子はどのように影響するのか。あくまでも間接的な影響だろうとハリスは考えています。遺伝子はまず子どもの性格、知性、才能に影響を及ぼすはずです。知性豊かで誠実になる遺伝子素因をもっている子どもは、学業を重視する仲間集団に入る可能性が高いのです。一方で危険を好み、刺激を求める遺伝子素因がある子どもは親が好ましく思わない仲間集団の一員になる可能性が高いのです。「類は友を呼ぶというように、攻撃的なティーンエイジャーや、刺激的で危険をともなうことに惹かれる者たちは、自分の同類を見つけだします。そのような性格特性は部分的には遺伝的なものであるため、自分と同類の者を見つけようとする者はある意味で自分と同じような遺伝子をもつ人を探していることになる」のです。