1980年以降の研究論文

出生順位研究において、もっとも「ゴールド・スタンダード」を満たすものに近いものといえば、エルンストとアングスト自身が行なった研究だとハリスは言います。その目的は彼らの調査結果を裏づけること、もしくはそれらが間違いであったことを示すことであり、その詳細は同じ本の後半に掲載されているそうです。彼らはすべてを正しく統制し、再考した中でも最も根気強い研究よりも多い、7582名の若者を被験者とし、自己報告式のアンケートを用いて、寛大さを含む12の性格に関する項目を測定しました。二人きょうだいに関しては、測定したどの性格項目においても有意な出生順位による影響は認められませんでした。三人きょうだいとなると、一項目においてのみ有意な影響が認められたそうです。末子はわずかですが男らしさの測定値が低かったそうです。

どういうわけか、サロウェイは『反逆者に生まれて』の中ではこの研究については触れていないそうです。

エルンストとアングストが調べた出生順位研究は1980年までのものであり、サロウェイにしても同じです。しかし、出生順位研究はその後も実施されています。そこでハリスはエルンストとアングストが区切りとした1980年以降に発表された研究論文を探すことにしたそうです。今日では、大学の図書館に足を伸ばせない者にとってもこのような検索作業はさほど難儀なことではなくなっています。ハリスが加人しているプロバイダーでは、〈サイコロジカル・アブストラクツ〉にアクセスすることが可能で、そこではキーワード検索の上、発表されている論文の要約を読むことができるそうです。

〈サイコロジカル・アブストラクツ〉で、今日にいたるまでに出版された「出生順位」と「性格もしくは社会的行動」というキーワードに関連する論文をハリスが検索してみたところ、該当する論文が合計123もあったそうです。性格もしくは社会的行動に及ぼされる出生願位による影響には関係のない研究や、要約に研究結果が記されていないものを除くと、50の研究が残ったそうです。それぞれの結果から各研究をサロウェイ説に肯定的、サロウェイ説に否定的、混合、差なし、不明瞭に分類したそうです。その結果、肯定的7、否定的6、混合5、差なし20、不明瞭12となったそうです。ハリスはエルンストとアングスト同様、出生順位は成人後の性格にはなんら影響せず、もし影響があったとしてもあまりに微々たるもので当てにならず、実際には取るに足りないほどであるとの結論に達したと言っています。

出生順位が成人後の性格を大きく左右するわけではないのなら、なぜ人々は出生順位による影響が存在すると思いこんでいるのでしょうか。さらになぜ第一子および第二子以降の人物像が何年間も変わらずに定着することになったのでしょうか。サロウェイの描いた弟像は、一般的な弟としてのステレオタイプとかなり一致しています。穏やかで、愉快で、反抗的、そしておそらくちょっぴり幼稚。もしこのステレオタイプが正確性に欠けるというのなら、そのステレオタイプはどこからきたのでしょうか。

ハリスは、その答えは家庭だと言います。子どもたちの行動を観察する親ときょうだいの行動を観察する子どもたちからきていると言うのです。すなわち家庭内の行動を観察することによって得たものなのだと言うのです。