背の高さ

これらの結果を証拠として、ハリスは思春期の仲間集団における地位の高いもしくは低いは性格に長期的な影響を及ぼすと考えていると言います。背の高い人ほど高給取りになるのは、背が高いからではなく、このような人はおおむね人の上にたつような自信に満ちた性格の持ち主だからだというのです。

また別の証拠もあると言います。以前ハリスが述ベているように、年齢のわりに背の低い男子は心理学的な問題を抱える可能性が高いようです。とはいえ、これを検証する長期的な研究や性格への影響を扱った研究にはハリスはお目にかかったことはないと言います。この種の研究は多くの被験者を集める必要があり、同時にかなり辛抱強く、研究を続ける心要があります。なぜなら背の低い男子のほとんどは低い大人になるからです。幼少期および思春期に背が低かったことの長期的影響に関する仮説を検証するには、大人になってからの身長を一定にする必要があり、そのためには、相当数のデータが必要なのです。

女性に関してその長期的影響を調べるのはさらに困難を要するそうです。なぜなら女子にとって身長が高いからといって集団内で地位が高くなるとは限らないからです。美しさは高い人気度につながります。美しい女性がより積極的になることは証拠に裏付けられているそうですが、この積極性が現在の美貌によるものなのか、思春期当時の容姿の影響なのかははっきりしていません。美しさの統制は身長を統制するように単純ではないのです。

背の高さが地位を上昇させることは男子にだけ通用するようですが、成熟度は男女を問わず、子ども時代でも思春期でも、より高い人気度につながるはずです。もしそうであれば入学時の年齢に応して性格に違いが現れるのではないでしょうか。小中高で同級生の中でも年長だった人と年少だった人との間には性格上の違いがみられるはずだと言うのです。多くの州では幼稚園人園の際に生年月日が区切られますが、それにより一番の年長児と年少児の間では一年近い差ができます。早くまたは遅く入学した者、飛び級もしくは留年した者、年度区切りが異なる州に転校した者を除外したとしても研究の対象になる児童はまだ相当数残っていると言います。研究者たちはこの対象者を二つのグループ、年齢順に上位半数と下位半数に分けます。もしくは四等分し、年齢の上位四分の一と下位四分の一を比較します。測定されるのは大人になってからの性格テストです。この方法論の利点は遺伝子による影響が統制済みであること、早熱者と晩熟者、身長の高い人と低い人の間には遺伝的な違いがあることはわかっているそうです。この違いが性格にも直接的、および間接的に影響している可能性は否定できないそうです。しかし第一子が第二子以降と遺伝的に異なるとする根拠がないように、9月生まれが3月生まれと遺伝的に異なると考えるだけの根拠はないと言うのです。

すでに気づいているでしょうが、遺伝子の影響を除外する方法として ハリスが好んで行なうのが言語と訛りに着目することです。子どもたちは遺伝子によって習得すべき言語や訛りが決められているわけではありません。どの言語や訛りを身につけるかはもっぱら社会的環境によって決まると言います。厳密にいうと仲間と共有する環境だと言うのです。以前ハリスが紹介した証拠は移民の子どもたち、聾者を親に持つ子ども達、そして健常者の親から生まれた聾の子どもたちに関する所見です。いずれのケースも、子どもの成長後の第一言語は児童期と思春期における仲間たちとのコミュニケーションに使った言語です。

背の高さ” への5件のコメント

  1. 背の高い人が高収入を得られる仕組みについて記述してあるところは面白いですね。「おおむね人の上にたつような自信に満ちた性格の持ち主」となるのは、経験的に背の高低に関係ないように思ってきました。少なくとも自分の経験則を物差しにすると、その考え方は自分的には納得はいきません。統計データ分析の結果であるなら、あぁそうなんだ、と参考程度には把握しておきたいなと思ったところです。「子どもの成長後の第一言語は児童期と思春期における仲間たちとのコミュニケーションに使った言語」であることはよくわかりますね。日本の地方で生まれ育った私にとってはとても頷ける話です。そして、日常いわゆる第一言語を使用しなくなってもシチュエーションが整えばすぐにその第一言語(方言)を使用できます。ちょいとぎこちないかもしれませんが。いずれにせよ、子どもの成長発達には「児童期と思春期における仲間たち」が大切なのだということがよくわかります。

  2. 自信に満ちた性格の持ち主だからこそ、高給取りになるというのはなんとなく理解できます。人は自信満々な人に憧れ、その人のもとではいつもよりもチャレンジ精神も高まり、結果的に人望だけでなく社会的成功につながるイメージがあります。また、成長後の第一言語が仲間とのコミュニケーション集団であるというのも、若者言葉が話題にもなっていたりするくらい、ひとつのムーブメントができあがる力を含んでいることがわかります。言語を統一するというのが、集団への所属意識を強固にすることにつながりをもたらすということもあるのかなと感じました。

  3. 「子どもたちは遺伝子によって習得すべき言語や訛りが決められているわけではありません。どの言語や訛りを身につけるかはもっぱら社会的環境によって決まると言います。」今までにも学んできたことであったのに、改めて納得してしまいました。言語においては、言葉を話す為の身体機能それ自体は胎内で形成され、その形状に遺伝的素養が含まれるにしても、その形成された諸機能を用いてどのような言語を発するかは、その後の環境によるということです。そしてそれは胎内にいる内に親から認知的な指導を受けたり、または生まれ出た後周囲の人から教え込まれるものでなく、赤ちゃんが主体的に、能動的にその言語を選びとって獲得していくということです。白紙論と有能論の違いの大きさをここでも改めて感じてしまいます。

  4. 背の高いことが収入に直接影響するのではなく〝おおむね人の上にたつような自信に満ちた性格の持ち主だからだ〟というように、それにより収入が高い仕事につきやすいという解釈なんですね。自信に満ちた人がそのようになりやすいというのは、なんとなく分かります。自分は自分に自信ない方の部類ですが、自信満々な人は「頼りがいがある」「引っ張ってくれそう」というような印象をもつのだろうと思います。そういえば、高校の時は背の高い人が生徒会長をしていました。自分が小さいので高望みはできませんが、息子たちは背が高くあってほしいと思いました。

  5. 身長に関するデータを集めるにはかなりの労力が要りそうですね。なぜなら男の子だけに絞っても身長の伸びかたには、小中学校で劇的に伸びてそれ以降は伸びないタイプ、小中高校と一貫して伸び続けるタイプ、高校以降で劇的に伸びるタイプと少なくとも大きく区分して三つもあるからです。思春期の身長はその子の性格に影響を与えるとありますが、果たしてどのタイプが最もその子の自尊感情や自己肯定感などのプラスの要因になるのでしょうね。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です