高い自尊心

ハリスは、自尊心を高めるために、「やたらめったら褒めたたえることはいとも簡単に自己陶酔を引き起こす」と言うのです。過剰に有頂大になることは、危険を伴うことすらあると言うのです。自尊心の高い人は、自分が不死身だと思いがちであることが問題なのだと言います。暴力行為は自尊心の低さに原因があるという仮説がありますが、再検討された結果、その逆の結論が出されたのです。「暴力行為は過度に自尊心が脅かされたときに、すなわちそれまでは自分が誇らしく思えていたのが、誰かもしくはなんらかの状況」よってそれに異論が唱えられたときに生まれる場合がもっとも多い。」ということがわかったのです。暴力行為には危険がつきもので、ゆえに強さ、肉体的な勇敢さ、如才なさ、そして強運を確信している人の目にはそれが魅力的に映りやすい、と研究者たちは指摘しています。また自尊心の高い人ほど、飲酒運伝やスピード違反が多いという証拠もあるそうです。女子大生を対象にした調査では自尊心の高い人ほど妊娠する可能性を過小評価するという結果が出たのです。彼女たちは自尊心の低い女性たちよりも避妊しない場合のセックスの危険性を低く見積もっていたのです。彼女たちは、妊娠は避けたいと思っていても、自尊心の高さゆえに「私は大丈夫」と思いこんでしまうのです。

確かに自尊心が低いのも決してよいことではないとハリスは思っています。これは精神科医や臨床心理学者のオフィスを訪れる多くの人々がかかえる問題です。彼らは「内向的」な人たちです。すなわち外に発散させ、誰かを攻撃したりするのではなく、自分を痛烈に非難してしまうのです。昔ながらのサイコセラピーの目標は、彼らが自分自身を責めることをやめさせ、自分の親を責めるように導くことであり、時にはそれも効果的です。なぜならこのような患者は鬱の傾向も強く、自尊心の低さは鬱病の一症状であるとともに、その原因とも考えられるのですが、それゆえに子ども時代に関しては不快な思い出ばかりを思い起こしてしまいがちだとハリスは言います。「君らのかかえている問題はすべてパパとママのせいなのだ」と彼らを納得させることはたやすいことであると言うのです。

育児アドバイザーたちによると、親はこの敵意に満ちた世界に対して子どもたちを武装させることができ、そのためには子どもたちが自尊心をもてるように導いてあげればいいのだといいます。しかし、ハリスはそうは思っていないようです。子どもに蜂蜜を塗ったからといって、それによって世界にあふれる酸っぱい経験から子どもを守れるとは思わないと言います。性格の他の側面同様、自尊心もまたそれを獲得した社会的状況においてのみ有効であると言うのです。ある子どもは家庭では自分を誇らしく思えますが、別のところでは自分に嫌気がさしてしまうこともあり、また、以前例に出したようなシンデレラのようにその逆もありうるのです。親は一人の子をきょうだいの中でえこひいきすることによって、その子に自分は特別な存在なんだと思わせることができますが、その自負心への後押しによる走行距離は非常に短いのです。研究者たちは、一般的に自分が親のお気に入りだったと考えている大学生は自尊心も高い、という傾向を見いだすことはできなかったようです。彼らの自尊心が高まるのは、彼らの生活の中でも特定の一場面だけに過ぎないのです。研究者が「家庭内における親子関係」と呼ぶ範囲だけであるとハリスは言うのです。

高い自尊心” への7件のコメント

  1. 自尊心。高い人は「暴力行為・・・飲酒運伝やスピード違反が多い・・・避妊しない場合のセックスの危険性を低く見積もっていた・・・「私は大丈夫」・・・」。逆に低い人は「自分を痛烈に非難してしまう・・・鬱病の一症状・・・不快な思い出ばかりを思い起こしてしまいがち・・・」。自尊心は高くても低くてもいけないことがわかります。まさに、ほどほどに。自尊心は読んで字のごとく、自らを尊ぶ心、です。自分は自分なんだ、そして自分がそうであるように、相手も相手なんだ。だから自分にやさしくあるように相手にもやさしく接する、ということになるのでしょう。この自尊心が高かったり低かったりするとどうも具合がよくない。このことは上記のことでわかります。親は子に自信をつけさせようと「褒める」「持ち上げる」等々を行うことがあるでしょう。どうもそれは逆効果に繋がるのかも。自尊心なり自信なりは親から云々されることではないようです。親兄弟以外の人たちの間で意識せずに必要に応じてついてくるものなのかもしれません。

  2. 高すぎる自尊心が、自己陶酔につながる恐れがあるのですね。高すぎる好奇心が、人を危険に及ぼすものを生み出してしまうということもあるだろうし、人を思いやり、優しすぎるがゆえに、人を殺めたりしてしまうこともあるかもしれません。「◯◯が大切だが、こういう危険性もある」と理解していることが大切なのでしょうか。そして、これまで躾の通説のようなたち位置でもあった自分を誇りに感じる感覚であっても、「自負心への後押しによる走行距離は非常に短い」という結果から、長期的に良い結果を生むのは、社会的なベクトルが自分よりも他者に向いていたり、何に貢献しているかという部分になってくるのかなと思いました。

  3. 「暴力行為は過度に自尊心が脅かされたときに、すなわちそれまでは自分が誇らしく思えていたのが、誰かもしくはなんらかの状況によってそれに異論が唱えられたときに生まれる場合がもっとも多い。」虐待の問題が後を絶たない理由の一つに挙げられるような気がしてしまいます。日本人はディスカッションや自分の意見を相手に伝えることが苦手と言われ、その理由に自分の意見に異論があがると自分を否定された気持ちになってしまう、という傾向があるということを聞いたことがあります。例えそれが自分を否定していたとしても自尊心が高ければ平気なのでは、と思っていたのですが、どうもそれとは別の感情の働きが必要のようです。むしろ感情はそこに置かれないもので、目的や目標へ向かった建設的な話し合いをするということが苦手なのかもしれないと思えてきます。感情移入する場面を選ぶような、大人の振る舞いというものが大切なのかもわかりません。
    そう思うと、子どもが片付けをしない、子どもが言うことを聞かない、それについて過度な躾を、と虐待へ走る親は、自分を否定されたような気持ちになっているのかもわかりません。自分以外の意見を受け入れる、という寛容な精神が育まれずに大人になってしまったということでしょうか。

  4. 自尊心は高すぎても低すぎてもあまり良くないことが起こりうるんですね。それにしても暴力行為や妊娠、飲酒運転やスピード違反など高すぎることで可能性が高まるということに驚きます。あまりにも自分のことを尊いものだと思ってしまうことで「自分なら…」というような甘えが出てきてしまう、神にでもなったかのようになり、全て許されてしまうのではないかという勘違いが生まれてきてしまうのですね。
    そして、自分たち大人は褒めるべき時に褒めるべきで、やみくもに褒めることは自尊心を高めすぎてしまうことになり得ることがらあるんでしょう。そのように考えていくと、この前テレビであった褒めて伸ばすことで若者を中心に生徒数が増えている自動車教習所があるとのことでしたが、それはどうなんだろう?と思ってしまいました。

  5. 自尊心が低い子が抱えている問題の改善のために父や母を利用するのは斬新ですね。しかし人のせいにするというのは必要な力なのかもしれません。わたしの趣味のゴルフもメンタルスポーツで特にパターは強い精神的負荷がかかります。ですので、本番大事な場面で外したときは、カップが動いた、フェース面が曲がった、風が吹いたなど自分以外のものに責任をなすりつけて次のホールに影響がでないようにします。人のせいにするな、と幼い頃から大人に教えられてきますが人のせいにすることで意識が改善するのであれば良い方法なのでしょうね。

  6. 「暴力行為は過度に自尊心が脅かされたときに、すなわちそれまでは自分が帆ころらしく思えていたのが、誰かもしくはなんらかの状況によってそれに異論が唱えられたときに生まれる場合が最も多い」確かにその状況は目に浮かびますね。こういった状況かでカッとしてしまうことが多いのかもしれません。また、逆に自尊心の低い人は「内向的」な人で、うつ病になる人が多いのですね。自尊心が高すぎても低すぎてもよくないのですね。昨今の日本はそのどちらも問題になっているように思います。0か100かで極端な環境や社会づくりがされているのでしょうか。「中庸」と孔子が言ったのはまさにそのバランスのことなのだと思います。そして、そのバランスを教えるのは親ではなく、やはり社会なのでしょう。とりわけ、子ども社会での環境はよりその重要性は大きくなるでしょうし、だからこそ、その子ども環境の多様性はより重要になってくるのはよくわかります。だからこそ、世界的に多様性や異年齢といったものが必要視されているのですね。

  7. 「根拠のない自信」という言葉や姿勢に憧れる部分があったのですが、それはある意味で自尊心の高さ故の自惚れなのかもしれませんね。ただ、高い自尊心を保持していることは物事をポジティブに捉える傾向にあるため、辛く厳しい現実に対しても簡単に打ち負かされないのも確かです。しかし、「子どもに蜂蜜を塗ったからといって、それによって世界にあふれる酸っぱい経験から子どもを守れるとは思わない」とあるように、高い自尊心だけで乗り切れるほど世の中は甘くはありません。そんな現実と向き合い乗り越えて行くためにも、ある程度のストレスは必要ですし、そのストレスに対する耐性をつけることも重要だと私自身が最近感じているところです。

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