親の子どもへの扱い

子どもは親が自分をどのように扱っているかだけでなく、それが兄弟姉妹に対する扱いと比較してどうなのかということまで鋭く感じとっています。もし自分よりきょうだいに対する扱いのほうがよいと思えば、そこから生じる妬みが親子関係、さらにはきょうだい関係をぎくしやくさせ、時にはそれが一生つづくことになるとハリスは警告します。ある研究者はスウェーデンで大人間の人間関係について調べたそうです。対象となったのは、子どもの頃にきょうだいの中でも自分が一番嫌われ者だった、親からの愛情が最も少なく、ただし懲罰は一番多かったと感じている人たちです。この調査によって、これらの人々は他のスウェーデン人と比べて、年老いた親と親密で暖かい関係を築くことが少ないことがわかったそうです。

この調査には因果関係が不明瞭であるという問題があるため、これをもち出すことにハリスはためらいがあったそうです。おそらく親がこの子どもに好意を寄せなかったことにはなんらかの理由があったのではないでしょうか。おそらくその子が難しい子で、大人になっても難しいままだったのかもしれません。考えられないことではありません。しかし、幼い頃にやさしく扱ってくれた親とは自分が大人になってからも親密な関係をもてるということは、理にかなっているようにも思えます。ハリス自身は親のお気に入りではなかったそうです。親はハリスよりも弟をかわいがったそうです。弟は親が住む同じ町に居を構え、彼らの晩年を見守りました。ハリスはというと、大陸の反対側に住み、時折顔を出す程度だったそうです。

その一方で、ハリスが難しい子どもであったのも事実です。弟はハリスよりやさしいと言った親の言葉は正しかったのかもしれないと振り返ります。

親の知らないところで子どもがどのように行動するか、親がそれを決めるのはほとんど不可能ですが、子どもが家庭でどのように行動するかに関しては、親は相当な影響力を行使できます。世界が子どもをどのように扱うのかを親が決めることはできませんが、子どもが家庭でどれだけ幸せであるか、もしくは不幸せであるかは、親の力量次第だとハリスは言います。

子育てマニュアルには、家庭生活を親にとっても子どもにとってもより快適なものにするためのコツが紹介されています。残念ながらこれらの書籍のすべては誤った前提の上に成り立っており、その大多数では子どもとは本来一人一人違っているものだという事実を十分考慮しておらず、またその多くはまったくのたわごとにすぎないとハリスは辛辣です。

議論を進めるために、これまでのハリスの説明をもって育児アドバイザーの言葉はでまかせだとあなたも確信がもてるようになったとしたら、ハリスの子育てについての考え方からは一体何を知ることができるのでしょうか。

もちろん、子どもの現在の生活そして将来にとって子どもの仲間がいかに重要であるかについて、みなさんの認識が深まったことをハリスは願っています。しかしそれだけではなく、私たち人類の進化の歴史もいかに重要であるか、その認識も深めてもらいたいと言うのです。数千世代にも及ぶ私たちの先祖がどのような子ども時代を過ごしていたのかを知ることで、現代家庭のかかえる問題に一縷の光明を見いだせるかもしれないとハリスが思っていることは、私も同様なことを思っているのです。

親の子どもへの扱い” への5件のコメント

  1. 家庭と外での振る舞いの違いは今回のブログで紹介されている通りです。自分の生い立ちを振り返ってみた時、親からぞんざいに扱われたり、他の兄弟と比較されて嫌な思いをしたりしたことはありませんが、だからと言って、親のそばにいて、べったり尽くそうなどと考えたこともありません。私の妹のひとりは、学校の教師によって私たち兄との比較を受け、とても嫌な思いをしたようですし、結果として不良っぽい道を歩み、親からも心配されました。親とは遠く離れたところに暮らしていますが、関係は私よりも良好かも。仲間の存在、そして「進化の歴史」の重要さがハリス女史の説明によって大分わかってきたよう気がします。アロペアレンティングよりも子ども集団の中での育ちが重要である。もちろん、食事は大人からもらわなければ自分たちでとることはなかなか難しい子どもたち。大人としてはそうした生活を保障しながら子ども集団の中で育つ子ども一人ひとりを見守っていくことが大切なのでしょう。大人は子どもを優先順位の先に置く。なぜなら、私たちの未来は子どもたちの手の中にあるから。

  2. 親も一人の人間ということで、子どもの兄弟姉妹間の微妙な好みは出るのでしょうね。その影響が、晩年まで続くというのは深刻な内容であると感じました。日本文化に残る“長男実家を継ぐ説”から考えると、親は長男を可愛がることで自分の将来に明るさをもたらすと思えそうですが、親であっても人間同士ということで、好みや合う合わないがありそうです。また、そのような親の態度が子どもたちの中でも影響して、それを感じながら成長していくという事実もしっかり把握する必要がありそうです。そして、「子どもが家庭でどれだけ幸せであるか、もしくは不幸せであるかは、親の力量次第」という言葉もあり、親となる人のこれまでの生き様がそのまま子どもに与える影響は多大だと思いました。

  3. 因果応報で、原因があって結果があるということであれば面倒を見た子が面倒を見てくれるようになるということはあるように思えてきます。しかしながら子育ての過程で、もしくはその延長線状において、きょうだい間の優しさを比較する場面というのはどういうことなのでしょうか。そう言わさせたハリス氏の未熟さだったのか、そう言ってしまえる親の未熟さなのか、親になった身として、子どもにかける言葉に礼儀を持ちたいと思いました。

  4. 自分は弟がいて、まだ実家暮らしです。昔からですが、弟は親の機嫌とりというか、目を盗むようなことが上手く、自分は下手。だから、親からのお叱りは毎回自分が受けるような感じでした。だからというわけではありませんが、弟の方が好かれていると勝手に思っていました。〝幼い頃にやさしく扱ってくれた親とは自分が大人になってからも親密な関係をもてる〟との結果の確証は不透明ということでしたが、その結果は自分たちにはあまり当てはまらないかもしれません。なぜなら、親に好かれていないと感じていた自分の方が、今では親のことを考えていると思うからです。現在は自分も親の立場になり、なるべくきょうだい間の差はつけないようにしているつもりですが、全く同じということの方が難しいのでしょう。子どもたちからみると差はできているのだと思います。一生モノになってしまうことのないようにしたいですね。

  5. 五人の兄弟がいる私ですが、少し前に兄弟が皆集まる機会がありました。そこでちょうど誰が一番可愛がられていたと思うか、という話になったのですが、面白いことに誰一人として自分が一番可愛がられていたと言った人はおらず、全員が自分以外を選びました。むしろ自分は一番嫌われていたと思う、と言った人もおり、面白いものだと思ったことを覚えています。もちろん母は贔屓をしたつもりなど無いでしょうし全員と平等に接したつもりだと言っておりましたが、母も人間ですし無意識に現れてしまった差が今の人格を構築しているとしたら、どんな態度がもっとも悪影響を与え、どんな態度がもっとも良い影響を与えたのか調べてみたいものです。

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