親の離婚

離婚遺伝子を探しても無駄だとハリスは言います。探すならばあらゆる好ましくない結末を人生にもたらす危険性を高める特性を探した方がいいと言うのです。人との関係を難しくしてしまう特性、たとえば、攻撃性や他人の気持ちへの鈍感さなどや、愚かな決断を下す可能性を高める特性など衝動性や飽きやすさなどです。この特性のリストにどこかで見覚えはないだろうかとハリスは言います。そう、犯罪者に見られがちな特性のリストと似ているのです。子どもたちがファギンの学校の生徒としてふさわしくなるための特性は、同時に幸せな結婚生活を営む可能性を低下させてしまうと言うのです。子ども時代であれば、このような特性の持ち主は精神科医には「行動障害」と診断されてしまいます。その成人版は、「反社会性パーソナリティ障害」と呼ばれ、過去の研究により、それは遺伝することがわかっているそうです。

後に離婚することになる親をもつ子どもたちは、親が実際に別れる数年前から問題のある行動をとるようになります。このことから、子どもの問題行動の原因は離婚そのものではなく、離婚前に見られる家族内の確執だということがわかります。ところが、確執つづきの両親の子どもが問題をかかえやすいその原因は、親子が共有する家庭にあるのではなく、共有する遺伝子にあるのかもしれないとハリスは言います。ジョージア大学の研究者グループが行なった研究では、子どもの行動障害を予期させるのは、親の離婚ではなく、親の性格であることが明らかにされているそうです。反社会性パーソナリティ障害をもつ親の子どもは、行動障害をもつ可能性がさらに高いようです。

離婚、親の性格上の問題、そして子どもの問題行動は、すべてが複雑に入り組んでいるのです。それぞれがあらゆる方面に影響を及ぼすからです。性格的に問題のある人と生活するのは難しく、それゆえに離婚する可能性が高まるのです。その同じ人の子どもは遺伝的な理由から難しい子になりやすいそうです。そこには子どもから親への影響さえあるかもしれないと言うのです。難しい子どもは、婚姻関係にとって大きなひずみになりかねません。以前、ハリスはいかなる家庭もバラバラにしてしまうジョニーに関する笑い話を紹介していましたが、自分の子がジョニーのような子であれば、決して笑い事ではありません。子どもたちの中には、家族全員を逃げ出したい気分にさせてしまう子もいるのです。ジュディス・ウォーラースタインは、離婚する親をもつ子どもは深い罪悪感をいだいていることを指摘しているそうです。子どもたちは親の離婚の原因は自分にあると考えるのです。ウォーラースタインが考慮しないのは、その子どもの思惑の中にも一握りの真実がある場合もあるかもしれないという点だとハリスは指摘します。離婚は娘だけの家庭よりも息子のいる家庭に少ないそうです。息子の存在が親を喜ばせるのかもしれないし、それが父親の家出をためらわせているのかもしれません。しかし、もしその息子が親の満足のいくような子どもではなかったらどうなのでしょうか?もし彼が足手まとい以外の何者でもなければどうなのでしょうか?

もちろん離婚する人々のほとんどが、深刻な性格上の問題をかかえているわけでもなければ、離婚した親をもつ子どものほとんどが行動障害をもっているわけでもありません。離婚した親をもつ子どもも最終的には立派な人間へと成長します。そのことは、イギリの研究がそれを実証しているそうです。離婚した親をもち今や二三歳となった子どもたちが、鬱状態、不安、そして怒りに関する質問で「はい」と答える確率はわずかに高いだけだったそうです。