シングル

実の父親が健在で、子どもたちとは同居していない場合、家族のおかれる状況は統計的に見ると、子どもにとって好ましくない結果と結びついています。この好ましくない結果を、子どもたちの家庭での経験やそこでの子どもたちに対する親の育児姿勢に触れずに説明することが可能であることをハリスは示そうとしています。

シングル・マザーのほとんどはマーフィー・ブラウンにはるかに及ばず、そのほとんどは経済的に苦しんでいます。女性が世帯主となる家庭のおよそ半分は、貧困であるか否かを区分する最低収入として示される貧困線を下回っているそうです。通常、離婚は家族の生活水準、すなわち元妻と彼女の保護下にいる子どもたちの生活水準を大幅に低下させてしまうのです。

収入の減少はさまざまな形で子どもたちに打撃を与えるようです。まず、仲間集団内での彼らの地位に響きます。高価な洋服やスポーツ用品、皮膚科や矯正歯科への通院といった贅沢さが奪われてしまうことで、仲間内での地位が低下しうるというのです。子どもが大学進学を考えるときにも、経済力は一つの判断基準になります。大学進学が困難となれば、高校を卒業しよう、妊娠を避けようという意欲も損なわれてしまうかもしれないとハリスは考えています。

経済状況が子どもたちに与える影響の最たる点は、それによって子どもたちが育つ地域や通う学校が決まるということであるとハリスは言います。シングル・ペアレントのほとんどには、ハリスが夫とともに娘を二人育てたような地域、すなわち子どもたちのほぼ全員が高校を卒業し、在学中に赤ちゃんを産むような子はほとんどいないような地域に住めるだけの経済力がありません。貧困であるがゆえに、シングル・マザーの多くは、他にもシングル・マザーが多く住み、失業率、中退率、十代で妊娠する可能性、犯罪率の高い地域で自分の子どもを育てることを余儀なくされます。

こうした地域に住む子どもたちの多くが高校を中退し、妊娠し、犯罪を犯すことになるのはなぜでしょうか。父親がいないせいなのでしょうか。確かにそう考える人は多いようですが、以前ハリスが説明したように彼女は別の結論に達しているのです。地域ごとに文化は異なり、その文化は延々と継続される傾回にあります。文化は親の仲間集団から子どもの仲間集団へと代々伝えられるのです。文化を伝える担い手は家族ではありません。なぜなら、もし家族を元の地域から引き離し別の場所に移すと、子どもたちの行動は新しい地域に住む仲間たちに合わせようと変化するからだとハリスは述べています。

家族ではなく近隣地域なのだと言うのです。ある特定の地域の中だけを見た場合、父親の存在の有無はさほど重要ではありません。アメリカ北東部のスラム街に住む254名のアフリカ系アメリカ人のティーンエイジャーのデータを集めた研究者たちがいるそうです。そのほとんどは、シングル・マザーが世帯主となっている家庭で暮らしていました。残りは実の両親、母親と継父、もしくはそれ以外の家族的つながりのある人のもとで暮らしていました。そして研究者たちの結論はこうです。

「この調査に参加した思春期の男性で、ンングル・マザーの家庭で暮らす者は、アルコールおよび薬物の使川、非行、中途退学、心理的疲労度に関しては、他の家族構成をもつ若者となんら異なるところはない。」