地域の影響

犯罪者を生みの親にもつ息子を犯罪者に育てあげたのは同じく犯罪者であった養父母ではなかったのです。そうさせたのはその子を育てた地域だったのです。地域により犯罪の発生率は異なりますが、デンマークの田舎で犯罪の発生率の高い地域を探すことは至難の業に違いありません。

一般に人はライフスタイルや価値観を共有できる人が近所にいるような場所に住みます。それは相互に影響しあうからでもあり、特に都市部では類は友を呼ふからだとハリスは言います。この傾向は、海外では多く見られるようですが、日本ではそれほど地域による偏りはないかもしれません。しかし、たとえば、家を購入しようとするときには、たとえば閑静な住宅街を選ぶのか、古い街を選ぶのか、高層のマンションを選ぶのかなどによって、多少価値観が共通の部分があるかもしれません。また、代々住み続けている土地では、やはり一つの共同体として、価値観は似てくることもあるかもしれません。どちらにしても、子どもたちは親の友人や近所の人の子どもたちと一緒に成長することになります。この子どもたちが仲間集団を形成するのです。そしてその仲間集団においてこそ、彼らは社会化を果たすのです。自分の親が犯罪者であれば、友人の親もまた同じ傾向にあるのかもしれません。子どもたちは家庭で身につけた態度や行動様式を仲間集団にもちこみますが、もしそれらの態度や行動様式が皆似たものであれば、仲間集団としてそれを保持することになるのは間違いないだろうとハリスは言うのです。

養子における犯罪性の研究についてハリスは以前述べていましたが、同様に双子およびきょうだいにおける犯罪性の研究も行なわれているそうです。双子もしくはきょうだいに関する行動遺伝学的研究では、同じ家庭で育った子どもたちが共有する環境の影響は、わずかかもしくはまったくないとされるのが普通だそうですが、そこには例外が一つだけあると言います。同じ家庭で育った双子もしくはきょうだいは、犯罪を犯す可能性が一致することが多いそうです。すなわち、両者とも犯罪者になるか両者とも誠実な人間になるかのいずれかだそうです。この相関関係をもたらしているのは双子やきょうだいが共有する家庭環境すなわち親の影響である、とする考え方は圧倒的です。もっとも、同じ家庭で育つ子どもたちは住む地域も同じであり、さらには仲間集団まで同じ場合があります。きょうだいの犯罪性が一致する可能性は、二人が同性で年齢的に近いほど高いそうです。普通のきょうだいよりも双子(一卵性でなくても)においてその可能性は高く、双子の中でも家庭以外でも一緒に過ごす時間が長い双子のほうが、それぞれ別の道を行くような双子よりもその可能性が高いと言われています。

環境が犯罪性に影響を及ぼすことは立証されているそうですが、その環境がすなわち家庭であるとされている証拠はどこにもありません。それどころか、別の解釈が出されているようです。その解釈とは、双子やきょうだいが揃って問題行動を起こした場合、その原因はお互いに与えあった影響や二人が所属する仲間集団から受けた影響にあるというものだそうです。