ハリスの考える進化1

およそ600万年前にチンパンジーとの共通祖先から分岐したヒト族は、600万年の間、アフリカとの往来を繰り返していましたが、150万年前に誕生した「ホモ・エレクトゥス」以外のヒト族は、ほとんどが絶滅していたのです。「ホモ・エレクトゥス」はヒト科の中でもきわめて順調に生息地をアフリカから中東、ヨーロッパ、そしてアジアへと拡大し続けたのです。100万年以上もの間、サハラ砂漠の南北で生き続けたのです。その後、アフリカでは初期段階の「ホモ・サピエンス」にその地位を譲り、10万年前から15万年前には「ホモ・サピエンス・サピエンス」とも呼ばれる最も現代人に近い型の「ホモ・サピエンス」がその地を占領するようになったのです。この交代劇は13万年前のことではないかとハリスは考えているようです。それは、私たちが生きている時代からすると最後の間、氷期にあたり、温暖な気候がしばらく続いた時期だったからだと言うのです。

「サピエンス」がさらに付記され、その地位が現代人にまた一歩近づくと、現生ヨーロッパ人、現生アジア人の祖先はアフリカを後にし、北に進路をとり、中東に移り住みます。その時、その地はすでにヒト科のネアンデルタール人によって占領されていました。彼らは北方系「ホモ・エレクトゥス」の系統をひき、ヨーロッパのほぼ全土と中東に多く生息していました。ちょうどこの頃、新たな氷河期が始まりつつあったため、私たちの祖先はそのまま比較的温順な中東にしばらく留まることになりました。ネアンデルタール人とは、友好的に出会ったかどうかははっきりしていませんが、その地を共有していたこととなります。そして、ジャレド・ダイヤモンドは「大躍進」と呼び、人類学者マーヴィン・ハリスは「文化的飛躍」と呼んだ不思議なことが起きました。原因はいまだ不明だそうですが、その結果はまもなく明らかになったそうです。技術の大躍進に押し出され、私たちの祖先はヨーロッパそしてアジア全土に拡大していったのです。その同じ頃、ネアンデルタール人が姿を消したのです。彼らは7万5000年もの間、氷河時代を乗り越えてその地に生息していたにもかかわらず、気候が穏やかになりかけたその途端に姿を消したのです。ハリスは、「不思議なものだ」とつぶやいています。

こうして勝者となった私たち人類は邁進し続ける唯一のヒト科になったのです。今日まで生き延びることに成功した近縁の種は、アフリカの辺境地帯の限られた領域にのみ生息するゴリラ、チンパンジー、ボノボ、そしてボルネオとスマトラにのみ生息するオランウータンだけです。それ以外はすべて全滅してしまったのです。600万年という比較的短い間に私たちはサルから人間へと進化しましたが、それは艱難辛苦の道のりでした。我々は敵を一人残らず絶滅させたのです。

このあたりの経緯については、私もブログ等で書いてきました。しかし、そこでも書きましたが、わかっているのはその事実だけで、どうしてそうなったかは明らかではないのです。それについて、ジュディス・リッチ・ハリスはどう考えているのでしょうか?

ハリスの考える進化1” への5件のコメント

  1. 「わかっているのはその事実だけで、どうしてそうなったかは明らかではない」ことの何と多いことか。出来事を解明する歴史の作業は謎解きと同じで研究者にはとてもワクワクすることでしょう。ハリス女史はどんな謎解きをしてくれるのでしょうか。楽しみですね。わたしたちホモ・サピエンスは「ヒト科」に属する動物で、チンパンジーやゴリラ、オランウータン、ボノボが近縁、という事実をあらためて認識しなおしてみたところです。かつての赤ちゃん学会の基調講演として松澤先生のお話を聞いたことを思い出しました。先生は「人間とは何かを究明するため」私たちの近縁である類人猿を研究している、というようなことを話されました。「人間とは何か」とは哲学の命題です。私たちは自分たちの今の存在さえ分かっていないところが多いですね。そう考えていくと、わからないところだらけ、ということがわかりますね。この事実を「無知の知」といったのはギリシャのソクラテス。2000年以上時が経過してもいまだわからないことだらけです。それでも、分かったこともおおいわけですが、なぜそうなったか、となるとやはりわからないことだらけですね。

  2. 「彼らは7万5000年もの間、氷河時代を乗り越えてその地に生息していたにもかかわらず、気候が穏やかになりかけたその途端に姿を消した」不思議ですね、ただその事実だけがあること、それを追求していく旅路の過程にいること、それは赤ちゃんを研究していくことや宇宙を研究していくこと
    に似ていて、未知への追求であり、道であると言えるように思えてきます。保育が保育道であるように、それを追求していく為に知識は多岐にわたる必要があることを改めて感じます。

  3. 長い旅路の中で人は進化を繰り返し、そして祖先が種としての勝者になったからこそ、私たち人類は今存在しているのですね。「我々は敵を一人残らず絶滅させたのです。」とありますが、様々な状況や困難に打ち勝った勝者こそが、次なる進化の権利を得られるとも言えるのではないでしょうか。それはさながらふるいにかけ、淘汰されているようにも感じてしまいます。もしかすると、今現在の人類もそのような状況の中にあり、次なる進化のためのふるいにかけられている状態にあるのかもしれませんね。

  4. ネアンデルタール人が〝氷河時代を乗り越えてその地に生息していたにもかかわらず、気候が穏やかになりかけたその途端に姿を消した〟理由は分かっていないのですね。
    そして、現代の科学を持ってしても、いまだに分からないことが多くあることに改めて不思議なものを感じます。ある事象を深く掘り下げていく、なんでそうなったのか追求していくと分からなくなってしまうことが多い気がします。ですが、大切なところはそこにあるのかもしれません。今日の自分たちホモ・サピエンスの繁栄は分からないことが多いのですね。

  5. ホモサピエンスとネアンデルタール人との関係については、以前までは、敵対したなかのような、そして、ネアンデルタール人とホモサピエンスは、全くべつの種だったことがいわれていましたが、最近では、DNAを調べると現代人にはネアンデルタール人の遺伝子があることがわかっているということがあり、生きてきたなかで、ネアンデルタール人との暮らしというものがあったことが推測されますね。自然の変化に堪え忍びながら、集団として生きていく、長い年月のなかで、共存してきたこと、敵が
    全滅しついったことが進化であるのでしょうか。

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