第○○子

長い年月の間に出生順位に関するデータが次から次へと収集され、そのほとんどが性格テストの結果という形式をとっていました。数千にも及ぶ被験者が、まずページ上部に自分が育った家庭での自分の位置を記入し、その下に、才能に自信があるか、気持ちを表現するのは苦手か、決断が嫌いか、など該当するものに印をつけます。数百人もの研究者たちがこれらの用紙を収集し、そのデータを分析しました。残念ながら、この大事業は時間と紙の無駄遣いだったとハリスは言います。1990年、きょうだい関係の第一人者であるジュディー・ダンと行動遺伝学の第一人者であるロバート・プロミンが出生順位のデータをくまなく、そして、おそらくは切望しながら検証しました。そして出した結論が次のようなものでした。

「親がそれぞれの子どもに対してそれぞれ別の接し方をするという議論において、真っ先に思いつくのが子どもたちの出生順位だ。親は故意に第一子に対して、それ以降の子どもたちとは違った扱い方をすると考えられることが多い。…ここが肝心だが、実はそのような違いはこの問題とは関係ない。なぜなら一般の人々における性格や精神病理の違い、すなわちわれわれが説明しようとしている大人になってからの性格的な違いと、個人の出生順位との関連は明確になっていないからだ。これは、人々に広まり支持されている考え方の多くと反するものであるが、数多くの研究をくまなく検証した研究者たちの判断によると、出生順位はきようだい間の違いの中では些細な役割しか演じていないという。…出生順位に基づく体系的な性格上の違いが認められないのであれば、出生順位によって親の行動が異なることが、子どもの成長過程に重大な影響を及ぼすとは考えられない。」

ダンとプロミンは「数多くの研究をくまなく検証した研究者」について言及しているそうです。まず挙げられるのが粘り強いスイス人研究者であるセシル・エルンストとジュール・アングストだそうです。

エルンストとアングストは莫大な労力を費やし、出生順位に関する調査全体を見なおしたそうですが、その中で彼らは世界中で1946年から1980年の間に発表された性格と出生順位に関する研究のうち、入手できたものすべてを考察したそうです。データの中には被験者の行動を直接観察したものもあれば、親やきょうだい、教師などによる評価、さらには多彩な性格テストの結果も含まれていたそうです。これらの結果を収集することで、エルンストとアングストは「性格は出生順位によって違い、第一子的性格というものがある」という仮説を立証できると期待していたのです。

ところが、彼らはそれを立証しませんでした。エルンストとアングストはまず出生順位の影響が明らかにされていると言われる研究のほとんどに、修正することもできないような欠陥を見つけたのでした。その多くは研究者たちが、家族の大きさと社会経済的地位の違いを考慮し忘れていたことにありました。これら自身が相関関係にあることから、正確な結果が得られなくなるのです。エルンストとアングストはかかる欠陥をかかえる研究を排除し、残る研究結果をまとめ、「出生順位は性格に永続的な影響は与えない」という結果を見つけたのです。

第○○子” への6件のコメント

  1. 「「出生順位は性格に永続的な影響は与えない」という結果を見つけたのです。」子育て神話への大きな問い掛けですね。出生順位による性格の傾向やタイプという不変的なものがあるように思えていましたが、それがその子、その人を形成するにどれだけの影響を与えていたのか、そして現在も与えているのか。解き明かされていく中で何とも興味深いのは、研究から得られる結果が、目の前の子どもたちを丸ごと信じるという終着点へ向かっているような気がすることです。そしてそれが終着点でなく始まりであるという点も、保育の奥深さに通ずるように思えてきます。

  2. 出生順位による性格判断は、ついに見つけることができなかったという結論に達したのですね。膨大な研究からそのことが導き出されていることからしても、人間というのはそのような枠にはとらわれない存在であることが証明されたような気がします。
    そして、そのような研究から導き出されるのは、人間の尊さというか、可能性というか、大いなる存在であるということを感じます。そのような人間の一人だということが誇らしく思えます。

  3. “家族の大きさと社会経済的地位の違いを考慮し忘れていたこと”という言葉に納得してしまいました。確かに同じ第一子であれ、家族の大きさ等が違えばかわってきますよね。
    やはり、様々な視点からの研究内容というものが合わさることで見えてくるものがあるのですね。産まれる順位ではなく、家庭を取り巻く大きな環境が影響をするのではと考えることができますが、人の特性は、単に環境の影響というくくりでは、見えてこないことがわかりました。

  4. 私たちは、ともすると、ある類型に当てはめて満足することがあります。長男は〇〇とか、3番目は△△とか。よく「兄弟はいますか」と私はほぼ初対面の相手に訊くことがあります。おそらく、私の中にある長男長女次男次女三男三女等々にたいするある種の刷り込みがあるゆえに、発せられる問なのかもしれませんね。答えを出してもらって、あぁ、彼は3人兄弟の長男だから〇〇だろうと判断することにつながるのですね。しかし、今回のブログによれば、「実はそのような違いはこの問題とは関係ない。」とバッサリ。そして「残る研究結果をまとめ、「出生順位は性格に永続的な影響は与えない」!確かに、私より2歳年下の弟のほうが私の兄として世間では誤認されています。しかも、彼の方がしっかりしている。「出生順位」上位の私はだた上位というだけ。今回も面白い研究結果に出会いましたね。

  5. 「出生順位は性格に永続的な影響は与えない」という結果がまたどんでん返しな最後になっていますね。こうした刷り込みを本当の研究でしっかりと解き明かし、そうではないということを知ると今までのことがなんだったのかという疑問も湧き上がっていますが、どうなのですかね。第何子という影響ではなくして同じような傾向があるのは我々の思い込みであることがわかりますし、これを機にまた目の前の子どもの刷り込みをなくした見方をしなくてなりませんね。

  6. 「出生順位は永続的な影響は与えない」という最後の文章は個人的に色々と考えました。そうは言っても出生順位も多少なりとも影響しているのでは?と思うからです。もちろん永続的に影響を与えないと言うのは納得しますが、少なくとも兄弟で過ごしている間は親の接し方が違うとブログに書かれてあったので、その辺りで性格に影響は与えていると思います。また社会に出て色々な人と接する中でも影響を受けるはずです。こうしてブログを読み進めていくと結論はどうなるのか?結局は何が影響を与えるのか?とても漠然としていますが、とても楽しみでもあります。

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