幼少時の環境

子どもはそれそれ家庭内で自分だけの小さな環境の中で育ち、生まれもった素質がすべてを規定できるわけではありません。行動遺伝学者によって性格特性のばらつきのうち半分のみが個々人の遺伝子構造の違いに起囚することがわかったのです。それゆえに、残り半分は環境によって規定されて規定されているはずです。動遺伝学者だけでなく、皆がそれを「育ち」であると思いこんでいました。唯一ディヴィッド・ロウだけが、子どもの人生にとって最も大切なものは親ではない、子どもは家庭以外の環境ももっており、その環境がより重大な影響を及ぼしているのかもしれないと指摘しました。彼以外はまるでなくした鍵を探すかのように、相変わらず家庭内にその要囚を追い求めたとハリスは指摘しています。「この中のどこかにあるはずだ」と。

親によってさまざまな違いが生じることは周知の事実です。五万人もの心理学者が言っていることが間違っているはずがないのです。崩壊した家族が機能不全の子どもを育むという証拠があれほど揃っていることはどう説明するのでしょうか。しかし、遣伝子も重要であり、家族を崩壊させた、もしくはそれに関与した親の特性を子どもたちは親から受け継ぐこともあります。

遺伝子だけではありません。家庭環境が影響力を持つと考えるのは、自分がその証拠を目の当たりにしたからです。子どもにどのような態度をとるべきかわからない親と彼らのかかえる問題かんしゃくを起こすたびに報酬が与えられる子どもは爆発するかのようにかんしゃくを起こします。親に絶えずけなされて自尊心の低い子ども。態度がころころ変わる親と不安げな子ども、そして別々の文化で育った人の間に見られる顕著な性格の違い。ハリスは彼女自身に課された課題は生やさしいものではないと自覚しています。親は子どもに対して永続的な影響を及ぼすと人々が確信するにいたった様々な事象を別の見地から説明しなくてはならないからです。

ミネソタ大学の行動遺伝学者であるトマス・プーシャールは「ミネソタ大学の別々に育てられた双子の研究に参加している研究者の一人です。彼は1994年にサイエンス誌上で、幼少時の環境が成人してからの性格にどのような影響を及ぼすかについては「まだまだ謎に包まれている」と認めているそうです。さらに大きな謎は、なぜ心理学者が人の性格が生まれと育ちのある組み合わせによって形成されているという考え方にこれだけ長い間執着してきたのかです。生まれとは親から譲り受けるDNAであり、それが影響を及ぼすことは実証されていますが、それがすべてではありません。育ちとはそれ以外に親が子どもに為すことすべてであり、その影響を知るために膨大な労力が費やされてきましたが、いまだにその影響は確認されていないのです。

幼少時の環境” への9件のコメント

  1. 子どもが大人になり、自分を形成したものはあの環境だったからと過去を肯定できた時、その時過ごした環境が程良いものでなく世間から見れば酷く極端な環境だったとしても、その人の肯定によってその環境はその人にとって適切であった、程良い環境であったと言えることができるのかもわかりません。また、そう思うに至るには親から受け継いだ遺伝子が不可欠だったのかもわかりません。そして「さらに大きな謎は、なぜ心理学者が人の性格が生まれと育ちのある組み合わせによって形成されているという考え方にこれだけ長い間執着してきたのかです。」また新たな要因が示唆されているようで、一筋縄でいかない人間の深みをここに感じます。

  2. “性格特性のばらつきのうち半分のみが個々人の遺伝子構造の違いに起囚する”とあることからも遺伝子的に受け継いでいるものは、少なからずあることはわかっていますが、その性格が家庭環境、つまり、親という存在、家庭によって、子どもに与える影響が決まるとありました。
    確かに遺伝子的に受け継いでいるものがあるからこそ、産まれながらにして個性があると感じます。そのなかで、育ちとなると成長発達のレベルというものには、それぞれに個人差があります。となると、個々の遺伝子構造の違いによって、外からの刺激を受けたときの情報獲得の仕方が違うと考えられます。そして、それは、多様な環境を通すなかで、集団に必要な力を身に付けようとしたりと、人は、人を求め、それが親以外となることで、新たな刺激を受けようとしているのかなと考えられます。

  3. 〝育ちとはそれ以外に親が子どもに為すことすべてであり、その影響を知るために膨大な労力が費やされてきましたが、いまだにその影響は確認されていない〟とありました。「育ち」は親がすること全てであるということで、いいことも悪いこともよく分からないことも全てが「育ち」となるんですね。
    そして、影響はというと、詳しいことはまど解明されていないということで、その辺は人間の深さを感じますね。そして〝家庭環境が影響力を持つと考えるのは、自分がその証拠を目の当たりにしたから〟とあり、自分もそうだと思っていましたが、その証拠は上がっていないということで、これからの研究が楽しみになります。

  4. 今回のブログを読むと、やはり自分自身の生い立ちを振り返ってしまいます。チンパンジーとホモサピエンスの遺伝子は99.8%同じだと言われています。親子の遺伝子相似性に至ってはほぼほぼ100%でしょう。親子どころか隣近所のおじさんおばさんとも割合はほぼ同じでしょう。それでもみんな違っている。兄弟でも違うし、双子でも違う。親子でも違う。この違いは一体何だ!と叫びたくなります。さて自分の生い立ち。親環境の影響はあったと思います。いろいろな意味で。それよりも何よりも友人やその家族の影響は大きかった。あるいは年長や小学1,2年生の時父に連れていかれた東京での体験は今の自分に繋がっている。そして、テレビやラジオ、本や雑誌などのメディアも自分の成長に影響していたと思うのです。学習意欲を掻き立てたのは自分で選択し購入させた百科事典。貧乏な我が家で本といえば数冊の文庫本しかありませんでした。思い出しますね、あの幼少時の頃を。

  5. 最後の言葉「いまだにその影響は確認されていない」という一言が、個人的に面白くてなりません。少なくとも親、家庭環境が影響しているのは分かりますが、二つとして全く同じ家庭環境はないですし、そうなると影響も違います。子どもが成人にした時に幼少期の環境がどう影響するのか?自分の経験を思い出して見ると、個人的にはどれも良い環境で経験をしたと思います。それが今の性格にどう影響しているのか自分では分かりませんが、親の遺伝子、自分の置かれた環境、様々なものが相互作用し現在の自分を作りげていると思うと、何だか感謝の気持ちでいっぱいになりました・・・。

  6. 『幼少時の環境が成人してからの性格にどのような影響を及ぼすかについては「まだまだ謎に包まれている」』とあり、この謎の難しさを感じます。それは人それぞれだからやり難しいのでしょうか。我が身を振り返ると個人的には中学、高校の影響も大きかったようにも感じます。ただ、その基盤が幼少期であることからどんな幼少期を過ごしていたかも不思議に思います。中、高となかなか人に流されながらも最終的には自分のしたい職業につけたことは幸運です。果てしない研究の道のりということがよくわかります。

  7. 「ハリスは彼女自身に課された課題は生やさしいものではないと自覚しています。親は子どもに対して永続的な影響を及ぼすと人々が確信するにいたった様々な事象を別の見地から説明しなくてはならないからです」ということからはハリスがものすごく大きな課題を相手にしているということを感じます。多くの人が当たり前、当然、決定的と考えていることを打ち崩すというのはとてもパワーのいることなのかもしれませんね。確かに、私もこのように教えていただかなければ、親の影響の大きさをかなり信じ込んでいたと思います。まだ、完全に自分の中で腑に落ちたという感覚はありませんが、そのようなことを知りながら、子どもたちと関わったり、生活したり、生きた行くことで、様々な場面のそのことを考えるきっかけが生まれていくように思います。そして、よりそのことを体験として実感していくのかもしれませんね。

  8. 自分としてはあまり考えたことはないのですが、いろんな人と付き合う中で、やはり私自身も両親や兄弟、友人からその時期に応じて様々な影響を受けてきたのだということを感じます。そして、すべては家庭ではないということも同様に感じます。もちろん家庭の影響は決して小さいものではなく、大きな影響を受けていることは間違いないでしょう。しかし、兄と自分を比べても遺伝子は同じであっても環境が同じであっても決して同じではないですし、性格も違います。とはいえ、「幼少時の環境が成人してからの性格にどのような影響を及ぼすかについては「まだまだ謎に包まれている」と認めているそうです。」というように具体性を立証するとなると非常に難しい問題になってくるのでしょうね。

  9. 親のさまざまな違いや遺伝子、そして家庭外環境と子どもたちは本当に様々な要因から影響を受けているのですね。そもそもに乳幼児の研究は難しく、なかなか進まないという部分を加味すると本当に解明していくのが難しいのだろうなと感じます。また「幼少時の環境が成人してからの性格にどのような影響を及ぼすかについては『まだまだ謎に包まれている』と認めている」とありました。こういった神秘的な部分は面白いですし、惹かれる部分でもありますし、「いまだにその影響は確認されていない」といったところも人間というのは、子どもというのは面白いなとつくづく思えます。

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