ドイツ報告10

2日目の午前中に訪れた園は、49名定員の保育園です。ドイツで幼稚園(キンダーガルテン)というのは、3歳児から就学前までの子どもが在園している園のことであり、保育園(キンダークリッペ)というのは、0歳児から3歳児まで在園している園のことを言います。入園は保護者の就労には関係なく、したがってお迎えも14時、15時、15時と様々です。この園の特徴の一つは、12年前からインテグレーション園に指定され、しょうがい児を積極的に取り入れた統合保育を行っています。

園児49名が五つのクラスに分かれており、スタッフは20名、うちヒーリング担当1名、養護5名が含まれています。そのほかに給食1名、清掃等1名です。しょうがい児は養護が主に担当し、週1回小児科医が巡回に来るそうです。建物は、1879年に建てられた重要文化財です。ドイツでは、古い建物は非常に大切にし、大事に使っています。

保育形態として、1階に2クラス、2階に3クラスあり、それぞれの階においてはオープン保育を行っています。乳児もいるため、1階の2階の行き来は、たまに行いますが、基本的には同じ階のみオープンのため、ゆるやかなオープン保育と言っています。保育者は、部屋ごとに保育を分担します。子どもたちはどの部屋で遊ぶかが自由ですが、バランスをとるため、1つの部屋が6名以上にならないように配慮しているそうです。園での遊びは、一人遊びは家庭でも行われるため、ここでは乳児から子ども集団のある所という認識を持ちます。ですから、先生が子どもにべったりと着くことはなく、子どもたちは自由に部屋を行き来し、子ども同士が触れ合っています。

日本では、どうしても乳児から入園となると、保育者との愛着形成が大切といって、特定の子どもの担当になることが多いのですが、ドイツでは少し考え方が違うようです。というよりも、最近のアタッチメント研究により、複数の保育者との信頼関係を結ぶことに重点が置かれます。オープン保育という形態は、それが基盤であり、大切です。また、その信頼関係は、保育者と子どもだけでなく、保育者と保護者との関係においても丁寧に行われます。そのために、保護者に園に一緒にいてもらうならし保育期間は、6週間から8週間とるそうです。この期間、保護者は子どもと一緒に保育室にいるわけでなく、待機室で待機しているのです。すなわち、何かあったら保護者がすぐに来てくれる、保護者がそばにいてくれるといった愛着形成をしっかりと保育者と子どもの間ではなく、保護者との間でつけてもらうのでしょう。

子どもたちは2週間ぐらいになると、自分から保護者に手を振るようになると言います。これも、ひとつの「参画」の取り組みだそうです。子どもが安心してここで過ごしているかどうかを、子どもが自分の気持ちを素直に表現しているからです。過ごす場所も、赤ちゃんは主にカーペットかクッションの上で過ごしますが、それを上の子は保障してあげます。これも異年齢の良いところの一つだと言います。

また、ならし期間が長いことで、病気になりにくかったり、悲しい思いをすることもなくなると言います。「ぜひ、日本でもどうですか?」と言われたのですが、「もちろんしたいですが、保護者の職場が許しません」と言うと、ドイツでは、事前のそのことが職場でもわかっていて、その期間を調整してくれるそうです。その方が、かえって、そのあとの仕事に良い影響を与えるからだそうです。うらやましいですね。

ドイツ報告10” への10件のコメント

  1. 藤森先生のブログからドイツの保育事情を知ることができます。「インテグレーション園に指定され、しょうがい児を積極的に取り入れた統合保育」を行っている保育園が日本にはどれだけあるのでしょうか。私が勤める園でも「障がい児保育」を行っています。2名受け入れることになっています。協定でそう決められています。しかし、それだけです。「スタッフは20名、うちヒーリング担当1名、養護5名が含まれています。・・・しょうがい児は養護が主に担当し、週1回小児科医が巡回に来るそうです。」この部分を目にして「ヒーリング担当」か。養護担当として職員が採用されている。ヒーリング担当や養護担当にはどのような資格が必要なのだろか、そうした疑問を抱きながらも、「インテグレーション」とは如何なることか行政が熟知した上でシステムが構築されていることがわかります。日本の「障がい児保育」について考えてしまいます。「先生が子どもにべったりと着くことはなく、子どもたちは自由に部屋を行き来し、子ども同士が触れ合っています。」この点は私が勤める園の保育形態と一致しています。「ならし保育期間は、6週間から8週間」、このことはハンガリーでも確認しました。いわゆる「担当制」保育のハンガリーですが、「何かあったら保護者がすぐに来てくれる、保護者がそばにいてくれるといった愛着形成をしっかりと保育者と子どもの間ではなく、保護者との間でつけてもらうのでしょう。」という部分は一緒です。もっとも「担当制」の保育形態はドイツ・ミュンヘンの「オープン保育」とは異なっていますね。子どもの「参画」という視点に立った時、どうなのでしょうね。

  2. 乳母という存在があったことを歴史を題材にした物語の中から知ることができます。「日本では、どうしても乳児から入園となると、保育者との愛着形成が大切といって、特定の子どもの担当になることが多い」産みの親と育ての親、そのような関係性を追求しようとした結果なのかもわからないと想像しました。しかしながら最新の研究は保育者と子どもとの新しい関係性を提示しています。社会の雰囲気も、土壌も整った中で最新の研究を取り入れて取り組んでいるドイツ、この国から学ぶことの多さに圧倒されながら、先ずは目の前の現状にどう改善を加えていくかということなのかもわからないと思いました。

  3. 慣らし保育期間について6週間から8週間もあるとあり、そのことについて、職場も理解があるというのが日本とドイツでは180度違うところであるように思いました。
    そして、その理由として〝その方が、かえって、そのあとの仕事に良い影響を与えるから〟とあり、藤森先生の言葉で〝うらやましい〟と。全く同感です。それだけ、国民一人一人に子どもを育てることについて理解されているのではないかと思いました。子どもにとって何が大切で必要であるのか、そして、急がば回れといいますか、実はその方が長い目で見ると利益になるということがよく理解されている証なのだと感じ、ドイツの国としての一体感、統一感みたいなものを見せつけられている、そんな感じがしました。

  4. “先生が子どもにべったりと着くことはなく、子どもたちは自由に部屋を行き来し、子ども同士が触れ合っています。”とあることから、国として、しっかりと考えられたことが展開されているんだと感じました。内容にもありましたが、保育者との愛着関係があることでや寄り添ってというような観点がいつの間にか、共に何かをしてあげたり、大人主体に近づくようになってしまいがちな取り組みとなり、本来、生活のなかで自発的に身に付く、成長する部分が阻害されるようになってしまうことを考えます。
    そこで、愛着の形として”、何かあったら保護者がすぐに来てくれる、保護者がそばにいてくれるといった愛着形成”があることが必要な環境であるのだと感じます。社会的参照の必要な形と捉えることができます。そして、ドイツ全体の仕組みが子ども主体であることを感じます。

  5. 園での遊びは、一人遊びは家庭でも行われるため、ここでは乳児から子ども集団のある所という認識を持っているとありました。昔のモンテッソーリ教具が生まれた経緯と真逆ですね。昔のモンテ同様に、今の社会、地域の情勢に柔軟に対応しているからこその認識であると感じますし、その根幹には、子ども主体がしっかり貫かれているなとも感じることができます。
    ドイツと日本とでは、子どもの保育者との愛着形成が特定か複数かで異なっているののですね。きっと目指すところは一緒なんでしょうけど、あくまで「特定」とは親を指していて、保育者などは「複数」であり、保育者は親の代わりという考えを日本は捨てきらないとドイツとの差が開く一方になってしまうように感じてしまいました。

  6. 慣れ保育一つとっても方法が違うので面白いですね。「愛着」という言葉が出てきましたが、日本も最近では愛着の捉え方が遠藤先生によって変わってきているのかな?と感じる事もありますが、まだまだ特定の保育者との愛着関係というイメージが強い気がします。ドイツ報告を毎年聞いて感じることは、研究者の結果を直ぐに取り入れるスタンスが本当に素晴らしいと感じます。日本では研究者が愛着関係に関しても、保育に関する新たな知見を発表しているにも関わらず、自分達のスタンスを変えずにずっと昔のままの保育を行なっている事です。おそらく国や自治体の教育に対するスタンスがまだまだ甘いのかもしれません。だからこそ、私たち現場から発信していく事が重要になのでしょう。

  7. 「建物は、1879年に建てられた重要文化財です」とサラッとですが、園舎の歴史を感じますね。文化の違いではありますが、素直に慣らし保育は羨ましいですね。目先のことではなく長期的に見た慣らし保育を国が分かっているという所が大きな違いですね。その後風邪をひかなくなること、そしてなにより子どもが寂しい思いをしないというのはわかってもらいたいところですが、日本では難しいですね。

  8. 慣らし保育の期間が6週間から8週間というのは、本当にすごいことだと思います。保護者の職場も理解してくれているからできることであり、日本もそうなればいいなと思います。また、古い建物を大切にしているドイツの文化も良いところだと感じます。保育園が、重要文化財というのはどんな感じなのでしょうか。時代の変化に合わせて保育も変化していくことは、大切ですが伝統や文化も大切に残されていくのだろうなと思います。ドイツという国の素晴らしさを感じました。

  9. ドイツは古い建物を大切に使うとありました。戦争の時の焼け跡も階段に残っていたりと、本当に時代を感じる建物でしたね。古いものを大切に使っていくという姿勢が持続可能の社会を目指しているドイツを表しているのかもしれませんね。わが国では、莫大なお金を使ってオリンピックを行おうとしていますが、どこへ向かっているのかとても心配になります。また、慣らし期間もとても長いですね。そして「すなわち、何かあったら保護者がすぐに来てくれる、保護者がそばにいてくれるといった愛着形成をしっかりと保育者と子どもの間ではなく、保護者との間でつけてもらうのでしょう」とありました。園に慣れてないうちは応答の相手が親であり、それが少しずつ先生へと移行していくということなのですかね。このあたりも本当に軸が子どもにあるんだなと思いました。

  10. 慣らし保育のあり方は日本とは大きく違いますね。日本では確かに保育者になれるために慣らし保育を行いますが、ドイツでは保護者との愛着なのですね。確かに6週間~8週間も慣らし保育をすることができるのでしょうから、子どもたちからすると安心でしょうね。また、それが日本では実現できなのは「保護者の職場が許しません」といった事情でしょうね。なかなか日本の場合は「子どもファースト」とはいっても、そうでないことが多くあります。日本にはないドイツの保育現場の様子から学ぶことはとても多くありますね。

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