新たな試み

保育に欠かせないものとして「心理学」があります。心理学とは簡単に言うと心と行動の学問であると言われ、ウィキベデアには、「心理学の主な流れは、実験心理学の創設、精神分析学、行動主義心理学、人間性心理学、認知心理学、社会心理学、発達心理学である。また差異心理学は人格や知能、性などを統計的に研究する。」とあります。その流れの中で、保育は子どもの発達を援助する行為のために、発達心理学を学ぶ必要が言われていました。そのために保育者養成校や保育士試験には発達心理学という学問がありました。

発達心理学を学ぶ意義には次のようなことが言われています。保育という仕事は、様々な年代の子ども達の保育を担当するために、子どもたちの発達状況に応じた心理的特徴を理論として身に着けておくことで、日々の保育の場面で、適切な対応をとることができるからと言います。そして、感情の表現の仕方や、論理的な思考の深さなども日に日に変わっていく子どもたちを正しく導くためにも必要であると言います。

一方、保育には、子どもの心の発達だけでなく、身体的な発達、病気や精神的な病気や発達障害も学ぶ必要があります。それが「精神保健」です。保育士試験にはこの科目もありました。平成24年度からは発達心理学と精神保健の二つを「保育の心理学」として一つにしました。さらに、保育は子どもの集団における独特な心理学もあるのではないかということで新しく保育の心理学にした経緯もあると聞いたことがありましたが、どうも子ども集団はなかなか研究対象になりにくく、単純に発達心理学と精神保健を一緒にしただけというイメージがあります。もう少し、子ども集団としての心理学を研究していってほしいと思っています。

また、最近の研究では、保育は単に目の前にいる子どもの発達を見るだけでなく、人類という大きな視点からどのようにヒトは生存し、遺伝子を残し、進化してきたのか、という観点から子どもの心理、行動を考えるということから、進化論と心理学の両面から育児、子どもを考えようということから進化発達心理学が生まれています。さらに、今後の学問として求められるものとして、様々な知見、既知の知識を組み合わせて新たな知見を生み出していく必要性も言われています。私は、特に保育という行為は、ヒトを相手にするために、より総合的な知識が必要だと思っています。多くの研究者たちは、様々な分野において研究をしてきました。それは、ヒトが生きてきた営みを、切り口を変えて研究をしてきたのだと思います。すなわち、ヒトの生活を切り分けて考えてきたのです。そこで、保育という仕事は、それぞれ切り分けられた分野からの研究を今度は一つに集めて、考えていかなければならないと思っています。

私は、今年の11月をめどに本を出版しようと準備を進めています。それは、切り分けて研究されてきたヒトの生存についての研究を結び付けていくという趣旨があります。この本の最初のほうの目次は、「1.人類の進化から考える保育」「2.人類学から考える保育」「3.民俗学から考える保育」「4.脳科学から考える保育」「5.住居学から考える保育」「6.社会学から考える保育」と続いた後にそれらを踏まえて「7.心理学の見直し」があり、様々な視点からもう一度保育を考えていこうとしています。