ドイツ報告4

どの国でも同じですが、いくらいいと言っても、どの園においても円満な「オープン園」への移行が行われたということはありえません。程度の差はあっても、さまざまな障害や困難、職員同士のぶつかり合いが待ち受けていたそうです。以前のドイツの園では、ひとクラス複数担任制で3歳から6歳の異年齢児25名を常時2人の先生でみていました。しかし、ドイツの幼稚園の開園時間は午前7時から午後5時までであるため、クラス担当の先生は、3名ないし4名でのシフト制をとっています。当時クラス活動は、ほとんどドアが閉鎖された状態でなされており保育内容についてはクラス内の担任同士で相談し、分担しあっていました。遠足についてはクラス単位での活動が主で、一例としては、ひとクラス全員で動物園に遠足に行き、別のクラスは川遊びに行くという具合だったそうです。2つのクラスが一緒に遊ぶ機会は、庭で遊ぶ時のみでした。

このクラス別活動形態が徐々に変わってきました。「オープン園」に移行する決断を園長が下し、職員全体での「オープン園」移行へ向けての研修を行います。オープンスタイルにスムーズに移行するためには、まず大人側の発想の転換が必須だからです。従来の保育方法に慣れている先生たちは、最初は「すべての子どもを把握するなど不可能」という反応を示したそうです。さらに次々と露呈してくる疑問や困難を職員全体で乗り越える協力体制を作っていかなければなりません。

まず、注目したのは、がらんとしていた廊下スペースです。庭だけではなく、廊下が両クラスの子どもたちが出会う場所となるように、左右に積み木ゾーンと、読書コーナーを作りました。次に改革したのは担任制のとりやめでした。先生の持ち場と持ち時間は週案により、月曜日に決めることにしました。さらにその際に、それぞれの先生の持ち寄る保育内容についても話し合います。毎朝全員の子どもたちが「朝のお集まり」として多目的室に集合します。その最後に数名の担当の先生がその日の設定保育について紹介します。この時に製作や、体操に内容が偏らないように、予め各自の保育内容を月曜日に申告しておきます。毎日複数の設定保育が提案できるように調整されているのです。

朝のお集まり時に設定保育を紹介された子どもたちは、自分のしたい製作や、遊びを選んで、担当の先生とともに、場所を移動することとなります。遠足やお散歩については、希望者のみでの移動となり保護者に対して個別の連絡など煩雑になることも多いのですが、あくまで子どもの希望に応じて実行されます。

園での大人の動線が軌道に乗ってきた頃、今度は子どもたち全員が園内で自由に動きまわれるようになります。自由遊び時間には、子どもたちは、幼稚園内であれば、どこで誰とどのぐらい遊んでもいいのです。この変化に伴って、クラスのドアは常に開かれた状態となりました。

さらなる改革は、保育室の模様替えです。従来は、ごっこ遊び、お絵かき製作、ボードゲームなどのそれぞれのコーナーが各保育室に配置されていましたが、子どもたちの動きを観察して、二つの部屋に同じ目的のゾーンは不必要であることが明らかになってきました。そのため一方の部屋には、ごっこ遊びとボードゲームコーナーを、もう一方には製作コーナー、ごろごろゆっくり過ごすコーナーと、それぞれの部屋に特徴をもたせることにしました。

ここまでの改革には数年かかったそうです。

ドイツ報告4” への10件のコメント

  1. 「オープンスタイルにスムーズに移行するためには、まず大人側の発想の転換が必須」とても納得できることなのですが、興味深いのは子どもたちは自然とその環境に慣れることができるという点です。大人側の戸惑いをよそに環境に準じ、更には大人側の予想を超えてその枠組みを拡げていくような行動力をもってして環境を自分のものにしていくだろう子どもたちの姿が目に浮かびます。昨日もブロックゾーンでケンカをしている子たちがいましたが、あっという間に仲直りをしていました。子どもたちの社会性や積極性、順応性は大前提にある点、それは世界共通なのだと思うと子どもたちの凄みに改めて気付かされる思いがします。

  2. こうして「オープン園」への取り組みを紹介して頂くと、参考にできることがいっぱいあることに気づきます。「大人側の発想の転換が必須」ですね。特に、ドイツのようなヨーロッパの園の職員さんは、自分が保育者になるため、自分の適性やハードな養成課程、ひいては数年に及ぶ実習期間あるいはインターン期間を経てやっと「保育者」になるようです。2年間養成校の単位を取得すれば保育士登録を手に入れられる我が国とは事情が相当違うようです。ですから、従来の方法を転換するには「次々と露呈してくる疑問や困難を職員全体で乗り越える協力体制を作っていかなければなりません。」ということになるのでしょう。それでも、「オープン園」を実現していけるのは、そのことの意味を真から理解できる専門性を身に付けているからでしょう。「昔からやってきたから」とか「何となくそのほうが、子どもが落ち着くから」などという情緒感情で現状を肯定し変わることに抵抗している保育者とはずいぶんと異なりますね。廊下スペースの活用、「数名の担当の先生がその日の設定保育について紹介」、「二つの部屋に同じ目的のゾーンは不必要」という発想、そして「担任制のとりやめ」。我が国の現状はこのこととは正反対の方向に進んでいる園が多いようです。残念なことですね。

  3. このようにして「オープン園」への転換をしていったのですね。とても参考になります。子どもよりも〝大人側の発想の転換が必須〟というのはとても納得のいくものです。子どもたちは柔軟に対応していきますもんね。大人が固まってしまっていたとしても子どもたちはすぐに慣れていき、時には大人では想像しえないものにまで広がっていき、みんなを巻き込むようになっていく…とても興味深いですね。
    そして、大人は刷り込みによるものがあるのは確かで、ドイツでも〝さまざまな障害や困難、職員同士のぶつかり合いが待ち受けていた〟とありました。頭が固まってしまっているのは大人の悪い癖とでもいいましょうか。ドイツでも同じであるんだなと思いました。

  4. このやっていたものをやめて、新しくを変えようとすることには、勇気がいることを感じます。しかしながら、しっかりと、保育というものを理解し、子どもが主体であることが子どもにとってなぜ必要があるのかを考えることが大切になってくると思いました。また、それぞれのお集まりの時や月曜日に週案や持ち場を話し合うということには、チーム保育という形が自然に行われている、子ども主体であるためにチームとして、うまく連携をとる、といったこの環境としてのスタイルは、参考になる部分です。
    また、なんのために、一つ一つのゾーンを作っているのかをしっかりと理解し、子どもの姿を見ているからこそ”二つの部屋に同じ目的のゾーンは不必要であること”に気づくのでしょうね。常に柔軟にそのためには、子どもたちから学ばなければなりませんね。

  5. どうしてもオープン園にした結果や今の形にばかり目を取られがちですが、「程度の差はあっても、さまざまな障害や困難、職員同士のぶつかり合いが待ち受けていた」ともあるように、その移行過程にこそ注目すべきですね。保育の最先端を走るドイツでもこのような過程があっての今だと考えると、ドイツが乗り越えた過程を日本は恐れている場合ではないように思えてきます。よく「ドイツだからできる」や「せいがだからできる」と言って、変化を諦める声を聞きましたが、そんな最先端を走るところでも、子どもの最善の利益を諦めなかったからこその今だとも思えるので、早々に諦めるのではなく、できるところからやってみる姿勢を大事にしていかなければと再確認できました。

  6. 「全ての子どもを把握するのは不可能」という言葉はドイツでも出てくる言葉なんですね。よく見学者から子どもが自由に選択すると人数の把握はできますか?という質問が必ずと言っていいほど聞かれます。ここで大切なのではブログにも書かれているように発想の転換が重要です。そして個人的に感じたことは、変えることへの勇気と、オープン保育に対して信じる事だと思いました。それが根底にあるから数年の改革にも継続して行う事ができるのだとおもいます。

  7. 「オープンスタイルにスムーズに移行するためには、まず大人側の発想の転換が必須だからです。」という部分が印象に残ります。こういった保育をするにあたってまずは大人がその保育を理解しなければ始まりません。そうなると従来の保育の考えから180度考えを変えるくらいの勢いがなければなりません。つまり先生の柔軟性が必要になります。この柔軟性というのがあれば、保育を理解し、さらにその保育へ柔軟もきき、ストレスは多少あるものの進んでいけるのではと思います。その発想の転換こそが難しい部分なのでしょうね。

  8. オープン保育に移行する前に、「すべての子どもを把握するのは不可能」という声が上がったのですね。たしかに、以前の保育スタイルとは異なりますし、難しい、厳しいといった声が上がるのは、当然のように思います。しかし、数年の時間をかけ、今ではオープン保育を作り上げていることに素晴らしいなと感じます。そして、オープン保育の話を聞くと、新宿せいが子ども園はどうなのだろうとそのたびに考えますが、同じような部分は多いように感じます。職員同士の連携や、環境設定など普段の保育の中で様々な工夫が必要ですが、子ども主体で考えると自ら選択し、自由に行動できることは大切なことだと思います。一日一日で、子どもたちの様子も違いますし、常に保育は変化していきますが、職員間で話し合い、常に子どもたちにとって最も良い形を求め続ける姿勢は、新宿せいが子ども園の良いところだと思います。そんな環境で学べることが幸せなことだと改めて思いました。

  9. 今回のドイツ報告は違った意味で意外な報告でした。私の中で、ドイツは当たり前のようにオープンな環境で、部屋の行き来ができるというイメージがあったので、そこに移行する過程においてそれほどの苦労があるとは思いませんでした。日本においても、見守る保育の導入にあたり、難しさを感じる園もあるそうですが、ドイツにおける職員のぶつかり合いというのは、またすごそうな感じもしますね。ですがこうしたことを繰り返し、大人の動線を軌道に乗せるというのは、新たな保育を形作るうえでの、まず第一歩ということなのですね。

  10. 「程度の差はあっても、さまざまな障害や困難、職員同士のぶつかり合いが待ち受けていたそうです」とありました。このようなプロセスを経て変革していったのですね。何かをはじめる際にはこのようなことは避けては通れないのかもしれませんが、逆に、あって当たり前なんだと思うとなんだかいろいろなことをやる上での勇気をもらえるようでもありますね。また、子どもたちが自由に選択できるための保育者の設定というのはとても参考になりました。このような計画が保育においては重要になってくるのですね。そして、オープン園の取り組みは子ども同士の交流も活発になっていくのですね。子ども同士が関わり、自らの意思で選択していくこと、見守る保育が大切にしていることと共通部分がたくさんありますね。

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