思春期の時期

ヒト以外の哺乳類において、血縁関係のないオスのフェロモンがあることで、メスの思春期の発達速度が加速するということは、発達中のメスと血縁関係のない大人のオスとの間の繁殖の可能性を高める働きをすると考えられます。ヒトの研究では、女性の生殖サイクルは男性の腋窩(腋の下)の分泌物の影響を受けることが示されているそうです。したがって、エリスとグレイバーは、思春期が促進される原因は父親不在それ自体ではなく、血縁関係のない成人男性の存在であるとの考えを呈示しています。

エリスとグレイバーは仮説を検討するために、思春期の時期を主に、下位中流階級から中流階級の家庭の87名のアメリカ人女子について調査したそうです。さらに、その女子の母親との構造化面接を実施し、うつを中心に気分障害を判定しました。得られた尺度は崩壊した家族関係や、母親の恋愛関係におけるストレスに関するものですが、同様のものが女子の母親からも得られたそうです。そして、実の父親や継父、母親の恋人の存在についてもデータを収集しました。先行研究と一致して彼らは、家庭にストレスがあり、父親がいない女子は、家庭にストレスが少なく、実の父親と一緒に住んでいる女子よりも早く思春期に入ると報告しています。しかし、これらの効果はどちらも、母親の気分障害の経歴(これも思春期の年齢を予測する)が媒介しており、母親の精神病理は家族のストレスや父親不在の遠隔原因である可能性があり、それによって女子の思春期が早期に訪れることが示唆されるようです。

おそらくエリスとグレイバーの結果で最も興味深い点は、継父や母親の恋人の存在の効果であり、女子の思春期の時期に関係する家族のストレスと相互作用していることであるとビョークランドは言います。。父親が継父であるか、母親に恋人がいる女子は、家族のストレスが高いときに、ストレスの程度に関係なく、実の父親と暮らしている女子や、父親が継父あるいは母親に恋人がいて、家族のストレスが低い暮らしをしている女子より、有意に早く思春期に達したそうです。さらに、思春期の成熟と娘の年齢には、継父や母親の恋人が女子の生活に入り込んでいるときに有意な関係が見出され、その女子に血縁関係のない父親が現れた年齢が幼いほど思春期に達する時期が早かったそうです。対照的に、思春期の時期と実の父親がいなくなった年齢との間には、有意な関係は見出されなかったと言います。エリスたちによる関連研究において、父親がいることと、特に、父と娘相互作用が良好であることが、女子の思春期の時期が遅いことを予測しており、このことから、父親の投資の肯定的な質は娘が思春期に入る時期に影響を及ぼすことが示唆されます。

ビョークランドらは、エリスとグレイバーの結果、および、エリスたちの結果は興味深いと考えているようです。一方で、彼らの結果はベルスキーたちによって呈示された一般モデルを支持しています。女子は家族における資源関連要因に敏感であり、多数の要因として、母親の気分障害、家族のストレス、父親の不在、父親の投資の質などの相互作用次第で代替的な発達の道筋をたどります。しかし、高いストレスを抱えた家庭環境における血縁関係にない父親の存在は、早期の思春期を引き起こす最も直接的な事柄である可能性があり、その父親が娘のもとに来る年齢とも関連しているようです。ヒト以外の動物では、血縁関係にないオスがいることでメスの思春期の開始が早まり、年長のオスと若いメスが生殖する機会が増えるようです。現代の、そしておそらく古代のヒト集団においては、継娘と継父間の性的活動はストレスの原因となるであろうし、家族構造にとっても大半の家族内の個人にとっても適応的ではないだろうと考えられます。