集団社会化理論

J.R.ハリスの集団社会化理論によると、親や教師の影響でさえ子どもの仲間集団でふるいにかけられると言います。子どもは、自分の親ではなく仲間と同じようになろうとするというのです。家庭環境が人格や知的発達に与える影響が弱まっていくことは、繰り返し検証されてきましたが、ハリスは、そういう傾向には十分に進化的な意味があると主張しました。つまり、子どもは成人になれば家庭の外で活動し、自分の所属集団の同年齢の仲間と競争し、協力するようになるのです。ですから、家庭に適応しすぎたり、親の要求に沿いすぎたりしても、 たいていその子どもの包括適応度の向上にはつながらないと言うのです。

集団社会化理論を完全に説明することは、ビョークランドはあまりしていませんが、彼の議論に特に関連しているのは、ハリスの主張する、ヒトの集団行動の基盤にあるのは、他の霊長類と共通の4つの進化的適応であるという主張です。つまり、 (a)集団親和と内集団びいき、 (b)よそ者に対する恐れや敵対心、(c)集団内地位追求、 (d)親密な二者関係の探究と構築、であるという点です。これらの「進化的適応」は生まれつき備わった傾向と考えられており、人生の初期に作用し始めるが、子ども時代を通じて発達していくとも言われています。ハリスの主張については、また機会があったら紹介したいと思っています。

ここでは、社会的行動の例を、ハインドの社会的関係のモデルに従って検討しています。このモデルは、人間社会科学に由来し、進化論に根ざしていますが、ヒト以外の霊長類の行動研究に関するヒューリスティックなモデルとして呈示されたものだそうです。ヒトの社会的行動の研究では、他の動物の社会的行動よりも高度な認知的、言語的プロセスの役割を考慮すべきであると、ハインドは主張しています。ビョークランドらは、協力行動や攻撃行動について、乳児から青年までを対象に考察し、それぞれを系統発生史という観点から評価しようとしています。

ハインドによると、社会的行動は相互作用、関係、構造という3つの側面から考えています。まず、相互作用とは二者間で生じ、1つ以上の行動様式を含みます。相互作用の記述には、個人が行おうとしていること、それは「内容」で 、それをどのように行うのかという「質」が含まれていなければならないと言います。相互作用は、身体的な動きと筋肉の収縮、たとえば、平手打ちなどや、相互作用を行う両者の結果、たとえば、仲間に近づこうとすることなどという観点から記述することができると言います。その際、誰が相互作用を開始し、誰がそれに応じたのかが重要だと言います。たとえば、子どもが遊びや攻撃的行動をしかける意味と、遊びや攻撃的行動に応じる意味とは異なっているというのです。同時に、相互作用の質も考慮されるべきです。荒っぽいものか、穏やかなものか?手慣れたものか、原始的なものか?この場合もやはり、質の違いから相互作用の意味について何らかの知見を得ることができると言います。

関係とは、長期にわたって二者間で生じる相互作用です。さまざまな関係は、さまざまな相互作用の歴史を反映していると言います。これまで相互作用をしてきた両者は、将来の相互作用を予期しています。代表的な関係には、母親とその子どもの間の愛着や、きようだい関係、友達関係、恋愛関係などがあるのです。