社会的構造

内集団びいきや外集団差別などの社会的カテゴリー化は、早くも子ども期から見られるそうです。すでに述べたように青年期以前に広く見られる社会的集団の違いはジェンダーであり、子どもは主に同性集団で遊びます。たとえば、ある研究において、 8 ~ 10歳の子どもに見知らぬ男子と女子のピデオを見せ、さまざまな側面、たとえば、男らしさ、女らしさ、好みについて評定させたそうです。すると、大人がもつ内集団びいきと同様に、子どもは同性の対象を異性の対象より肯定的に評定したそうです。

歩行期と同様、優位性の構造は、子ども期の社会的構造の重要な側面だと言われています。さまざまな向社会的、攻撃的戦略を、主に男子が用いて仲間集団のリーダーシップを確立し、維持していきます。集団形成の第一段階において、資源をめぐる仲間との競争で攻撃的な戦略を用いることは男子にはよく見られるようです。つまり、男子は選択的にかつ効果的に攻撃行動を起こし、資源を獲得する傾向があると言うのです。いったん優位性の階層が確立すると攻撃行動の割合は減り、リーダーは向社会的、協力的な戦略を用いることが多くなるそうです。興味深いのは、就学前児の攻撃行動の割合は、その子どもの人気と正の相関があることだそうです。優位な立場にある子どもは攻撃行動を効果的に、マキャベリ的に用いることができ、見境なく反動的に攻撃することはないようです。たとえば、友達や味方を助けるために攻撃行動を起こすこともあると言うのです

霊長類学者のフランツ・ドウ・ヴァールは、ヒト以外の霊長類の攻撃行動について論じているそうですが、ある生態系において攻撃的な状況が起こった後にそれに関与した者が和解すれば、攻撃行動は決別ではなく、親和的関係を導くことを示唆しています。優位個体と劣位個体の関係が重要で、劣位個体が自由にその場を離れることができる場合、和解することで社会的順位が強固になり、集団のメンバーは相互作用を続けることが可能になるそうです。おそらくこのように攻撃行動、和解、協力が交じり合って一体化することで、優位性の階層が形成され、維持されるのだろうとビョークランドは考えています。

子ども期の仲間集団構造の機能とダイナミクスは、社会心理学者ムザファー・シリフたちの古典的な研究が見事に例証しているそうです。「ロバーズ・ケーヴ」実験で、サマーキャンプに参加した22人の面識のない5年生の男子が2つの集団に分けられました。数週間にわたって、それぞれの集団は工作や隠れ家作り、組織的なゲームなどの楽しい活動に参加し、お互い他の集団の存在には気づいていませんでした。集団凝集性が高まりましたが、それはある部分、協力を必要とする活動を準備したためでもありました。たとえば、ある晩スタッフがタ食を作ることができず、少年たちは手分けして食事の準備をしなければなりませんでした。次第いにそれぞれの地位が明確になってきて、リーダーと認められる者もいれば、追従者となるものもいました。どちらの集団にもそれぞれガラガラヘビ、ワシという名前までつけられました。

集団凝集性が定着した時点で2つの集団が引き合わされ、一連の「友好的な」競争、たとえば、野球、綱引きが用意されました。

社会的構造” への8件のコメント

  1. 子ども期における「優位性の構造」が「社会的構造の重要な側面」であるという理論は、私たちが子ども集団を観る時、とても役立つ示唆を与えてくれるような気がします。私たち大人は、自分たちがそうありたいと思っているからでしょうが、そして実際は残念ながら実現されないのですが、子ども同士の関わりは平等であれ、というようなところがあるようです。よって、誰か子どもが、突拍子もない攻撃的な行動に出て、それを目撃した先生は間髪入れずに制止に入ることがあるようです。その制止によってその後形成されるはずだった子どもの社会的構造が日の目を見ないことになってしまう可能性が出てきます。もったいない、としか言いようがありません。「優位性の階層が確立すると攻撃行動の割合は減り、リーダーは向社会的、協力的な戦略を用いることが多くなる」という調査結果は重要ですね。子ども同士の関係の中で「優位性」を保障することによって実は関係性が上手く保たれる。自分自身の子どもの頃を思い出すと、確かにこうしたことがありましたね。子ども集団を見守る上で、今回のブログに紹介された内容はとても重要な気がします。今回のブログは特に女性の保育者・教諭の先生たちに読んでおいてもらいたいなと思ったところです。

  2. 「ある生態系において攻撃的な状況が起こった後にそれに関与した者が和解すれば、攻撃行動は決別ではなく、親和的関係を導くことを示唆しています。」先日の、子どもが友だちの玩具を欲しがるのは大人の考える略奪ではない、という考えはとても衝撃的でした。上記抜粋した文章もその感覚で読むとなるほど、例えば戦争とその後の和解、というような大人の世界のものではなく、子どもの攻撃行動は「親和的関係」への導きであるという知見です。喧嘩も、思わず手が出てしまった時も、保育者が眉をしかめる必要はないと言えるのかもわかりません。その後の和解で関係性が確立していくということ、そこへ働きかける保育者はこの知見を知った上であることで、それを専門性と呼んで差し支えないように思えます。

  3. 「就学前児の攻撃行動の割合は、その子どもの人気と正の相関がある」とあったことは、とても興味深いですし、「友達や味方を助けるために攻撃行動を起こすこともある」ことは子どもたちの姿から何度も見たことがあります。「優位性の構造は、子ども期の社会的構造の重要な側面」というのは上記の内容からも立証されているでしょうし、立ち位置による役割分担、できることをやったり、得意とする部分をメインにやっていくようなチーム概念を幼い頃から培っていることがよくわかりました。さらに「ある生態系において攻撃的な状況が起こった後にそれに関与した者が和解すれば、攻撃行動は決別ではなく、親和的関係を導くこと」が示唆されているとあり、「昨日の敵は今日の友」ということわざが思い浮かびました。その逆もありますが、相手としっかり向き合うことで解り合えることは素敵なことだなと感じました。そのような意味合いを含めて、ピーステーブルのような環境を自園で考えていきたいと思えました。

  4. 〝攻撃行動は決別ではなく、親和的関係を導くことを示唆しています〟という部分に男だからなのか妙に共感してしまいました。「拳で語り合う」とか「背中で語る」とかそんな風に言葉ではない何かで通じ合う、伝わるようなことは男なら一度は憧れ、できるならそうなりたいと思ったことがあるのではないかと思います。男臭いと言われればそれまでですが、〝決別ではない〟という部分からそのようなことを感じました。
    子ども同士の関係では優位性が確立すると〝リーダーは向社会的、協力的な戦略を用いることが多くなる〟とあります。このことは重要である気がしました。四月の時点の幼児施設はどこも落ち着かないと思いますが、子どもたちの中で優位性が確立すれば落ち着きだすということになります。ということは、保育者からのケンカの仲裁はその子ども同士の関係形成の邪魔をしているということになるのかもしれません。そうなると落ち着くのに余計時間がかかってしまいそうですね。

  5. “就学前児の攻撃行動の割合は、その子どもの人気と正の相関があることだ”という点は、確かに興味深いものを感じてしまいます。その子の集団のなかでの立場によって、攻撃行動の意味がかわっており、実際にある攻撃行動がなんのために行っているのかと関係性が見られるのですね。
    攻撃的であることで男子は少なからず、優位性を見出だし、そのことがうまくいけば、リーダーシップをとれるようになり、そうなると、協力的、向社会的な傾向になっていくといった戦略性を感じます。

  6. 子ども社会でも優位性があり、リーダー的な存在の子どもがいると思います。確かにそういう子どもが一人いることで、保育者として助かる時が多々あると思います。集団形成の第一段階において、資源をめぐる仲間との競争で攻撃的な戦略を用いるとは書かれていますが、就学前児には見境なく攻撃をせず、仲間の為に行動を起こすと書かれてあります。そうした経験を得ることで、リーダーのみならず、集団の仲間全員が「仲間意識」が高まるのですね。これから社会に出て、一人で生きて行く為には、今、この瞬間の時期がいかに大切であること、そして何が大切なのか?保育者はもちろん、親としてもとても勉強になった内容でした。

  7. 「ある生態系において攻撃的な状況が起こった後にそれに関与した者が和解すれば、攻撃行動は決別ではなく、親和的関係を導くことを示唆しています。」とあります。喧嘩するほど仲が良いという言葉が頭に浮かんできましたが、現場でもまぁ、そこまでケンカできるなーと思うほどやっているのを見ます。その行為が攻撃的かはわかりませんが、和解をすることで決別ではなくより関係が深まっていくさまを見ますし、実際に大人もぶつかり合い話をすることでより相手を理解できることと同じなのかなとも感じました。

  8. 「大人がもつ内集団びいきと同様に、子どもは同性の対象を異性の対象より肯定的に評定したそうです」とありました。小学生の頃に児童会というものがありました。私は先生から半ば強引に何かに立候補しろということを言われていたので、どうせするなら会長を…といきたいところだったのですが、どうやら会長には女子が立候補するということになり、副会長に立候補することになりました。というのも女子が立候補すると他の女子はみんなその女子に票を入れるという構図になっていたので、数が少ない男子の票ではまず当選できないという流れになっていました。そんなことを久々に思い出しました。また「いったん優位性の階層が確立すると攻撃行動の割合は減り、リーダーは向社会的、協力的な戦略を用いることが多くなるそうです」というのはおもしろいですね。他にも「優位個体と劣位個体の関係が重要で、劣位個体が自由にその場を離れることができる場合、和解することで社会的順位が強固になり、集団のメンバーは相互作用を続けることが可能になるそうです」とありましたが、「長い物には巻かれろ」というのはよく言ったものだなと思いました。

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