愛着分類スタイル

北アメリカ以外の国の調査では、愛着分類スタイルの最も多い型は、大半のアメリカの研究で報告されたものとは異なっているそうです。たとえば、北ドイツのサンプルでは49%の乳児が回避型あり、安定した愛着をもつとされたのは33%に過ぎなかったそうですが、そういう傾向が生じた理由は、母親が乳児を拒絶しているためではなく、母親が文化基準に従うことを望んでいたためであるとされています。同様に、イスラエルのキブツで育った乳児の研究では、約50 %の乳児が不安定な愛着をもつと分類されたそうです。これらの傾向から、育児実践の文化差によって異なる愛着の傾向が生じていることが示唆されます。北ドイツやキブツで育った子どもの約半分が不適応な愛着スタイルをもっているという別解釈も考えられますが、それを支持する証拠はないそうです。もっと簡潔な結論は、子どもは環境条件に敏感であり、その環境に最適な愛着行動を発達させるということです。

同様に、年長の子どもに注目した研究者らが一貫して報告しているのは、より厳しく、批判的で、情緒的につながりの薄い養育スタイル、それを権威主義的といいますが、それに比べて、要求は厳しいがあたたかさのある養育スタイル、それを権威的と言いますが、その方が、結果がより好ましいということです。この傾向は世界中で、幅広い民族や社会階級、家族構造で報告されているそうです。しかし、例外があります。たとえば、バウムリンドによると、スラム街のアフリカ系アメリカ人の女子のサンプルでは、両親が権威的スタイルである場合と比較して、より厳しい権威主義的なスタイルである方が適応が良かったそうです。異文化間の愛着調査と一致して、異なる養育スタイルは、異なる環境と相関しており、異なる行動の適応パターンが生じていると思われる。

ベルスキー、スタインバーグ、ドレイパーは、子どもの早期、そして後の家庭環境の影響は、愛着スタイルだけではなく、後の繁殖戦略の重要な側面にも影響を与えると主張しました。彼らは進化論にもとづくモデルを発展させ、家庭における初期の愛着に関連した経験や、後に続く思春期や、青年期の恋愛行動について説明しました。

初期経験とは、最初の5 ~ 7年間の中で、主要な進化的機能は子どもに、環境の中にある広義の資源の利用可能性と予測可能性や、他者への信頼性、親密な対人関係の持続を理解させることです。そして、それらすべてが、発達途上のその人が後にどの程度繁殖に力を注ぐかに影響するといわれているのです。

ベルスキーたちは、すべてのヒトが追求しようとする唯一の「最適方略」があると断定するのではなく、ヒトには幼児期の環境の特性に敏感な、進化によるメカニズムがあり、それが思春期の成熟度を促し、繁殖戦略に影響を与えると主張しました。不安定な愛着で、父親がおらず、否定的でストレスの多い家族経験をもつ場合には思春期の成熟が早く、性的乱交や、不安定な男女関係をもつようになります。もう一方の安定した愛着で、ストレスが低く、父親がいる場合は、少なくとも女子に関しては思春期が遅く、性的活動の開始は遅く、より安定した男女関係を築くようになるようです。

愛着分類スタイル” への9件のコメント

  1. 今回の報告も面白いですね。愛着形成の仕方はどうやら子どもが育つ環境が大きな影響要因のようです。「子どもは環境条件に敏感であり、その環境に最適な愛着行動を発達させる」この結論は重要ですね。愛着においても子どもが主体である、ということです。そして子どもは所与の環境に最適化する仕方で愛着行動を獲得していく。「最適方略」ですね。そのために子どもは胎内存在である頃から環境適用のための様々な能力を自ら開発していっている。「子どもの存在を丸ごと信じる」の中の「丸ごと」の根拠はここにあるような気がしました。大人である私たちは胎児乳児幼児を経て青年期、成人期に至ります。私などは最早壮、年期から老年期へ向けて進化中。自らの過去を振り返り、子どもにとって望ましい環境づくりのために今、考え行動し生きていく。このことが大切だと思っています。子どもと適当な距離を保ち、ストレスの低い家庭環境、そして社会を形成していく。可能な限り頑張りたいと思いました。

  2. 最初の段落、「もっと簡潔な結論」として挙げられている内容はとても重要ですね。両親の夫婦喧嘩を見ることが大好きな子どもなどいないでしょう。時々たまにであればまだしもなのかもわかりませんが、例えばそれが常であったり、例えばそこに暴力があったり、その被害が子どもにまで及んでいたりと想像すると、その環境に生きる子どもがまともな生活を送ることなど困難なように思えてきます。子どもは大人が思っている以上に純粋で繊細なのだということを改めて思います。

  3. アメリカでの研究とは異なる、北ドイツやイスラエルのキブツでの結果から、簡単に言えば「子どもは環境条件に敏感であり、その環境に最適な愛着行動を発達させる」とありました。愛着が生きていく上で必要であるからこその適応能力だと感じましたし、その生存本能と言いますか、生きていこうとする力に毎度のことながら感動してしまいます。そして、これも毎度のことですが、子どもたちの柔軟性の高さにも驚かされます。また、家族経験によるストレス次第で、思春期や性的活動の開始の時期が変動することも興味深いです。できるだけストレスフリーな家庭環境作りが重要であることがわかりました。

  4. 安定的な愛着と一言で言っても〝子どもは環境条件に敏感であり、その環境に最適な愛着行動を発達させる〟ということで、子ども一人一人でちがうというか、その子どもが置かれている環境でちがうということなんですね。例えにあるのは、ドイツとイスラエルですが、日本の中でも地方、県、もっと言えば家庭ごとに「安定した愛着」というものがあるということになるように感じました。そのように違う愛着は人間がより良く生きていくために発達したものであるように感じ、一つの人間の生存戦略であるようにも感じます。
    そして、その様々な子どもたちが入り乱れている乳幼児施設に求められるのは「多様性」であり、子どもたちがその場面で最適な場所や人などの環境を選べることであるように思いました。

  5. “子どもは環境条件に敏感であり、その環境に最適な愛着行動を発達させるということ”とあり、その文化や環境にあった愛情を注いでいくのかが重要であり、一つ方法がいいのではなく、その子にあった文化や環境への入り方という表現になりますが、その子を中心に考えた形が重要なことであることを感じます。常々、考えてしまいますが、親のできることって何だろうと思ってしまいます。親という存在が環境としてあって、その周りには、また血縁関係があり、その周りには、様々な繋がりのある人々がいる、そうしたなかで生活していくことで、社会のなかでの生き方を学び、そして、「生きる」存在として、己という一つの存在を感じ、生活するのかなと思います。

  6. 「子どもは環境条件に敏感であり、その環境に最適な愛着行動を発達させるということです。」という簡潔な結論の部分には納得ですし、子育てをする上で意識する必要がありますね。最後にもあるように安定した愛着で、ストレスが低く、父親がいる場合という状況だけでもその子に与える愛着には大きな差が生じ、それにしっかりとその子の行動が思春期に現れることがわかります。自分を振り返り、夫婦間での会話や態度というのが我が子に影響はないか気になるところですが、それだけ子どもは敏感に感じることが多いことを理解しておきたいですね。

  7. 「子どもは環境条件に敏感であり、その環境に最適な愛着行動を発達させるということです」とありました。子どもの、人の適応力の高さのようなものを感じます。だからこそ、過ごす環境の与える影響は大きいので、気をつけないといけない部分でもあるのかもしれません。年長者への子どもに関する研究がありましたが、情緒的な繋がりというのが重要になってくるのですね。確かに、信頼関係が出来上がっている同士であれば、ある程度の厳しい関わりもなんらかの意味があることなんだろうと思うことができるのかもしれません。

  8. 地域によって愛着スタイルが違うというのは面白いですね。自分たちの愛着スタイルがてっきり世界的に見ても普遍的なものだと思っていました。そのあとに子どもが環境に適した愛着行動を発達させると書いてありますが、それだけ子どもの柔軟性が高いという事に関心はしますが、逆から見ると大人としては気をつけないといけませんね。ブログの最後に安定した愛着関係を受けた子どもに関して書かれていますが、ここで言う安定したとは、どのような愛着関係なのか?親として、また保育者としてしっかりと考えていかなければいけませんね。

  9. 「初期経験」という言葉が出てきました。それは親密な対人や信頼性の関係の持続を理解させるとあります。そのためには家族との愛着関係は重要であり、その前提としての家庭環境にも左右される部分があるのですね。「不安定な愛着で、父親がおらず、否定的でストレスの多い家庭経験」と「安定した愛着で、ストレスが低く、父親がいる場合」との対比はとても考えさせられます。なるほど、前回の疑問点がわかった気がします。安定した愛着ができなくなることで、安定した環境にもならず、結果として、成長期の成熟度や繁殖戦略に影響が出てくるのですね。それほどまでに、乳幼児における「愛着」というものの影響は大きいのですね。現在の社会において、研究者の方はどのようにかんがえているのでしょうか。あまりいい環境ではないということは感じますが、こういったことをどう社会に伝えてくかが重要ですね。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です