近親相姦の回避

2個体の遺伝的特徴を混ぜ合わせると、両方の親から良い特徴を引き継いだ子どもができるだけでなく、子どもごとに違った特徴の組み合わせを引き継ぐことができます。自然淘汰はこの多様性に対して作用すると言われています。有性生殖によってもたらされる多様性がもつ明らかに重要な特徴のひとつが、寄生虫への抵抗性であるそうです。繁殖速度の速いある微生物が、ある親の身体に感染することができたとしても、もうひとりの親の遺伝子も半分もっている子どもには感染しにくい可能性がある。それぞれの違いは、生存戦略としては、かなり有効ですね。これは、他の生物にも言えることで、たとえば、以前のブログでも書いたと思いますが、トンボ池と言われるビオトープの意味もそのような役割があると言われているのです。

すなわち、免疫系に関連する遺伝子を混ぜ合わせることで、寄生虫との闘いで一歩先を進み続けることができるのだというのです。また、遺伝的多様性がもつ2つ目のよく知られている役割は、欠損のある劣性遺伝特質の回避だそうです。親が同じ対立遺伝子を多く共有していると、同じ劣性の致死的遺伝子をいくつかもっている可能性が高くなります。そのため、近親交配をすると、劣性遺伝子が次世代まで表現型としてつながる可能性が高くなり、死亡率や罹病率の上昇につながるのだと言うのです。

この近交退化の影響を受ける種は、必ずこの効果を最小化する手段を発達させているそうです。その多くが、きようだい、親、子どもという近親者が交配する可能性を低下させるものだと言うのです。たとえば、社会的な霊長類のほとんどの種は、通常、どちらかの性が生まれ育った群れを成人期までに離れ、他の群れに入って行くのです。

新世界ザルと旧世界ザルでは、ほとんどの場合、移住をするのはオスです。ヒヒチンパンジーや先史時代のヒトでは、配偶者を求めて生育場所を離れるのはメスだそうです。さらに、ヒトでは家族内での交配に対する文化的禁止という近親婚タブーが普遍的に見られます。フロイトは、このような禁止が必要な理由として、特に子どもは異性の親との性的関係に対する強い欲求、これをエデイプス・コンプレックスやエレクトラ・コンプレックスと言いますが、これをもっており、その欲求は異性のきようだいにまで拡大するという説を提唱しています。

それに対し、進化的観点では、このような文化的なタブーは進化によるメカニズムを基盤にしていると考えられています。フロイトが提唱したような、近親相姦の関係を志向するバイアスがあるのではなく、他の動物と同じように、ヒトにも近親交配の可能性を防ぐバイアスがあると考えられているのです。フロイトは、確かに心理学では偉大ではありますが、いつも首をかしげる説が多い気がしますが、これが熱狂的に受け入れられていた時代もあるのです。現在も、多くの人に支持されている説も、後世ではもしかすると修正されるかもしれないものがあるかもしれません。