きょうだい間の関係

もちろん、年上のきょうだいが新しい家族に対して示す感情は、恨みだけではありません。長子の多くは年下のきょうだいの世話をし、弟妹の愛着対象となります。たとえば、母親と 幼児と乳児の2人の子どもを対象に、エインズワースのストレンジ・シチュエーション法を修正した方法で観察したある研究では、54分間のセッションのうち、4分間、幼児と年下のきようだいを2人きりにし、さらに4分間、 2人を知らない大人と3人にしたところ、幼児の半数( 51 % )は、母親が去ってから10秒以内に、年下のきょうだいに対する何らかの世話行動を示したそうです。世話行動を示す可能性が高いのは、視点取得課題を通過した、年齢も少し大きい子どもであったことから、幼児が示す世話反応には社会一認知的要因が関わっていることがわかると言います。また、女児は、悲しんでいる年下のきょうだいの世話を行う傾向( 57 % )が、男児( 43 % )よりも少し高かったそうです。

女児が男児よりも弟妹の世話を行う傾向が高いというこの結果は、伝統文化社会で、弟妹の世話を比較的幼いときから女児が頻繁に任されたり、時に自ら担っていたことを示す、比較文化研究と一致するそうです。また、この傾向は現代社会でも見られるようです。たとえば、マクへイルとグランブルは、女児が年下のきようだいの世話を手伝う時間は、男児よりも1日当たり約2倍長いと報告しているそうです。ただし、年下のきょうだいに障害がある場合には.女児と男児がきょうだいの世話をする時間は同等だったそうです。この結果は、面白いですね。どう考えればいいのでしょうか?

女児は男児よりも子どもの世話への志向性が高いのか、あるいは、女児は単に社会的圧力に従って典型的役割を実行しているだけなのか、これを判断するのは難しいと言います。しかし、年下のきようだいの世話に多くの時間を費やすことは、女児にとって、子どもの養育者という、どの文化でも成人女性が中心となって担う役割を果たす準備となっているのです。

人生を通じて、きょうだいが助け合い、同盟を組み、社会的サポートや経済的サポートを提供し合っていることはよく知られています。ほとんどの文化で、きょうだい間のこのような連携が強く奨励されているため、こうしたきょうだい間の協力の基盤は、文化的伝統ではなく、進化によるメカニズムである、と主張するのは難しいと言われています。動物に関する文献の研究から、社会的行動全般、特に利他的行動の形成には、血縁淘汰が決定的に関与していることが明らかです。しかし、きょうだい間に肯定的な関係が認められるのは、社会的慣習で規定されているからではなく、進化による自身の包括適応度を高めるメカニズムを有するからであることを明白に示す証拠を得るのは難しいと言われているそうです。世界中のほとんどの場所で、この2つの要因は完全に交絡しているようです。つまり、法律や道徳によって、社会は「家族の価値」を高めようとしているのです。

社会学者ウィリアム・ヤンコウィアックとモニーク・ディーデリクは最近の研究で、文化的慣習に起因する効果と包括適応度とを分離することを試みているそうです。ヤンコウィアックたちは、アメリカ合衆国南西部におけるモルモン教の一夫多妻制の共同体に住む家族を対象に、大規模な面接調査を行ったそうです。