きょうだいの葛藤

「きょうだい関係が複雑で多面的なものであることは、科学的な証拠などなくてもわかる。」とビョークランドは言います。時として、きょうだいは最も近い大切な仲間であり、いじめっ子や他の環境の危険から守ってくれる存在であり、親からの支配に対抗する同盟軍となり、また、ある時には、きょうだいは最も憎い敵であり、わずかな資源をめぐって竸争し、支配権を握られ(あるいは、嫌な仕事をさせられ) 、嫉妬の対象となります。きょうだいのいる人なら経験的に知っているこうしたことが、実証研究でも確認されているそうです。きょうだい間の葛藤はよく見られますが、それと同時に、思いやりや仲間意識も同じきょうだい間でよく認められますね。本当に、このように列挙すれば、どれも思い当たるものであり、本当に複雑で多面的な関係ですね。

進化論では、他の多くの理論と同様に、きょうだいは葛藤と協力を示すと予測されますが、この葛藤あるいは競争は、第一子の地位が「一人っ子」から「兄姉」と突然変化するときに最も顕著なはずだと言います。第一子は皆しばらく一人っ子の期間があり、きようだいの誕生が人生のなかでも心に残る大きな事件となることが多いと言います。退行現象と言われる、おもらしをする、駄々をこねる、着がえや食事を親に手伝ってもらいたがるといった、幼児に特徴的な行動を示すことは、すでに子どもがいる家庭に新たに赤ちゃんを連れて帰ったときに、多くの親が経験します。退行は兄姉が、親からの注意や資源を多く引き出すための策略と捉えることができると言われています。親の注目を受ける唯一の存在であったその地位を奪われてしまった子どもは、より依存的なふるまいをすることで、親から受けられる注目が増え、そして多くの場合、親の怒りを買うことも増えるのだと言われています。

第二子が家族としてやってくることによって、親と第一子の関係性は明らかに変化します。赤ちゃんが家族に生まれることによる影響のひとつは、第一子と母親との愛着の安定性が低下することです。テティたちは、幼児期の第一子とその母親の愛着の安定性を評価しているそうです。1回目の評価は母親の第二子妊娠後期に行い、赤ちゃんが出生して4 ~ 8週間後に再評価しました。2回のテスト間で、対象児の愛着の安定性が低下し、その低下率は2歳以上の子どもで最も大きかったそうです。テティたちは、新しいきょうだいの反応の年齢差が生じた理由として、2歳未満の子どもは、新しくきょうだいができることを脅威と感じるだけの認知能力が、少なくとも2歳以上の子どもほど発達していないためと推測しているそうです。

新しいきょうだいの誕生に、2歳児が大きな苦しみを示すことは不思議ではないとビョークランドは言います。伝統文化社会やヒトの祖先の古代社会では、この年齢の子どもはまだ授乳されているため、母親の排卵が抑制され、「一番年下の子どもの地位」をあと1、2年は維持できます。また他の研究では、幼児期の第一子の女児がきょうだいの誕生に対して示す反応は、第二子誕生前に母親と良好な関係性をもっていた場合に、特に否定的であることが示されているそうです。きょうだいが生まれた14ヶ月後、これらの女児は弟妹に対し、敵対的で否定的な態度を示し、第二子も同様に兄姉に対して否定的な態度を発達させていたと言います。