実親と継親

これらの結果は、民話や神話に出てくる「いじわるな」継親に信憑性を与える結果といえるかもしれないとビョークランドは言います。いじわるな継親にまつわる寓話は世界中に数多く存在します。このような寓話を広範に調べたある研究では、継父は大きく「貪欲」と「冷酷」の2つに分類され、継母は子どもを厳しく監督する人物もしくは子どもを殺す人物として描写されることが明らかにされています。このことは、同じような物語が非常に多様な文化で広く伝えられてきたことを示しているだろうと言います。アレウト族からインドネシア人まで、どの文化にもそれぞれのシンデレラの物語があるそうです。しかし、この冷酷な継親の神話は単なる神話なのでしょうか?実証的な証拠からはそうではないことが示唆されているとビョークランドは言うのです。

子どもの虐待は実親の家庭よりも継親の家庭で多いことが、研究によって示されてはいるようですが、継親の大部分は虐待を行っていないこと、そして、大多数とはいわないまでも、多くの継親が新しい「子ども」を心から愛し、世話をしていることをきちんと認識する必要があると彼は言います。しかし、実の親子間には、意識的に大きな努力をしなくとも、強い情緒的な絆が「自然に」形成されるのに対して、継親は継子を愛し、養育するために、努力を重ねなければならないことも知る必要があると言います。この点は、「他者の子どもよりも、自分と遺伝的に関連のある子どもに対し、親は高い関心をもつと予想される」とする親の投資理論とうまく合致しています。継親は継子に対する誠意をもってはいても、現実には、継子への投資量は少なく、継子が虐待やネグレクトの対象となる可能性は高いのです。

ディリーとウイルソンは、子どもの虐待や子殺しについて、継親との生活との関連で広範な研究を行っているそうです。この種の研究のなかで最も大規模なもののひとつが、 17歳未満の子どものいる841の家庭と、子どもの支援団体が把握し、かつオンタリオ州ハミルトン(カナダ)の登録機関に報告された被虐待児99名を対象に実施した面接調査です。この調査では、継親と暮らす子どもは、実父母と暮らす子どもよりも虐待を受ける可能性が40倍高い、という驚くべき結果が得られたそうです。この大きな差は、貧困、母親の年齢、家族の人数など、継家族に関連すると考えられる他の潜在的影響要因を統計的に統制しても、消えることはなかったそうです。この研究および類似の研究結果から、ディリーとウイルソンは「継親であることそれ自体が、これまでに特定された子どもの虐待の危険因子として、唯一最大の要因である。」と結論づけています。

しかしこの結果はいまだ批判の対象となっているそうです。もしかすると、虐待の疑いがある事例が報告される可能性は、実親の家庭の場合よりも継親の家庭であった場合に高いとも考えられています。そこでディリーとウイルソンは、こうしたバイアスを排除するため、報告バイアスを受ける可能性が低い、虐待が明白な事例、つまり、子殺しについて検討したのです。ディリーとウイルソンは、継親の虐待に関する報告バイアスが本当に存在するとしても、親による子殺しを検討すれば、このバイアスを排除できると考えたのです。このような虐待によって死に至る事例は、隠蔽することが難しく、また、殺人以外の解釈を考えることはさらに難しい。おそらく当然ながら、ディリーたちが示した結果は、継親と虐待(この場合は、殺人)との関連性は、消えるどころか増加したというものだったそうです。