母方の祖父母

他にも成人の回想による報告でもこの結果と一貫性がある結果が得られており、父方の祖父母よりも母方の祖父母の方が身近に感じた、あるいは、実際に父方の祖父母よりも母方の祖父母と多く接触したことが示されているそうです。同様の傾向が、母方のおじ・おばと、父方のおじ・おばによる、姪・甥への技資でも観察されているそうです。大学生を対象とした研究では、父方のおじ・おばよりも母方はのおじ・おばの方が自分に関心を示していると受けとめられていたそうです。

母方の祖父母の方が父方の祖父母よりも、孫の世話を多くし、より身近であるという一般的傾向に反する報告をしているのは、私たちが知る限り、出版されたものとしてはパショスの研究のみだそうです。パショスの研究では、ドイツとギリシアの成人を対象に、それぞれの祖父母が自身の世話をどの程度してくれたかを評価するよう求めたものです。都市部の参加者に関する結果は、オイラーとヴァイツェルなどの報告と同様であり、母方の祖父母が父方の祖父母よりも多くの世話を提供していました。

しかし、ギリシアの田舎の参加者では正反対の傾向が観察され、父方の祖父母の方が母方の祖父母よりも多くの世話を提供していたのだそうです。この結果をもたらした要因のひとつとしてパショスは、ギリシアの田舎の伝統的家庭では、孫は通常父方の祖父母の近くに住むか、同じ家に住むことも多い慣習があることをあげています。

また、父方の祖父母には、孫、特に後継ぎとなる孫息子の世話をする社会的義務があります。父方の家族と物理的な距離が非常に近いことにより、都会の場合よりも父性の確実性が高くなるとも考えられます。夫の家族は、息子の妻の動きをある程度把握し、また制限しているため、父性の不確実性がほとんどなくなります。その結果、父系の伝統がある社会では、父方の家族の孫に対する投資が高まると予測されるのです。

パショスの結果は、親の投資理論の予測と対立するものではないと、ビョークランドらは提えているようです。それどころか、他の文化的伝統の関与を考慮しても、祖父母の技資が父性の確実性に影響を受けることを実証するものと考えられると言います。現代の都会の環境のように、社会的慣習が父性の確実性を低下させている場合は、父方の祖父母による投資は減少します。反対に、ギリシアの田舎のような父系社会では、社会的慣習によって女性の行動が制限され、父性の確実性は高くなります。このような場合は、父方の祖父母は比較的高い確信をもって孫に投資することができ、地域社会の要請にも快く従うことができるのだと考えています。

離婚率および再婚率が高い情報化時代の社会では、継家族が次第に増加してきているようです。しかし、継親子関係は現代の環境の新しい産物ではありません。古代では、主に病気や戦闘のために、親の死亡率がきわめて高かったのです。配偶者が死亡した場合、生き残った親は他の配偶者候補と新しい関係を形成し、子どもの父親あるいは母親の代わりになる人物を得たと考えられます。このような状況は、進化適応の環境で頻繁に生じたと考えられることから、現代人は、継親としての子育てに適応的な固有のメカニズムをもっていると考えられると言います。