シンガポール報告13

シンガポールでの講演の最終日の保護者講演は、午前、午後とも3時間という長い講演でしたが、皆熱心に最後まできちんと聞いていました。そして、私の書いた保育者向けの本も随分と多くの方が購入していきました。保護者の中には、有名な芸能人もいましたが、彼も最後まで聞いてくれました。彼については、翌日のホテルにおいてある新聞の一面に、家族と一緒の写真が掲載されているほど有名なようです。そんな有名な人も、自分の子の園の主催の講演会に参加するのですね。また、日本では、熱心な保護者は割と子どもに英語を教えてくれとか、もっと勉強のことをさせてくれということが多いと思いますが、シンガポールの園でも、ニュースなどで紹介される保育でも、受験が非常に厳しく、早いうちからいろいろなことをやらせようとする保護者が多いと聞いていました。しかし、今回の講演を通して、私の、それよりも自発的に行動できる子、子ども同士のコミュティを大切にすること、そんな主張に賛同してくれました。たまたま昨年は韓国で講演したのですが、韓国も同様受験競争が激しく、保護者がそれに向けての教育に熱心な国です。

私は、必ずしも受験競争に反対ではありませんし、ある意味での試験も必要だと思っています。また、学力も必要だと思っています。しかし、講演で主張したのは、今子どもたちは大学の入学試験を受けるわけでも、社会に出るわけでもないのです。子どもたちが、大学入試を受験するころ、社会に出るころに、どんな力が必要になるのかを考える必要があると思っているのです。また、本当の学力とは何であるのか、また、何のために学力が必要であるかを考える必要があることを主張しているのです。それは、保護者講演のまとめで話をしましたが、子どもたちが人生を幸せに送れるように、そして、その時の世界が平和であるように、そんな世界を子どもたち自身が築いていけるように願って、乳幼児期にどのような力をつけてあげたらよいかという、将来を見据えた保育をするべきであると思っているのです。それは、決して、一人ではできませんし、1つの国でできることでもありません。子どもを中心にした社会になることを願っているということで締めました。

このこと自体は直接にはシンガポールの方々には伝わらなかったかもしれませんが、今回、国を超えて私に講演の依頼が来たのは、そのような気持ちに共感してもらえたからだと思っています。この思いは、世界共通なものだからです。

この日の講演を終えて、やっと夜にホテルに閉じこもっての作業がなくなり、夕食後初めてシンガポールの街を歩いてみました。ホテルから出て、しばらく川に沿って下流の方に歩いていくと、遠くの方にライトアップされたマリーナ ベイ サンズホテルが見えてきました。それを目指してなお歩いていくとシンガポールではべたな観光地である上半身がライオン、下半身は魚の像であるマーライオンが、やはりライトアップされた姿を見せてくれました。この像は高さ8mあるそうですが、実は、シンガポールには計7つのマーライオンがあるそうです。この夜には、もう一つ、その背後にあるミニマーライオンもみることができました。ちなみに、次の日は、セントーサ島にある、人が登れる37mの「マーライオンタワー」も見ることができました。

講演が終わって、その解放感というよりも、次の課題が見えてきたこの夜でした。