進化と家族の関係

人類は、子育てをするために家族を作りました。その中で特に重要な存在は、もちろん「親」です。人間は未成熟で生まれるために、その生存は親から受ける養育に依存しています。そして、それは、子どもからだけではなく、親の方にも利益があることです。

また、進化発達的理論によれば、子どもは親から受ける養育を高めるために、そして、地域生態の条件に最も適合するかたちに個体発生を調整するために、心理的、身体的メカニズムを進化させてきました。

しかし、子どもが社会の一員として成功するように支援することは、親だけではなく、社会全体の責任です。そこで、遺伝子的母親以外の個体による子どもの世話が必要であり、そのような存在がヒトの子育てにおいて常に重要な役割を担ってきたと考えられているのです。かつては、この役割は通常は近隣の社会グループの親しい人、多くの場合、女性の親族が担っていたようです。

進化と家族の関係性に関して、20世紀後半のアメリカの政治家は、健全な社会には「家族の価値」が重要であると、盛んに訴えました。このとき政治家たちが思い描いていた価値や家族は、現実のものというより、広告宣伝によって作り出されたものであったかもしれませんが、家族は、何らかのかたちで、子どもの生存と成功、それは社会にとっても、きわめて重要なものです。子どもには親が絶対に必要であり、そして、親にとって子どもは自分の遺伝子を絶やさないための道なのです。親子は互いに強く恩恵を受け合い、与え合う関係にあります。そして、それぞれが、数十万年もの進化の過程で、その関係性を最大限活用できるよう準備されてきたと言われています。

しかし、子どもをもつこと、そして親やきょうだいがいることによって生じる問題に対処するための後成的なプログラムが、自然淘汰によって形成されているとしても、こうしたメカニズムは環境条件に敏感です。家族の中にあらかじめ決まっている結果など存在しません。事実、「生得的な」要因と出生後の経験要因とが相互作用して発達を形成することがおそらく最も明らかなのは、家庭においてでしょう。その結果、家庭は協力、葛藤や競争すべてが同時に存在する環境となり、進化によるメカニズムに支えられて、家族の構成員それぞれが適応度を最大化させようとしているのだとビョークランドは考えています。

D.Fビョークランドは、進化発達心理学の中で、ヒトの本性の起源を探ろうとしています。ヒトは、社会的な種であり、お互いに協力し、理解しあう必要があったことが大きく関与して、現代のヒトの心が進化したのだとビョークランドは言います。ホモ・サピエンスは、進化によって人の集団生活への備えを持ちました。しかし、そういう準備があるからといって、繰り返し起こる社会的問題に対処する既成の解決方法を、子どもが持っているということではないと言います。ヒトの社会的環境は、多種多様であるため、よく相互作用をする相手と付き合っていくための方法を柔軟に身につけていかなければなりません。

代替可能な社会的戦略があること、そして、それらを用いることは、生物の発達環境を概念化するうえで重要な例です。環境は単に、ある行動やローレンツの言う意味での一連の行動を「解発する」だけではないと言います。

進化と家族の関係” への10件のコメント

  1. 連載の集約、これまでの学びを振り返るこの度の内容です。親の存在の重要さ、そして、親として、子として、互いに育ち育てられる関係性が織り成す家族という生存形態に、ヒトのこれまでと、これからの進化を思います。未熟ながら、家族の為に帰り足を早める態度は、人類進化にとっての貢献と成り得ているのかどうか、誇張にも程がありますが、そんなことを思いました。
    時代によって家族の形態が変わっていっても、家族から学び続けることその本質は変わらないようで、親も子どもも切磋琢磨しながら生きること、人生を学んでいるようです。チーム保育を時に、その骨頂として大きな家族のような、和を感じる時がありますが、家でも、そして職場でも、大いなる学びの中にいるという幸せが保育にはあるように思われます。

  2. 「人間は未成熟で生まれるために、その生存は親から受ける養育に依存していて、それは、子どもからだけではなく、親の方にも利益がある」とあったことが印象的で、人類のこのような進化の結果が、結果的に親子間の相互利益となっていることが多くあるなと感じていて、むしろそうであるからこそ、人類は生存し続け、繁栄してきたのだろうなと感じました。また、「解発」という言葉を恥ずかしながら初めて知りました。コトバンクで調べると
    「動物が、同種の仲間の形態・色・音声・におい・身振りなどによって、求愛・採餌・威嚇などの行動を誘発されること」とありました。環境は、実に多種多様であるがゆえに、もたらす効果、発達も多様なものがあり、簡単な言葉での説明が難しい部分がありますね。だからこそ、子どもの姿を通して「環境」というものを大人が学んでいく必要がありますし、伝えていく上でも同様なことが言えるように感じました。

  3. 当ブログのおかげで、従来未知であった学者の論説に触れることができます。改めて臥竜塾ブログに感謝するところです。これまで紹介して頂いた「D.Fビョークランド」博士の研究成果。その要約としての「進化発達心理学の中で、ヒトの本性の起源を探ろうとしています。ヒトは、社会的な種であり、お互いに協力し、理解しあう必要があったことが大きく関与して、現代のヒトの心が進化した」とするビョークランド博士のお考えには素直に頷くことができます。「ヒトの社会的環境は、多種多様であるため、よく相互作用をする相手と付き合っていくための方法を柔軟に身につけていかなければなりません。」これは私たちが人と関わりながら生きていく上で大変重要なことですね。多種多様は「柔軟さ」を必要とする。フレキシブルであり続けることを深く感じた今回のブログでした。さて、今日一日、どんな人との関わりが待っていることか?社会的存在である自分を感じられる日にしたいものです。

  4. 人類は家族を形成し、子どもを育てる中で〝子どもからだけではなく、親の方にも利益がある〟とあり、相互に恩恵を受け、与えながら生活しているということなんですね。
    自分自身子どもが生まれてから、子どもからいろんなものを与えてもらい、学ばせてもらっています。当然ですが、子どもがいない生活は今となってはあり得ないものです。
    園の職員のみんなともそのような相互に恩恵を受けている関係であるように思います。チーム保育というのは「家族」の大きなもののような、考えていくとそのような集団になるのでしょうか。

  5. “「生得的な」要因と出生後の経験要因とが相互作用して発達を形成することがおそらく最も明らかなのは、家庭においてでしょう。”生得的に持っているものと社会的に獲得されたものとがうまく織りなって発達していくなかで、家族という存在のなかで獲得されるものの価値は、大きなものであることを改めて感じます。家族のなかで、培ったものは、社会にとっても必要性の高いものであり、そうしたことが人類の進化に伴う、社会の進化に繋がっていくのかなと思いました。そういった家族内での協力や葛藤や理解し合う心というものが育ち、多種多様な社会で、うまく柔軟性をもち、活きていくのかなと思いました。

  6. 「子どもには親が絶対に必要であり、そして、親にとって子どもは自分の遺伝子を絶やさないための道なのです」とありました。利益という言い方で表してしまうのがいいのかは分かりませんが、親と子が存在することはどちらにとっても恩恵があるからこそこうやって人類は種を繋いできているのですね。まさに互いに支え合っているということを感じます。また「ヒトの社会的環境は、多種多様であるため、よく相互作用をする相手と付き合っていくための方法を柔軟に身につけていかなければなりません」という言葉も印象的でした。集団の中であらゆる人と関わっていくというのはストレスを受けることでもあるのかもしれません。しかし、そのようなあらゆる人との関わり方を学ぶことを私たち人類はしていかなければならないですし、それこそが人であるということを感じました。

  7. 「子どもには親が絶対に必要であり、そして、親にとって子どもは自分の遺伝子を絶やさないための道なのです」というのが印象に残ります。子どもを持つ人にとってら我が子は自分の遺伝子の道というのはまさにそうですね。互いに支え合っているような印象ですし、実際そうだと感じます。そして「ヒトの社会的環境は、多種多様であるため、よく相互作用をする相手と付き合っていくための方法を柔軟に身につけていかなければなりません。」とあり、我々人類はそれが出来たからここまで進化してきたのではないかと感じます。

  8. 「子どもをもつこと、そして親やきょうだいがいることによって生じる問題に対処するための後成的なプログラム」と書かれてありますが、私自身家族を持つことで色々な事を学びました。それは家族を持つことでしか経験できないことや、持つ事で悩み、葛藤、それら全て自分の人生においてプラスになる事のような気がします。子どもは親が育てているというイメージがあるような気がします。実際に、私自身もそんな考えを持っていますし、確かに親がいないと何の支援もない為、成長できません。しかし親になってみるとそんなことはなく、子どもがいるからこそ頑張れたり、辛いことも乗り越えられたりします。親も子どもがいるから成長できているのだと思います。それは親だけでなく、子どもと関わる仕事をしている日、全てに通じると私は思います。

  9. 「子どもには親が絶対に必要であり、そして、親にとって子どもは自分の遺伝子を絶やさないための道なのです」という言葉が印象的でした。親が子どもを育てることは当たり前ですが、子どもにとっても、親にとってもお互が大切な存在なのですね。以前の、ブログに虐待について書かれていたことを思い出しました。血のつながった子どもと、つながっていない子で虐待を受ける可能性が変わることは、”親にとって、子どもは自分の遺伝子を絶やさないための道”であるというところにつながってくるような気がしました。そして、「子どもが社会の一員として成功するように支援することは、親だけではなく、社会全体の責任です」という言葉のように、私たち大人が子どものことを大切に思うような社会であってほしいと感じました。

  10. 「進化による人の集団生活への備えを持っているからといって、繰り返し起こる社会的問題に対処する規制の解決方法を子どもが持っているということではない。」あります。人が社会的な環境で集団生活していくためには親といっても様々であり、親も含めた社会に対しての柔軟な付き合いの方法を見つけていかなければならず。そのため、遺伝子としての進化メカニズムだけではなく、環境に対する柔軟な適応度も同時に必要とされるのですね。そう考えるとやはり人は遺伝子に突き動かされているだけでもなければ、環境によって学ぶことばかりでもないということがわかります。そして、親と子といえ、相性があったりするということも納得がいきます。とはいえ、家庭は親の遺伝子を残していく過程において、重要な戦略であり、ヒトの生存戦略の効率性に改めて感心します。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です