シンガポール報告6

シンガポールでのディスカッションでは、随分と参考になることが多いです。まず、話し合いの内容を、書記が記録するのではなく、机の真ん中に置かれたボードに次々と書いていきます。書きながらみんなの意見を聞き、なるべく主観的にならないように、皆に見えるように書いていました。しかも、その記録は、後で主催者が回収します。話し合われた内容が、記録として保存できるのです。同時に、個人的に疑問に思ったこと、課題だと思ったことは付箋に書いて、壁のボードに貼り付けます。そのあとは、日本でもよく行われるように、各グループから話し合いの内容の報告です。しかし、それもボードを見ながらの報告ですから、単に主観的な意見ではなく、きちんとした内容報告です。しかも、話し合う課題がきちんと設定されているため、内容も整理されてあります。

しかし、時間の都合で10グループも無理ですので、そのあとはどうするのかと思っていたら、面白いことを行いました。各グループに二人残して、残りの人たちは隣のグループに移動します。そして、隣のグループの残っている二人が、移動してきた参加者に話し合った内容をプレゼンします。そして、また次のグループのところに移動しています。こうして、内容を共有していきます。

話し合っている間、責任者と話をしていたのですが、興味のある話を聞きました。それは、保護者にどう説明するかということに対してです。今回、ブースで紹介していたのは、見守る保育の中で、どこから取り組んでいるかです。たとえば、それを聞いたときに、すべて取り組もうというのではなく、できるところから取り組むというと、あまり構えずに取り組みやすいという考え方に感心したのですが、実はもう一つ意図があったのです。それは、保護者対応です。「見守る保育に代えます!」というと、「それはどのような保育か?」「そのような保育で子どもたちはきちんと見れるのか?」といろいろと質問を受けます。それどころか、変えることに抵抗することもあります。それを説得したり、子どもが変わってくるまでじっと辛抱しなければならないことがあります。しかし、たとえば、「ピーステーブル」を取り入れるだけであれば、特に保護者への説明はいりません。しかし、それを作ったことで、「子どもにこんな姿が見れるようになりました。」という報告をしていきます。そうすることで、次第に見守る保育を広げていけば、保護者は特に意識せず、知らないうちに見守る保育になっているというのです。

今回の講演で異年齢保育のかかわりを紹介しましたが、それを見た園では、さっそく取り入れたいと言っていましたが、それは異年齢の活動を増やしていき、知らないうちに異年齢保育に代わっていくという取り組みだそうです。代表は、「何も大々的に取り組みを保護者に言わないで、少しずつ取り入れて、知らないうちに代わっていたということであればいいので、すぐにでも取り組めばいいのよ。」と取り組みが進まない園に助言していました。そんな導入もあるのですね。

いま、「はじめの一歩」という、取り組み始めての苦労を紹介する本を紹介しています。その中に、ぜひ、シンガポールで取り組み始めた例を入れたいという意向を話したところ、喜んで提供してくれるそうです。それは、28日に訪れた実践園で見せてもらった導入についてのプレゼンを見せてもらったので、それが欲しいと要求してみたのです。

シンガポール報告6” への12件のコメント

  1. 何とも知見に富んだこの度のブログです。ディスカッションの手法もとても興味深く、大人数で実施される場合など、とても効率的でいて、移動する側にも残る側にも実味のある時間となることが伺えます。
    また、見守る保育を導入するにあたっての内容は、秀逸ですね。なるほど鮮やかでスムーズな印象を持たせます。新しいことを始めるのはどうしても腰が重くなってしまうのがヒトの性のような気もしてしまいますが、それを少しでも軽くしてくれるような提案、見守る保育とはそういう保育だと改めて思います。保育や子育てに臨む人の心を軽くする、見守る保育の担わんとする役割の大きさは計り知れませんね。

  2. 私たちは情報をどう共有していけばよいか、こうした壁にぶち当たることがしばしばあります。今回のブログで紹介して頂いた手法はベストではないかもしれないが、結構有効な手法なのではないかと思った次第です。「なるべく主観的にならないように、皆に見えるように」とか「各グループに二人残して、残りの人たちは隣のグループに移動し」プレゼン。参加者一人一人が重要。一人の落ちこぼれも出してはいけない、それは国の損失につながるから。これはフィンランドの人から聞いたことでした。このことをシンガポールの人々からも感じるのです。人口560万人。国を支えるには一人ひとりが大切。落ちこぼれやひきこもり、依存症の人を容認するのは国家の存亡に関わるに違いないのです。そして、国家存亡の明日は教育にかかる、ということでしょう。「何も大々的に取り組みを保護者に言わないで、少しずつ取り入れて、知らないうちに代わっていたということであればいいので、すぐにでも取り組めばいいのよ。」このことを日本の各園さんに伝えたいですね。例えこれまでとは異なる実践であっても良い内容なら時間の経過とともに関わる皆さん一人ひとりがわかってくれるようになります。私が勤める園もそうでしたから。これも世界標準。

  3. 各グループに二人残して、残りの人たちは隣のグループに移動する共有方法はとても興味深く、参考になります。残る二人が他グループの内容を知れないデメリットがあるのかなとも感じましたが、その二人はプレゼンをすることでより自分のグループの話合った内容を深めることができますし、研修後に他グループの人や自分のグループで回った人に聞けますね。また、見守る保育を導入していく上での方法は、自然的且つ効率的でとても参考になります。講演の際に情報量が多いので整理する時間を設けた話もそうですが、保護者に対してもいきなり「〜を導入する」などと大々的に告げてもキャパオーバーなのでしょう。見守る保育の良さを知らず知らずのうちに1つずつ保護者が実感していき、ゆくゆくは全体的な見守る保育を導入していく方法に感動しました。

  4. 私がこの保育と出会ったとき、あまりの感動になぜか有頂天になってしまいました(私ではなく、藤森先生なのに・・・)。大上段に構えて、この保育が日本の未来を変えるというような勢いで、ものすごく強気に人々を論破しようとしていました。きっとその結果、無駄なエネルギーをたくさん使ったように思います。とは言うものの、この経験はとても大切であったと思っています。その結果、今なら、保護者の方々にも、行政の方々にも”そうですね””そうですね”と言いながら、なし崩し的に、知らないうちに見守る保育になっていたという作戦も考えられるようになりました。
    その考えると、シンガポールの責任者の方のお話は、とても参考になります。ピーステーブルでも、セミバイキングでも、軽い感覚でしらっと始めて、何気に良い結果を保護者にお話しすれば・・・
    「はじめの一歩」シンガポールの導入事例がとても楽しみです!

  5. ディスカッションのやり方のみならず、見守る保育を通した保育の必要性を強く感じながらも、大胆的に変えるのではなく、一つの取り組みからこういった環境を用意することによって子どもは、様々なこと、保育者が意図して子どもに身に付けてほしい力をつけることができるといような形であれば、大々的に変わるよりも、新たな取り組みという形のほうが受け入れやすいことが納得しました。必要性を感じてしまうとこれがいい、と強引に進める形であっては、相手は納得できなかったりしますよね。良さを伝えるためには、その良さを知り、その良さを理解しなければならず、しっかりとした理念をもつことが必要だと感じました。「はじめの一歩」という、一つのことから取り組みかたを知ることは関わる上で、重要だと感じました。

  6. 新しいことを始める上でとても参考になるお話です。新しいことを始めようとするのは、なかなか大変なことであるというのは経験上知っていますが「とりあえずやってみる」そして「少しだけ」ということであれば、新しいことへのハードルが下がり、しかも、対応もスムーズにできていくとあります。読んでいて「そんな方法もあるのか」と驚きました。
    世界という大きな枠で捉えていくとやはり、おもしろい話や為になるものなど、たくさんの学びがあるように思いました。

  7. 付箋を使ったグループディスカッションには参加をしたことがありますが、その続きが二人を残し、他のテーブルに移動し、残った二人がその説明をするというのは面白いですね。こうした一つ一つの話し合いに対しての取り組み度や、またまとまる力が強いからこそこうした研修ができるのでしょうね。新しい保育を導入するという方法についても、環境を増やしますというやり方もあるのですね。その中でよくなっていくことで、子どもたちも、職員もより理解が深められる。凝り固まったイメージだけではなく、様々な視点を持つことは本当に大切ですね。

  8. シンガポールでのディスカッションは非常に興味深いですね。話し合った結果をそれぞれが共有するための方法というのがよく考えられているのですね。ぜひ取り入れていきたいところです。そして代表者の「何も大々的に取り組みを保護者に言わないで、少しずつ取り入れて、知らないうちに代わっていたということであればいいので、すぐにでも取り組めばいいのよ。」と簡単に言っていますが、この発想というのは本当に思いつかないところで一番驚きます。これを日本の園の方々が実践するとどうなるのか非常に気になります。

  9. 見守る保育を取り入れようとして、保護者に説明するときに反対に合うという話をよく聞きます。見学者からも質問で保護者への説明をよく聞かれます。私も開園1年目の時を思い出しました・・・。しかし、シンガポールでの取り入れ方は実践しやすいところからというのも納得できますし、大きく変えるだけでなく、環境の一部分を変えるだけなので対して大きな変化でもありませんし、そうする事で子どもの姿が変わることで、むしろ保護者へも説明がしやすいですし、理解も得られますね。

  10. 「書きながらみんなの意見を聞き、なるべく主観的にならないように、皆に見えるように書いていました」とありました。これも参考になりますね。ある人がまとめるということになると確かにその人の意見にどうしても傾いてしまうのかなと思います。主観的になることは意識して取り組まなければ難しいかもしれませんね。また、見守る保育の導入の仕方もとても参考になります。できることを実践し、子どもの姿が変わってきたら保護者も納得していくかもしれませんし、そのような取り組みがどんどん着実にゆっくりと広がっていけば見守る保育も自然と導入できていくのかもしれませんね。いきなり、大々的に初めてしまうことに抵抗があったり、反発が予想される場合はこのようなやり方も参考になりますね。私はきっと大々的にやってしまう方ですが笑。

  11. シンガポールの取り組み方を聴くと本当に勉強になります。できるところから、部分的に取り組むことで、保護者からの不満もなく自然と見守る保育に移行できるという導入は非常に良いと感じました。日本でも、見守る保育に変えていくのは大変そうだなという印象ですが、シンガポールでは、各園取り組みやすいところから取り組むことで、見守る保育の理論に沿って、クオリティーの高い実戦がされています。今回のシンガポール報告は、そういう面でも、とても参考になると思いました。
    今年から、3歳クラスに入らせていただき、お部屋の環境を見直していこうという段階です。シンガポール報告を読むと、今の室内環境をもっと良くしていこうというやる気にもつながります。いろんなアイデアが沢山出てきますが、一つずつ、実行していければと思っています。

  12. 「何も大々的に取り組みを保護者に言わないで、少しずつ取り入れて、知らないうちに代わっていたということであればいいので、すぐにでも取り組めばいいのよ」これは理想的な変革の仕方のように感じます。そのためには強烈な理念やカリスマ性、組織の共有基盤といったものができていることがとても重要なものであるように思います。そして、全員がそのビジョンを共有し、粘り強く実践していくことができないといけないですね。こういったアプローチをしている様子をみるとまだまだ自分自身がやらなければいけないこと、できていないこと課題が見えてきます。

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