シンガポール報告11

子どもの行動を予測するということは、子どもをよく見ているとできるようになってきます。以前ブログでも紹介したと思いますが、ある蝶の写真家と飲んだ時の話です。彼は、なぜ自分が蝶の良い写真が撮れるのかを私に聞きました。彼に言うのは、技術でもなく、カメラの性能でもなく、蝶の行動が予測できることだと言ったのです。飛んでいる蝶を見ただけで、この蝶は、どこに行って、何をしたいのかがわかるのだというのです。ですから、先回りをして、そこにカメラを向けているので、決定的写真が撮れるというのです。その時に私は、いい保育者とは、子どもが歩いているのを見ただけで、その子がどこに行き、何をしようとしているのかがわかるのではないかと思ったのです。最近、園の職員にその力が育ってきたなあと思うようになったのは、いい動画が撮れるようになったからです。

これらの動画が園にはたくさん保存されています。それは、その動画をみんなで見て研修をしたり、行事の時に保護者に見てもらっているからです。それが、今回のシンガポールでの講演に役に立ったのです。

今回、もう一つ予測する力が役に立ったことがありました。シンガポールでの講演の二日目の会場は、コンサートホールのようなところです。舞台が広く、観客席が傾斜になっていて、操作室が一番後ろの上の方になるホールでした。今回の講演は、パワーポイントで説明しながら、それと関連する動画を織り交ぜていきます。そこで、講演資料は、話す順序に沿ってパワーポイントを構成し、その間に動画を取り入れておき、順に話を進めていきます。しかし、思いがけないハプニングがありました。それは、資料にかなりの動画を挿入したためか、データが壊れているのを朝、気が付きました。

当日のデータは、前日に修正したばかりで順序がバラバラなうえに、さらに、今回一緒に来た私のアシスタントが、会場で急いで作り直したこともあり、何を使うかは話の流れで考えていかなければなりません。事前に私が日本で使うであろうパワーポイントの場面を打ち出しておいたので、それに番号を振り、次はどの画面を使うかをアシスタントに番号で指示したのです。そして、間に「次は、エプロンを自分でしまう動画」と指示して、それを探してアシスタントは映し出さなければなりません。しかも、操作は、会場の一番後ろの操作室で行います。そこで、まずインカムを借り、それで連絡しあうことにしました。しかし、動画を探して、いったんパワーポイントを消して動画に切り替えると、かなりのタイムラグが起きてしまいます。そこで、アシスタントは、2台のパソコンを使うことにしたそうです。片方のパソコンで、話している画面を映写し、その間にもう片方のパソコンで動画を用意します。そして、私の指示に従って画面を切り替えていきます。それを素早くやるためには、私が話の流れで、次はどの場面を使うか、どの動画を使うかを予測していかなければなりません。彼が後で言うには、それがピタッと当たった時の快感は何とも言えなかったそうです。さすが、何年か全国を一緒に講演に回ったパートナーですね。

そんなバタバタの二日目の講演でしたが、反応は良かったです。しかし、会場の作りのせいなのか、今回はサイン攻めというよりも、一緒に写真を撮ってほしいという希望者が並びました。あまり写真が好きでない私は、たぶん顔がこわばっていたでしょうね。

シンガポール報告11” への10件のコメント

  1. そうか、予測可能性、という観点から仕事をしていくなら、私ももう少し良い仕事ができるのだろうな、と気づいたところです。これやったらどんな反応がでてくるのだろうか、こんな発言をしたら如何なる事態が起きるのだろうか、などなど。この能力を培うには、他者の気持ちを推察できる力、すなわち非認知能力を身に着けることが必要になってきますね。動画撮影をする保育者は、子どもの一人ひとりの行動を予測しながらスマホを向ける、その力が必要になってくるでしょう。保育とはそもそもそういうものだろう、ということに気づかされるのです。子どもの今をよくわかり、その子にとって望ましい未来を創造する環境とは・・・。保育者の任務とはこのことなのでしょうね。さもなければ、子どもの発達を可能な限り促すことには通じないような気もします。そして、藤森先生のアシスタントの方の藤森先生行動言動予測。日頃、藤森先生の行動をよーく観察していないと適切な予測には繋がらないでしょう。そうか、話は飛躍しますが、私たちにはフォースが必要だということですね。そうか、教育者の条件は、フォースか!やっと気が付きました。

  2. 先生と培われてきたその成果が存分に発揮された講演だったことを思います。パートナーの方の仕事振りは、僕らの誇りですね。臥せている竜も竜であることを自覚するかのようで、長い下積みの日々が実ることを教えてくれます。
    先生の内容を読み、コメンテーターの方々の内容を読み、と当ブログの楽しみ方を覚えてしまっていますが、今回もまた深淵な見地からコメントが寄せられています。先生が主張される「ダークセンス」、対象が赤ちゃんであり、大人に置き換えたところの「直観」と訳すのは言語能力の乏しい証拠になってしまうかもわからないのですが、それを磨くことと保育が密接な関係にあることを思いました。

  3. 蝶の写真家の方が良い写真を撮れるのは「技術でもなく、カメラの性能でもなく、蝶の行動が予測できること」とありました。子どもたちを撮った動画や写真も、子どもの行動を予測することができないと成せない技ですね。改めて保育者の専門性の高さを感じた内容でした。
    せっかく作ったデータが当日の朝に壊れているなんて、本当に大変でしたね… しかし、それを臨機応変にパートナーと乗り越えることができたことが単純にすごいなと感じますし、そしてパートナーの方がそれを「阿吽の呼吸」と言っていたことから、信頼関係を超えた「絆」のようなものを強く感じました。サイン攻めの次は写真攻めとはそれも大変ですね。それだけでも反応が良かったことが伝わってきます。

  4. なにかを予測して考えることの必要性があることを保育をしているなかでも感じますし、その事前予測が生きていくなかで、必要な力だとも感じています。そういった予測できる行動に保育者としての質の高さがあるようにも感じ、意識的にも考えていかなければならないと思いました。
    そう思うと自分自身、まだまだ足りない部分を感じ、子どもの発達を理解し、そして、子どもの行動から予測できるものへ意識を向ける、それを意図して、動画に納めることで、子どもを深く知ることにもつながり、さらに、皆でその事を共感できるといった保育としての質の向上になると考えるところです。そういった考え方の共有ができているからこそ、ハプニングにも、的確な対応できるのでしょうね

  5. 良い蝶の写真を撮るには〝飛んでいる蝶を見ただけで、この蝶は、どこに行って、何をしたいのかがわかる〟という予測ができることだと写真家の言葉がありました。それで思い出したのがイチロー選手が以前、守備がうまい選手として守備のことを聞かれた時に「本当に守備がうまい人はファインプレーをしなくていい選手」と話していたのを思い出しました。バッターのクセやその時の構え、スイングの仕方など、その時の状況からある程度打球がどこに飛んでくるか予測して、予測した守備位置についているので、ジャンプしたり、ダイビングキャッチしなくてもいい場所にあらかじめポジショニングしているということでした。そのことを保育に置き換えたら「動画を撮ること」ということになるのでしょう。
    やはりといいますか、どの世界でもすごい人ほどよく周りを見ているし、感じとるアンテナが敏感なんだと思います。「よくみる」ということがどれほどのことであるかが分かります。

  6. シンガポールでのその阿吽の呼吸の話はとても素晴らしいです。彼からその話を聞くことも刺激になりますし、彼の先を見通す力を改めて見習いたいなと思いました!予測して行動するというのはどんな場面でも大切になってくることなのかもしれませんね。保育者として仕事をする上でもそうですし、保育者ではなくても、あらゆる仕事の場面でも大切になってくる力だと思いますし、生活をしていく上でも大切になってきますね。家庭での生活や、家族の見通しなどをしっかり持っておくと今何をしておけばいいかということが明確になっていきそうですね。予測する力も、もっと意識していきたいなと思います。

  7. 私も誰かに保育の話をするときによく動画を使います。ただ動画を使った説明は、とても分かりやすくその効果が大きいだけに、その動画が使えないかもとなった時は相当焦ると思います。それだけに今回の先生と、助手の阿吽の呼吸は本当に素晴らしく、またそれがうまくはまった時のシンクロ感は気持ちよかったのだろうなと感じます。そして何より会場の方たちも、それを違和感なく受け入れているというのは本当に素晴らしいやり取りだったのだろうなと思います。いまさらながらその場面に立ち会えなかったことを後悔してつつも、自分だったらどれほど力になれたのかと少し考えてしまいました。

  8. 助手の真骨頂と言ったところですね。蝶の写真家と同じように、藤森先生の話しを聞いて、次はどの動画が来るのか?と予測しながら準備をするのは、簡単に身につくスキルではありません。本当に素晴らしいですね。心から尊敬します。
    もしかしたら見守る保育の職員の理解度を示すものとして、動画はいいかもしれませんね。最近、私も動画を撮ることをしていないので、来年度の自分の目標としてなるだけ現場を見て、いい動画を撮れるようにしようと思います。

  9. 「子どもの行動を予測するということは、子どもをよく見ているとできるようになってきます。」というのは実際に現場にいる身として身につけなくてはいけないことですね。しかし、そこは難しい領域でもあるような気がしています。そしてパートナーの臨機応変さには驚きます。何年も一緒に全国を回ることで考えているとがわかるようになるということですね。一番最近の先生の言動を身近で見る、聞くことで意思疎通がより通う感じが伝わってきます。それはなかなかできないことですね。阿吽の講演見て見たかったです。

  10. シンガポールでのそのアクシデントは初めて聞いた時とても驚かされました。そして、彼の話でもありましたが、先生が次になんの動画を用意してほしいか予測して、インカムに手を当てた段階で次の動画を流したということを言っていました。本当に阿吽の呼吸で、素晴らしいなと感じました。
    文章内に、園で保育者が動画を撮るのが上手くなったと書かれていました。それは、子どもの行動を予測する力がついたとも言えるのですね。まだまだ私は、予測が外れることも多いですが、少しづつ予測が当たるようになってきていることも実感できます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です