きょうだい差

サロウェイは、出生順位は重要な要因ではあるものの、相互に関連しながら性格の発達に影響を及ばしている子どもと家族のいくつかの特徴のひとつにすぎず、他には、親子間の葛藤の大きさ、きょうだい数、性別、年齢、親を亡くした年齢、社会階級や気質が、相互作用しながら性格に影響を与えていると言います。彼のこのモデルについては、これを支持する研究、不支持する研究が混在しているそうです。たとえば、サロウェイは自身の研究のなかで、科学や政治の「革命」の指導者は第二子以降であることが多く、それに対し、現状の支持者は長子である傾向が強いという証拠を示しているそうです。サロウェイが第一子は、誠実性が高い、経験への開放性が低いという特徴があり、第二子以降の子どもは、同調性が高い、反抗的であるという特徴的があると予測した性格因子を検討した研究では、サロウェイの仮説を支持する結果も、否定する結果も得られているようです。

行動遺伝学者ジュディス・ハリスは、サロウェイの主張と一致して、出生順位効果は家族内での子どもの行動に大きく影響していると言っているそうです。しかしハリスは、サロウェイとは異なり、子どもはそれを家庭外での行動に一般化しないと主張しています。ハリスによると、学習はむしろ文脈に依存しているため、家族内で獲得された行動や態度は、その文脈でしか使えないものであり、家族外での行動には大きく影響するものではないと言います。デルロイ・ポーラスたちの成人の自分自身およびきょうだいの性格に関する認知を評価した研究では、サロウェイの仮説と一致して、出生順位効果が最も高かったことを報告しているそうです。このように、家族内で比較をした場合には、サロウェイの予測と一致する出生順位効果が認められています。しかし、家族間の比較では結果の頑健性は低くなり、ハリスの仮説と一致します。

進化発達心理学の視点からは、子どもの家族内での出生順位がその子どもの発達に重要な影響を与えないとは考えられません。資源をめぐるきようだい間の競争は現実に存在し、そして、親は、意識的であるにしてもないにしても、ある特定の子どもを他の子どもよりもひいきするものなのです。また、長子には年上であるという強み、つまり、 2番目の子どもが生まれるまでにすでに数年間生きのびているという利点があります。乳児死亡率が高い環境では、このことが、たとえ短期間ではあっても年上のきょうだいの直接的な強みとなります。

しかしビョークランドは、出生順位が子どもの行動や性格に影響を与えることは認めますが、出生順位の影響は家族内で最も大きいとするハリスの主張に概ね同意しています。ハリスの主張と異なるのは、きょうだいとの相互作用を含む家族内での経験が、性格や発達全体に大きな影響を及ばすと捉えている点だと言います。しかし、子どもの学習はほとんどが文脈に依存しており、子どもの家庭内の行動と家庭外の行動を区別する際には、この点が特に重要であると、彼も考えているようです。

子どもたちの性格や特徴が、どのような要因を持って決まるのか、どのような影響を受けているのかということは置いておいても、このような違いを持っているということの基本的な目的は、多様性を生み出すことなのです。

きょうだい差” への10件のコメント

  1. 様々な説が実は多様性についての考察であるという最後の段落の言葉には、とても驚きました。そしてなるほど、どの説も何が良くて何が悪いというような論争でなく、その影響力の高さについて比較があり、展開が成されているように見受けられます。子どもを巡る環境について、素晴らしい頭脳を携える方々が切磋琢磨し合い、更なるアプローチを子ども社会へ投げ掛けようとしているのだと思うと、とても感動してしまいます。

  2. 長子の優位性について「2番目の子どもが生まれるまでにすでに数年間生きのびているという利点」はわかるような気がします。私には子どもが一人だけなので2番目3番目がいたらどうだったかはわかりませんが、私自身は4人きょうだいの長子としておそらくチヤホヤされて育ったのかもしれません。私自身がやりたいようにやってきたことを弟妹たちは見ていますから、おそらく「チヤホヤされて育った結果だ」と思っているかもしれません。きょうだいも「家庭内の行動と家庭外の行動を区別する」こと、この点は多いに首肯できますね。きょうだいがいないひとりっこでもこのことを私は実体験しています。「学習はむしろ文脈に依存している」とありました。この文脈依存が区別を引き起こしていると考えられます。この点からも「学習」ということは極めて大切なものだとわかります。ひとりっこもそうですし、きょうだいのそれぞれもそうですが「多様性を生み出す」という認識を私たちは持ちたいものですね。

  3. 出生順位以外には、「 親子間の葛藤の大きさ、きょうだい数、性別、年齢、親を亡くした年齢、社会階級や気質が、相互作用しながら性格に影響を与えていると言えるのですね。また、サロウェイと根本は同じものの、ハリスの「子どもはそれを家庭外での行動に一般化しない」という主張があり、私もそれに近いものを感じました。自分もそうですが、家庭の内と外で区別しているものがみんなあるように思えます。子どもたちも家庭での様子と園での様子がマッチしないことも保護者と話していてよく感じるところがあるのも、それとつながる部分があるのかもしれないなと感じました。また、出生順位などによって生まれる差の「基本的な目的は、多様性を生み出すこと」とあり、とてもしっくりきました。多様性を認め合う文化の根本がここにあるのかもしれないと思えました。

  4. 最後の〝多様性を生み出す〟という言葉が印象に残ります。きょうだいがいるいない、第何子なのかなどということでも多様性に関わることであるということで、神秘的な感じがしました。以前コメントに「きょうだいを同じように育てても、全く違う性格になる」というようなことを書きましたが、それとつながるような気がしました。いろんな人がいるから面白い世の中になっていて、楽しい人生を送れるという多様性を認められている社会が広がる気がしました。

  5. 兄弟、年齢による出生順位は要因として生き方に変化をもたらすものとしてありますが、決して直接的な影響とまではないが、性格や学力やのちの地位を決めるものでないことがわかります。しかし、その先に産まれたということが”乳児死亡率が高い環境では、このことが、たとえ短期間ではあっても年上のきょうだいの直接的な強み”とあり確かに、その生存率としては、生きていることに十分な強みを感じますが、それによって、性格が決まるのではなく、多様性をもったそれぞれに個々の育ちがあることを感じました。

  6. 「家族内で獲得された行動や態度は、その文脈でしか使えないものであり、家族外での行動には大きく影響するものではないと言います」「出生順位が子どもの行動や性格に影響を与えることは認めますが、出生順位の影響は家族内で最も大きいとするハリスの主張に概ね同意しています」とありました。よく、家での様子と、外での様子が違うということが言われたりします。家では強気なのに、外に出るとその反対にという感じで使われますが、出生順位の影響は家族内で大きいということは、そのような子どもの姿はある意味証明されているのかもしれませんね。確かに家族の中での関係性と、社会に出た場合の関係性は違いますね。家族の中で長男であっても、外に出てば年上はたくさんいますね。だとするとやはり、同年齢だけで過ごすというのはそれはそれで特殊なことのように感じます。

  7. 「子どもたちの性格や特徴が、どのような要因を持って決まるのか、どのような影響を受けているのかということは置いておいても、このような違いを持っているということの基本的な目的は、多様性を生み出すことなのです。」という最後の言葉には全て心奪われた思いです。なるほど様々な研究がされているんだ、さてどう理解していけばいいかなと考えている中での言葉でしたので驚きです。これが子どもの多様性へとつながりそれを我々が基本の部分を理解し、子どもとどう接するかを考えていかなければならないかとがわかります。

  8. 私は二人兄弟ですが、やはり第一子と第二子の違いがあることに不思議と思っていました。父から聞いた話ですが、祖父は兄の将来は公務員で手堅く、私は営業のような職種が向いていると話していたそうです。今では全く正反対ですが(笑)ただここ数日のブログを読んでいて思う事は、兄弟という存在により、もともと持っている気質はあるにしろ、やはり影響してしまうということですし、ブログの最後に基本的な目的は多様性を生み出すとも書かれてあります。そうなると兄弟の存在は重要なのかもしれません。しかし一人っ子の家庭の子どもは多様性を生み出すことが難しいかというと、そうではなく、だからこそ保育園のような子ども集団がある環境が大切なのかもしれません。

  9. 難しい文章が、最後に”多様性”へとつながっていてなるほど!と落ち着くことができました。ブログを読むと、さまざまな研究が紹介されていたりして、難しく感じることが多いですが、結局のところ〜の部分を知ると、案外すっと入ってくることが多い気がします。言葉の難しさと、保育を言葉で表現する難しさをその度に感じてしまいます。
    そして、それを私たち現場の人間がわかるように解説して下さる先生のすごさもまた実感してしまいます。
    “多様性”という言葉がありましたが、多様性を認めることで良い集団ができるということをつい最近学んだばかりで、知っている言葉が出てくることに少し嬉しく感じています。まだまだ、知らない単語や言葉の難しさはありますが、少しずつでも自分の知識と現場の経験が身についていくように常に学びの意識を持ちたいです。

  10. これまでの研究を見ていても、家族内での出生順位というのは性格や発達において大きな影響を与える要因になっているということがわかりました。実際自分自身や子どもの様子を見ていても、大きなくくりで言えば長子と次子との性格での共通点はありそうです。しかし、家庭内と家庭間での性格の違いはまた少し違うのですね。家庭内でのほうがその環境ははっきりしてくるでしょうし、家庭間という形になるとその影響はこれまでよりもはっきりしたものではなくなってくるものだと思います。特に異年齢での保育をしているとその経験は大きく違ってくるように思います。家族内といった限定的な環境ではなく、より多様な環境があることでそれぞれの人との関わり方は変わってくるでしょうね。そういった環境下にいることで性格の形成にもまた違った影響が出てくることと思います。

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