性差の縮小

親の投資理論は、ヒトのさまざまな行動に見られる性差の説明や発見に用いられてきたそうです。受胎調節、男女同権、そして情報化時代の経済によって、親の投資に見られる性差の大きさは縮小されたとビョークランドは言います。中には、逆転した面もあるというのです。しかし現在も、男女共に、進化適応の環境に生きた祖先と同じ手がかりに対する敏感性はほとんど失っていません。男女の心理はこうした古代環境で進化したのであり、ヒトの行動は、過去にもそうであったように柔軟性が高く、自らが発達する特定の環境に敏感ではあるものの、行動の基盤としての性特異的なバイアスが依然として存在すると言います。

たとえば、世界中の男性が、長期間のパートナーとして、魅力的で知的でやさしい女性を求めます。女性も夫として魅力的で知的でやさしい男性を求めますが、男性よりも、結婚相手の財産を重要視する傾向があると言われています。もうひとつの例が、男性と女性の嫉妬です。男女とも嫉妬の強さは、一見、ほぼ同じように思えますが、男性は、配偶者が「愛のない」性交を他の男性ともったと想像した場合に、配偶者が誰かと性的関係はなく、心の結びつきをもったと想像した場合よりも強い苦痛を示し、女性はその逆のパターンを示すことがわかっています。この性差の理由として考えられるのは、男性は父性の確実性がないため、配偶者が他の男性と性交渉をもった可能性があることは、たとえ愛のない性交であっても 、大きな脅威となるということです。女性も、パートナーが他の女性と愛のない性交をもつことは好みませんが、配偶者のサポートを失うことに対する懸念の方が大きいため、その原因となる可能性の高い、他の女性との心の結びつきを脅威と捉えるのだろうと言います。

生殖年齢の若い男性が高い攻撃性と暴力性を示す原因には、女性をめぐる、直接的あるいは間接的な競争もあると言われています。また、性差は小さいものの、その差が親の投資の違いに起因すると考えられる行動もあるそうです。その代表例が、好ましくない行動を抑制する能力です。女性は、性交渉に対する潜在的な投資量が男性よりも大きいため、性的喚起を制御し、相手の男性の価値を仔細に評価してから性交渉に同意することが、女性にとって繁殖利益となると考えられます。先祖の女性たちも、他の男性に対する性的関心を配偶者に隠しておく政治的手腕が必要でした。女性は不貞を男性に疑われると、暴力的な反応を示される可能性があります。また、攻撃を受けない場合でも、離婚という、歴史的にもそして現代社会でも、男性よりも女性やその子どもに不利益となる結果に至る場合が多いと言います。これを支持するものとしては、女性は男性よりも性的喚起をうまく抑制できることを示す証拠が限定的ながらあり、また、女性は男性よりも自身の情動の表出をうまく制御できることを示す強い証拠もあるそうです。後者については、女性は男性よりも感情表現が豊かであるにもかかわらず、このような結果が認められるそうです。たとえば、否定的な経験の後に肯定的感情を表出する、たとえば、嫌な味の飲み物がおいしいふりをするというような、あるいはその反対を求めると、女性は4歳ですでに、男性よりも情動表出を制御できると言われています。すなわち、反応を見る判定者をだませるというのです。このような場面は、保育の中で多く実感することが多いです。