オスとメスの投資

進化論の中で、ヒトを含むさまざまな種の養育行動の特徴を最もよく説明しているのが、進化生物学者ロバーヴァースによる「親の投資理論」だそうです。この理論は、オスとメスの子どもの養育への投資量(子孫を生殖年齢まで育てることに関連するすべての行為)に対する繁殖への投資量、これには配偶者を探し、獲得、維持する行為も含みますが、この量のの比を説明する理論だそうです。養育と繁殖への投資比は、種、性別、そして環境条件によって変わってくると言います。ビョークランドが最初に考察しているのが、ヒトの子育てに関連する、この親の投資理論についてです。次に、親やその他の人が子どもへの投資を決定する際に影響を与える要因をいくつか取り上げています。また、その次で、「健康な心の発達に果たす親の役割の重要性」について考えています。そして、最後に、きょうだい関係のような親子関係以外の家族関係を取り上げ、兄弟姉妹との関係に対処するためにどのような進化がもたらされてきたかを考察しています。

生きることには繁殖と養育以上の意味がありますが、進化的な視点からはこの2つほど重要なものはありませんね。繁殖と養育はまったく別物ですが、共に繁殖の努力に関わっています。また、繁殖と養育は共に、適応度、つまり、自身の遺伝子を複製することに関連しています。きようだいやいとこなど、血縁者の生存を促進することによって自身の遺伝的適応度を高めることもできますが、自分の遺伝子を絶やさないためのより直接的な方法は、性交渉をもって、子どもを産むことです。しかし、子どもを産むことは、進化の流れの一部にすぎないとビョークランドは言います。どういうことなのでしょうか?

子どもが親からの支援を必要とする種では、親による保護がなければ、子どもは性成熟期に達し、生命をつなげていくことはできません。配偶者の選択および維持に、そして、子どもの養育に、どれだけの力と資源を注ぐべきか、各個体は、意識的にではなくとも「決定」しなければならないのです。もちろん動物は、捕食者を避け、身を潜める場所を探し、食料を獲得すること、食物がなければ別の資源を手に入れることにも、力を注がなければならないのですが。しかし、こうした資源は通常、配偶者を獲得し維持したり、子どもに栄養を与えたりするために用いられます。これが親の投資理論の中心思想だと言うのです。この考え方は非常に単純ですが、多くを説明する力があると言われています。親の投資理論は性差に関する研究によく用いられ、うまく適用されてきたそうです。

動物のオスとメスが行う投資は同じではありません。たとえば、ほとんどの哺乳類で、メスが行う子孫への投資は、オスよりもはるかに大きいのです。非常に単純な動物であっても、配偶子の大きさの違いから、メスの方が投資量が大きいことがわかると言います。卵子は精子よりも大きいため、生成に多くの細胞質、そして多くのエネルギーが必要です。メスの体内で受胎、妊娠が生じ、生後初期には母乳を唯一の栄養源とする哺乳類では、投資に見られる性差が非常に大きいです。それに引き換え、オスの投資は、理論的には交接をもって終わります。したがって、オスはメスよりも繁殖率が潜在的に高く、メスの受精後も繁殖の機会をさらに求めることができるのです。対照的にメスは、一度受胎をすると繁殖の機会は、少なくとも一時的には終わり、養育活動が始まります。その結果、典型的にオスは養育よりも繁殖に投資を多く行い、メスにはその逆のパターンが認められることになると言うのです。